逆転
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人間なんて欠点を挙げればキリがないでしょう。特に私はその典型です。
言い訳をさせてもらえば、夫婦生活は毎日の続くものだけに、ボディブローのようにダメージが蓄積してしまいました。毎日、毎日積もっていったのです。
自分の中の限界を超えた時に妻への拒絶反応が芽生えていました。
もっと戦えばよかったのです。たいして器を持った男ではないのですから。それを拒否し逃げて来た結果がこれです。
妻の容姿は連れて歩いても自慢の出来るものです。
あのきつい性格も私が もっと愛情を注いでやれば何とかなったのかも知れません。そうしたなら、誰もが羨む夫婦になれたのかも・・・・
もっと私に甲斐性が有れば、等と考えているうちに窓の外が明るくなって来ています。浅い眠りについて間もなく妻の声で目が覚めました。
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「貴方、起きる時間ですよ」
睡眠不足のボーーとした頭で洗面台に向かうと、妻は もう身支度が終っていました。
「何処かへ出かけるの?」
「会社に行きます。まだ引継ぎも残っていますし」
当たり前に答える、その言葉にカチンときました。
「正気か?どの面下げて会社に行くんだ?
常識で考えてみろ。お前が言った事は嘘か?
行くなら行ったらいいさ。その代わり、もう帰る家はないと思え」
妻の言い分が、男に逢いたいと聞こえてしまうのです。それはそれでいいのですが、何かコケにされているようで腹が立ちます。
「・・・・・・・」
私達夫婦の会話を子供達も聞いています。
頭が呆けているので そこまで気が回らなかった。
長女は素知らぬ顔をしていますが、次女の方は心配そうに妻を見ていました。
妻と気の合うこの子には妻が哀れに映るのでしょう。可哀想な事をしてしまいました。
そんな日は、仕事にも気が乗らないのでした。
その夜帰宅すると妻が出向かいに来ます。
「今日、会社には行きませんでした。私も貴方の気持ちをもっと考えればよかったと反省してる。もう行かない。無神経でごめんなさい」
無言で居間に入ると、次女が夕食の仕度をしています。
「お父さんお帰りなさい。今お母さんとご飯の用意をしていたの。お父さんの好きなもの作るから もう一寸待ってて」
どうやら妻は次女の機嫌を取った模様です。
この子は、母親っ子で、どちらかと言えば妻の見方でした。
長女は妻の性格を受け継いでいますが、次女は私の分身です。要するに甘えっ子なのです。
何とか私達の仲を取り持とうと考えているのかと思われます。これは強敵出現です。
居間に戻った妻は、次女と楽しそうに夕食の準備を再開し始めました。その姿は何事もなかった、幸せな風景です。
食事時間も長女は降りて来ませんでしたが3人で普通にするのでした。
私は妻とは会話しませんが、次女が何とか話題を共有しようと明るく振舞います。その姿がいじらしく、私は迷惑とも思いましたが合わさずにはいられませんでした。
そんな時間も何とか乗り切りましたが、食事後も私達を話しに巻き込みます。
夜も更け やっとそんな時間から開放し、自分の部屋に戻ろうとする娘が振り返り私に声を掛けました。
「お父さん、私やっぱり・・・・」
そう言い掛けて言葉を飲み込みます。大きな瞳に涙が溜まっているように見えたのは気のせいでしょうか。
その後の言葉が出ないまま、部屋に戻ろうとする次女を複雑な気持ちで見送るしかありません。
「あの子は貴方に何度も謝れって・・・・
謝って許してもらえって・・・・
私のした事は皆を傷つけた・・・
本当にごめんなさい。
貴方・・・許して・・・許して貴方・・・・」
妻は私の前で深々と頭を下げ涙ぐみます。
「・・・・駄目だな。俺の許せる範疇を越えてる。
嘘をついて何か高価な買い物をしたのとは訳が違う。
子供達には悪いが、あの子らには これからの人生がある。
何時かは、この家を出て行く時が来るが、俺達はその後どうする。
俺は我慢できるとは思えない」
もしも妻を愛していたとしても、私は不倫を働いた女を許せないでしょう。
まして離婚願望の強い私には考える余地もありません。それにしても、あの子の気持ちを考えると・・・・
「そんな事言わないでもう少し考えて・・・・私に時間を下さい・・・」
妻が食い下がります。
私は妻に意地の悪い仕打ちを仕掛けました。
「お前、あいつは会社で降格位で済むと言ってたな。それは都合がよすぎる。
それも一時的な降格だろう?そんなに世の中甘くはないよ。
社会的制裁がどう言うものか教えなければならないな。
まずは、あいつの家庭からはじめようか。
あいつの家の電話番号を教えろ。奥さんにちゃんと話をしよう。
奥さんに罪はないが、知っておいた方が今後の為だろう。可哀想だが仕方がないさ」
「それは止めて。それは堪忍して。奥さんには何の罪もないの」
相手の奥さんに自分達のした事が分かるのが怖いのか、それとも男を気遣っているのか分かりませんが、それでは妻も甘いでしょう。
男に気持ちを残しているのだとしても、私には関係がないと思っていました。
でも私にも意地はあるのです。
「あいつを庇うのか?庇っているんなら、あいつにまだ気があるんだな。まあいいさ。
お前が教えなくても俺は知っているんだよ。
どんな態度を取るか試しただけだ」
立ち上がり電話に近づくと妻がその前に立ちふさがります。
「辛い思いをするのは私達だけでいいじゃない。関係のない人まで巻き込まないで!あの人の家庭を壊さないで!」
必死の形相でまた無神経な言葉を口にしました。
「大丈夫か?頭が可笑しくなっていないか?
