戦い
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そう言われると、逆に寛大なところを見せてしまい。
「俺も知っている親友の紀子さんだろ?行ってくればいいじゃないか。美鈴も疲れているようだし、気分転換になるだろ?行って来いよ。」
「いいの?ありがとう。ごめんね。」
妻は、この事が気になっていて、気持ちが沈んでいたのだと思いましたが、本当に疲れているのか、私が行く事を許しても なお元気が無く、お礼を言う時も俯いたままで、私と目を合わさない事が気になりました。
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5月14日(水)
今日は、少し早く帰れたので妻に電話をしましたが、やはり妻は元気が無く。
「どうした?一度 医者にでも見てもらった方が良くないか?」
「大丈夫です。仕事の事で少し悩みがあって・・・・・それで少し・・・・ごめんなさい。」
「それならいいが、クラス会は大丈夫か?行けるのか?」
「はい・・・行けます・・・・身体はどうもありません。
ありがとう・・・ごめんなさい・・・
ごめんなさい・・・・・心配掛けて・・・・・ごめんなさい・・・・・。」
「なんだ?泣いているのか?」
「あなたが優しいから・・・・・ごめんなさい・・・・・。」
妻が泣いた訳は本当に優しくされたからでは無くて、何か私に隠し事をしている罪悪感から泣いたような気がしてなりません。
電話をして余計に心配になりました。
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5月16日(金)
まさかとは思いましたが、彼の携帯に電話してしまいました。
「君に聞きたい事があるので明日の夜会えないか?」
「その節はすみませんでした。何か・・・・・。」
「いや。今回の事とは関係が無いのだが、君の勤めている中学に偶然 知人の子供が通っていて、その子の事で相談したい事が・・・・・・・・。」
「虐めか何かですか?それなら明日でも明後日でもいつでも ご都合の良い時間を言って下さい。」
「・・・・いや、やめておく。まだ知人に頼まれた訳ではないので、はっきりしてからにするよ。」
言った事は勿論嘘です。
また妻を少し疑い出していた私は、もしかすると彼と温泉に行くのでは無いかと思い、彼の反応を見たかっただけですが、彼の返答から、明日妻と会う事は無いと確信しました。
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5月17日(土)
あれからずっと 妻の事を考えていましたが、考えれば考えるほど悪い方に考えてしまいます。
妻のプライベートでは、いい歳をして嫉妬深い男と思われないかと、ほとんど電話を掛けた事は有りませんでしたが、今は そのような事を言っていられる心境ではなく、夜電話を掛けました。
「身体の調子はどうだ?楽しくやっているか?紀子さんとは もう何年も会っていないから変わっただろうな。
携帯で写真を撮って送ってくれないか?美鈴のもカメラ付きだったよな?」
「・・・・はい?・・・・・写真ですか?・・・・・・分かり・・ました。」
妻の声は相変わらず沈んでいました。
数分して送られてきましたが、それは、旅館の部屋らしい所で写っている、浴衣を着た妻一人の物です。
浴衣姿の妻は私が見ても色っぽく、しばらく見入っていましたが、やはり妻1人なのは納得出来ずに電話しました。
「ごめんなさい。みんなで写ろうと思ったのですが、温泉に入ってみんなスッピンなので断られてしまって・・・・・・ごめんなさい。」
電話を切ってからもう一度 妻の写真を見ると、画像が良く無くはっきりは見えませんが、妻は化粧をしているようです。
一層不信感が募り、明日日帰りで帰る事にしました。
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5月18日(日)
朝1番の新幹線で帰り、途中駅から電話をして、彼に先日の事で相談に乗って欲しいと嘘をついて来てもらう事にしました。
家に着くと彼は既に来ていて、車の中で待っていました。
妻が彼と一緒で無い事は分かりましたが、妻が塞ぎ込んでいる訳を知っているのでは無いかと、家の中に入ってもらいました。
あの誠実だった妻が浮気をした事は今でも信じられません。
その妻が彼と別れてすぐに、違う相手と浮気する事は無いと思っていましたが、色々質問しても彼の返答は弱弱しく、俯いたままなので、何か隠していると思い。
「何か隠しているな?そうか、分かった。今までの事を教育委員会に行って話して来る。」
「それだけは止めてください。お願いします。女手1つで育ててくれた母を失望させたくありません。お願いします。それだけは・・・・・・・。」
「それなら話せ。妻の事で隠している事があるだろ?話してくれれば そのような事はしない。」
