戦い
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5月29日(土)の2
辺りが暗くなり出した頃、私は海沿いにある公園に向かっていました。
ここは私が妻にプロポーズをした場所です。
野田のアパートを出た時、思わない事も無かったのですが、そんなドラマの様な事は無いと思い、後回しにしてしまったのです。
公園へ着くと、もう真っ暗でしたが、駐車場の一番奥に妻の車が止まっているのを発見しました。
しかし、まだ喜べません。
一度立ち寄ったものの 車をここに置いて、また何処かに行ってしまった可能性も有ります。
最悪、海に入ってしまった事も考えられます。
何組かのカップルに、変な目で見られながら探し回っていると、1人でベンチに座っている、妻らしい人影を見付け、静かに近付いて前に立つと、顔を上げた妻は人目も憚らず、急に泣き出して抱き付いて来ました。
しばらく、ベンチに座り、昔の事を思い出しながら、真っ暗な海を見ていましたが、気が付くと妻は、右手でしっかりと私の上着の裾を握っています。
「俺達の家に帰ろうか?」
妻は、ゆっくりと頷き、心配なので1台は、置いて行こうと言う私に、もう大丈夫だからと言い残し、自分の車に乗り込みました。
家に着いても何を話していいのか分からず、キッチンのテーブルを挟んで、向かい合ったまま黙っていると、その時、携帯が鳴り、
「心当たりは全て探したが、見つからない。すまない。これも全て私のせいだ。美鈴さんに、もしもの事が有ったら・・・・・・・・・。」
「ちょっと待て。連絡が遅れたが 少し前に見つかった。美鈴は無事だ。」
野田は、怒った声で“どうしてすぐに”と言い掛けましたが、“良かった。そうか。良かった。”と言って他は、何も聞かずに電話を切ってしまいました。
「美鈴。これから俺達は どうなるか、どうすれば良いのかまだ分からんが、こんな事だけはするな。こんな事は許さん。一生お前を怨むぞ。」
「ごめんなさい。もうしません。ごめんなさい。
あなたや子供達の顔が浮かんで、私には出来ませんでした。
1人では怖くて出来ませんでした。私はずるい女です。
あそこにいれば、あなたが来てくれると思いました。あそこで待っていれば、必ず迎えに来てくれると信じていました。
本当に ずるい女になってしまいました。」
悪く考えれば、最初から、死ぬ気など無くて、これも妻の計算通りだったのかも知れません。
しかし私は、そこまで妻が変わってしまったとは、思いたく有りませんでした。
安心したせいか お腹が減り、朝から2人とも何も食べていなかった事を思い出し、インスタントラーメンを2人で作って食べていると、
家の前で車の止まった音がしたので、こんな時間に誰だろうと思い、窓から覗くと、
それは私が少し援助して、娘が買った古い軽自動車で、助手席からは息子も降りて来ました。
娘は、入って来るなり。
「お母さん、帰っているの?帰っているのなら電話ぐらいしてよ。」
娘と息子は険しい顔で座り、携帯をテーブルの上に置き、
「お母さん。これはどう言う事?どう言う意味?」
俺の所にも来たと言う、息子の携帯メールを見ると。
〔ごめんなさい。お母さんはお父さんを裏切ってしまいました。あなた達を裏切ってしまいました。
取り返しの付かない事をしてしまいました。
あなた達の母親でいられる権利を、自分で放棄してしまいました。
お父さんの事をお願いします。
こんな母親でごめんね。ごめんね。〕
その時、娘が、
「お父さんを裏切ったって、まさか・・・・・・・そうなの?お母さん、そうなの?」
子供達が来てから、ずっと俯いていた妻は顔を上げ、私の目を見詰めて涙を流しました。
私も そんな妻が心配で、妻の顔を見ていると、2人の様子を見ていた息子が、
「なんだ、心配して損した。親父、勘弁してくれよ。脛をかじっていて言い難いけど、俺達も忙しいんだ。夫婦喧嘩は2人でやれよ。子供まで巻き込むなよ。」
娘がまた妻に何か言おうとしましたが、息子がテーブルの下で娘の足を蹴りました。
それは妻にも分かったと思います。
娘は、大きな溜息をつくと、
「そうね。心配して損したわ。お母さんは家をすぐに飛び出すし。
お父さんはお母さんの姿が、少し見えないだけで大騒ぎだし。