関係のない人じゃないだろう。充分に関係者だ。
お前達と違うのは被害者だと言うだけだろう?
壊れるか壊れないかは向うが決める事だろうが。
俺も子供達も、お前達とは関係がないんだよ。
俺はまだしも、あの子達を傷つけて、関係のない人を傷つけるなとは、よく言えたものだ。
それに辛い思いをするのは私達だけとはどう言う意味だ。私達とは何なんだ!」
ただ妻を試すだけに言ったのですが、態度を見て気が変わりました。
何とか阻止しようとする妻に嫉妬とは違う複雑な感情を感じます。いや、それは嫉妬心なのかも知れません。
妻を払いのけ受話器に手を伸ばします。
電話の向うに聞こえる声は、おっとりとした優しそうなものでした。
その声に私は一瞬、躊躇してしまいましたが、今更引き下がれないでしょう。
「ご主人は帰られましたか。帰られていなければ奥様にお話ししていいのかどうか・・・・」
男はまだ帰っていないと言います。
もし帰って来ていのなら、まずは男と話を仕様と思ったのですが居ないのらしょうがありません。
これまでの経過をかいつ摘んで話をしました。
無言で聞いていた相手は静かな声を出しました。
「ご迷惑をお掛けして大変申し訳ありませんでした。主人が帰りしだい話をさせてもらいます。本当に申し訳ありませんでした」
私は自宅の電話番号と携帯の番号を教えて話しを終えました。
思いつきで掛けた電話は、後口の悪いものとなり後悔の念が湧き起ります。
男の妻は穏やかで静かな声で受け答えをしてくれました。きっと、大人しい人なのでしょう。
自分がした事のように謝るあの人に まだ聞かせるべきではなかったと反省してしまいます。
私が起こした問題ではありませんが、男の妻の起こした問題でもありません。そんな人を自分が傷付けてしまった気分です。
電話を切り振り返ると妻は呆然とへたり込んでいます。
「お前達のおかげで嫌な思いをした。俺ばかりじゃない。あの奥さんもショックだろうさ。可哀想に。もっと責任の重さを知るべきだ」
何で私がこんな思いをしなければならないのか。こいつら本当に腹の立つ奴らです。
私から妻には言葉をかけません。どんな行動を取るのか興味があったからです。
人事みたいな事を言いますが、私の心に そんな勝手な意地の悪い自分が存在します。
これが普通の夫婦なら、こんなふうには思えないのでしょう。想像するのもおぞましい修羅場が展開しているのだろうと思います。
でも、私達夫婦の間には そんな光景はありません。その代わりに冷たい空気が流れています。
その空気は、主に私が作り出しているものなのでしょうが・・・・・
本当は、修羅場を演じている夫婦の方が健全なのだろうと、また、人事みたいに醒めた脳が考えていました。
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そんな私にとっての楽しい時間がどのくらい流れたでしょうか。
妻の携帯から着信音が聞こえます。
久しぶりに聞く着信音は以前の聞き慣れたものとは違い一瞬何の音だかピンと来ませんでした。
携帯を取って相手を確認し慌てて部屋から出て行こうとする妻に相手が誰だかも知りました。
「此処にいるんだ!隠れる必要はない。此処で話しなさい」
その言葉に一瞬慌てたようです。
「はっ、はい」
素直に戻り話していますが、私の目を気にして辛そうです。
しかし、その内容からして会話の相手は、あの男なのは明白なものとなりました。
男は わざわざ妻の携帯に連絡して来たと言うのは、どんな魂胆があっての事なのか?
妻もどうしてはっきりと話せないのか?
それは、私に聞かれたくない内容だからに他ありません。
此処に及んで どんな悪知恵を働かせたところで、何の役にも立たないのに。私も舐められたものです。
相手の会社に乗り込んで、あんな行動に出たのに、まだ私の本質に気付かないのは、妻が私の事を よほど見下して相手に話していたのかと思えるのです。
確かに事なかれ主義を通して来たのは私ですから、とやかく言えない立場でもありますが腹が立つのを抑えられません。
「業とらしく聞くけど誰からなの?」
「・・・・・・・・・・」
「誰からなのか聞いているんだよっ!」
こんな時は、穏やかにと思ってはいたのですが、苛立っている心を隠せず声に怒気をおびてしまいました。
別に穏やかに接するのが得策な訳でもないのでしょうが、格好を付けたがる私の癖です。
その声に妻が素直に応えたのは、本音ほど相手に伝わるものはないと言う事なのでしょう。
「・・・・岸部部長から・・・・」
口ごもるのは誤魔化したかったからなのでしょうが、出来る訳がないのに。
「お前に何の用事だ?また、お誘いか?お前達は懲りないな」
「そんなのじゃないわ・・・・・」
訴えるような眼差しを投げかけてきますが、岸部は何の用で電話をしてきたかくらいは私も想像が出来ます。
そんな事はどうでもよく、少し意地が悪くなっていたのです。
「ふ〜〜ん。じゃあ何の相談なのかな?
もしも、俺が奥さんに言ったのにクレームを付けているのなら お門違いだと言ってやれ。
お前だって、あいつの思う通りには出来ないよな。
文句があるなら俺に言え。
くだらない男だな、まったく」
「・・・くだらない人だなんて・・・こんな場合は誰だって・・・・」
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