お母さん、今日のガソリン代と、高速代はお母さんが払ってよ。」
そう言うと、私を見詰めながら涙を流している妻の前に手を出しました。
すると息子も手を出したのを見て、娘が、
「途中で食べたハンバーガーも私が出したし、あんたは何も払っていないでしょ?」
「俺だって、バイトを途中で抜けさせてもらったから、半日分のバイト代は、もらう権利は有る。」
娘と息子が言い争いを始めましたが、わざとそう振る舞ってくれている事は分かっていました。
知らない内に、2人は大人になっていた様です。妻だけでなく、私も救われた気持ちでした。
今日は遅いから泊まっていけと言うと
“そうするか。”と言う息子に、今度は娘がテーブルの下で息子の足を蹴り
“明日もバイトで夜の方が道も混んでいないから。あんたも明日バイトが有るでしょ。”
と言って席を立つと、妻は、慌てて自分の財布からお金を出し、泣きながら2人に渡していました。
子供達も赤い目をして帰って行ってしまいましたが、これも私達に気を利かせた事は、言うまでも有りません。
子供達の成長に感謝しましたが、これで問題が解決した訳では有りません。
私の中では、これで元の夫婦に戻れるほど、簡単な問題では有りませんでした。
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5月30日(日)の1
前夜は一睡もしていなかったのか、妻はベッドに入ると すぐに寝てしまい、私の横で寝息をたてています。
私も一度は眠ったのですが、疲れているはずなのに、早くに目が覚めてしまい、その後、寝付かれずに、妻との事を考えていました。
私にとっての夫婦とは何なのか考えていました。
勿論、婚姻届を出した時から、法律上 夫婦で有る事は間違い有りません。
しかし、お互いに相手に対する愛情がないと、それは、ただの共同生活者だ。
たとえ実際には束縛していなくても、夫婦なら相手を束縛したい気持ちが有って当然だ。
育った環境も違い、お互い1人の人間だから、考えや方が違うのは仕方ないが、時には自分を殺して、お互いに歩み寄るのが夫婦だ。
片方の気持ちが離れた時、離婚届は出さなくても、それはもう夫婦では無い。と思っていました。
それともう1つ。
長い結婚生活、間違いの1度や2度は有るかも知れないが、気持ちまで相手に行かなければ、夫婦でいられる。とも思っていましたが、
私を愛していても、妻の身体が他の男を求めてしまった今、この考えは、私に都合の良い考えだったと気付きました。
風俗など私が妻を裏切る事は有っても、妻に限って、私以外の男と関係を持つ事は、考えられなかったからこそ思えた事だったのです。
人間と同じ様に、夫婦と呼べるのかどうかは分かりませんが、多くの生物は、子孫繁栄の為の生殖行為をしたものが、夫婦の様な形をとります。
1度その様な行為をしただけで死んでいく者も有りますが、前回とは違う相手と、行為を行う者も少なく有りません。
それは、より強い、より良い子孫を残す為だと思います。
当然、夫婦の関係は セックスだけでは有りません。それ以外の部分の方が大きいかも知れません。
お互いに納得して、セックスレスでも仲の良い夫婦でいられる方もみえますし、歳を取り、その様な行為が出来なくなっても、夫婦でいられます。
しかし、人間も1つの生物だと考えると、子供に恵まれたかどうかは別にしても、以前、私達は間違い無く夫婦でした。
ところが、妻の身体が野田を選んだとしたら、妻の雌の部分が野田に惹かれたとしたら、今は野田と妻の方が、夫婦に近いのでは無いかと思えるのです。
ただ、人間は、他の生物と違い、遊びも覚えました。子孫を残す為だけにセックスをする訳では有りません。
私も今では、子供を作ろうと思って交わった事は有りません。それどころか、子供が出来てしまわなかったか心配な時も有ります。
しかし、そこまでの過程は遊びでも、男が女の中に入り、腰を振っている瞬間は、子孫を残そうとする生殖活動その物ではないかと思えるのです。
これらは私の夫婦感です。
勿論 人それぞれで、10人いれば10通りの考えが有ります。それらを否定するつもりは有りません。
当然、妻にも妻の考えが有って当然です。
しかし、お互いに歩み寄るなど、今まで考えていた夫婦の形を、自分で否定してしまう事になるのですが、
今の私は、妻の身も心も私に向いていないと、夫婦として満足出来ません。夫婦としてやって行く自信が無いのです。
夫婦は、セックスだけでは無いと分かっていても、妻と野田とのしてきた行為を考えた時、私の中で、その部分が大きな割合を占めてしまうのです。
外が白み出した頃、ドアの音で起こしてしまったのか、トイレから戻ると妻が、
「ごめんなさい。私のせいで眠れなかったのですね」
「違う。トイレに行きたくて目が覚めてしまった。やはり歳だな。」
お茶を煎れてくれると言う妻に、コーヒーにしてくれと頼み、2人でコーヒーを飲みました。
「くどい様だが、やはりどうしても気に成っている事が有る。」
「何でも聞いて下さい。今なら何でも話せる気がします。」
「そうか。俺の事を愛してくれているのは分かった。
では、野田の事を愛してはいないと言っていたが、嫌いでは無いのだな?野田には どういう感情が有るのだ?」
「はい。昨年は同情から、課長の事を好きだと勘違いしてしました。
あなたを愛しているのとは違った感情でしたが、愛に近い物を感じていました。
それは間違いだったと気付いてからも、それらの感情は無くなりましたが、嫌いには成れませんでした。」
「それは今回、脅されて無理やりされたと思っていても、そうだったのだな?自分と向き合ってみて、分かっているのだろ?」
「ごめんなさい。気付かない内に、私も抱かれたいと思う気持ちが何処かに有って、そのせいかも知れませんが、あなたには嫌いだと言いましたが、どうしても嫌いには成れませんでした。」
「それも愛の一部では無いのか?」
「違います。それだけは、はっきり違うと言えます。」
「気持ちが身体に負けてしまうのか?本能がそうさせるのか?」
「よく分からないのですが、何となく思うのは、あなた以外、私にとって始めての男の人だったからかなと・・・・・・。
あなたしか知らなかった私が、課長という男の人を、知ってしまったからかも知れません。」
今まで敵から命を掛けて群れを守り、食べ物を調達し、交尾の時期を迎えた時、自分より強い雄が現れて群れを追われ、その雄と今まで妻だった雌の交尾を、横目で見ながら群れを出て行く、はぐれ猿の姿が頭に浮かびました。
私には、負け犬根性のような物が、染み付いてしまった様です。
「俺しか知らなかったのが、野田に抱かれて、もっと気持ちの良い世界を知ったと言う訳か?俺より野田の方が、気持ちが良かったという訳か?」
「そんな事有りません。あなたと課長を比べた事など、1度も有りません。私の言い方が悪かったです。ごめんなさい。」
私は、妻を責める為に、質問をしたのでは有りませんでしたが、また妻を責めている事に気付き、
「悪い、悪い、そんな事を聞くつもりでは無かった。元へ戻るが、それなら野田に、情が移ってしまったと言う事か?野田の身体に愛着が有ると言う事か?」
「それとも違う様な気がします。誤魔化している訳では無くて、上手く説明出来ません。ごめんなさい。・・・・・・・ごめんなさい。」
「そうか、謝らなくてもいい。美鈴、コーヒーをもう1杯もらえないか?やはり何処の喫茶店より、お前の煎れてくれたコーヒーが1番美味い。」
妻は、やっと笑顔を見せ、コーヒーを注いでくれましたが、この時 私は、妻と別れようと思っていました。
それは妻の答えを聞いたからでは有りません。その前から考えていた事でした。
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5月30日(日)の2
2日間休んだので、早く戻って月曜からの仕事の準備をすると言って、早い昼食にしてもらい、赴任先へ戻る準備を始めると、妻も大きなバッグを出してきて、暗い表情で自分の衣類を詰め出しました。
「美鈴、何をしている?」
「あなたと一緒に・・・・・・・・・。」
「そんなに休んでも大丈夫なのか?」
「えっ、仕事を続けてもいいのですか?」
「ああ。今の仕事が好きなんだろ?」
「ありがとう。ありがとう。続けさせて下さい。」
目には、涙が溜まっているのですが、表情は少し明るくなりました。
「でも、流石に明日1日ぐらいは休みたいのですが、電話をしてみないと分かりません。」
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