彼は泣き出し。
「すみませんでした。嘘をついていました。・・・・・・私は奥さんと浮気していません。」
「浮気していない?どういう事だ?訳が分からん。正直に話せ。」
「実は、ある人に頼まれて・・・・・・。たぶん奥さんは今その人と・・・・・・・。」
「でもお前と妻がラブホテルに入るところも、出てくるところも興信所が写真に・・・・・・。」
「その人に頼まれて奥さんを迎えに行き、少ししてから私は、その人の車で帰り、また朝に迎えに行って送り、その人は後から自分の車で帰りました。」
「本当か?まだ信用出来ない。部屋のキーも受け取り、一緒にエレベーターに乗って行ったと、興信所から聞いている。」
「奥さん1人では恥ずかしいだろうから部屋まで送って、その人が来るまで待つように言われていました。」
「どうして その様に手の込んだ事を?」
「ご主人が疑い出したと 奥さんが言われたそうで、探偵でも付けられていると困るからと言って。
もしもの時自分は助かるようにしたのだと思います。
奥さんは、私が送り迎えをしていた本当の理由は知らないはずです。」
「その男は誰だ? どうして教師のお前が そこまでした?」
「その人の名前と、理由は言えません。ごめんなさい。母を悲しませてしまう。私の口から、それだけは言えません。ごめんなさい。許して下さい。」
彼が走って出て行った後、1人残された私は失望と悲しみで声を出して泣きましたが、やがて悲しみは怒りに変わりました。
妻は、夜10時に帰ってきて私に驚き、何か言い掛けましたが 私が思い切り頬を張ると、ばれた事を悟ったのか泣き崩れましたが、更に服を剥ぎ取ろうとすると、狂ったように泣きながら それを拒みました。
「誰と温泉に行っていた?お前がその様な女だったとは。嘘で固めて裏切り続けやがって。汚れた身体を見せてみろ。クソー。」
ブラウスと黒いブラジャーを剥ぎ取ると、乳房に何箇所かキスマークや噛まれた痕のような物が赤く残っています。
さらによく見ると、手首や足首も微かに赤くなっていたので、私の脳裏には、温泉旅館の部屋で、妻が縛られた格好で顔も分からない男に責められている姿が浮かび、悔しくて、また妻を平手で殴りました。
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5月19日(月)
妻に罵声を浴びせ続けていて、正気に戻ったのは0時を過ぎていました。
妻の顔を見ると腫れていて、口の中を切って唇から血が垂れています。
少し落ち着いた私はハンカチを出して血を拭き取るように言い、問い正しました。
「相手は誰だ?そいつも徹底的にやってやる。相手を言え。」
妻も2時間泣き続けたので少し落ち着いたのか、涙は流していますが割と冷静な口調で。
「ごめんなさい。彼の名前だけは言えません。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「まだ庇うのか?頭に来た。」
また手を上げましたが腫れた顔を見て、もう殴れませんでした。
「それだけは言えません。どのような罰も受けます。許して下さい。彼の事だけは言えません。」
「そうか。それなら どの様な手を使っても必ず調べて、地獄に落としてやる。」
私は、聞きたい事がまだ沢山あったのですが、妻がまた激しく泣き出したので、落ち着くのを待ち、
「相手の事は置いておいて、どうして あの先生と浮気したと嘘をついた?どうしてあのようにスラスラと嘘をつけた?正直に話せ。」
「それは・・・・・・彼が・・・・・・。」
「話を聞いても聞かなくても、もう美鈴とは終わりかもしれない。でも知りたい。」
「別れるのは嫌です。許して下さい。離婚は嫌です。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「それなら尚の事、正直に話してくれ。」
「彼は、以前 奥様に浮気された事があって、奥様が相手を愛してしまった事、相手とのセックスが気持ち良かった事、会う度に何度も関係を持った事を聞き出し、凄くショックを受けたそうです。
ですから、あなたが興信所に行っている間、先生のが小さくて感じなかった事や、同情からで相手を愛していない事、会ってもあまり関係を持たなかった事にすれば、あなたは必ず許してくれると言われました。
その上、歳が離れているので、別れて相手と結婚する心配もしないだろうと。」
「相手を庇い、ばれる心配があっても続けていたと言う事は、相手が好きなのか?俺の事を嫌いになったのか?」
「違います。あなたを愛しています。こんな事をしておいて言い難いのですが、家庭も壊したく無かった。あなたに不満はありません。本当です。あなたが好きです。」
「では何故こんな事に?どうして俺を裏切る?」
「ごめんなさい。私にも分かりません。あなたを愛しているのに、どうしてだか分からないです。
あなたを好きなのに、彼の事も・・・・・・・。
ごめんなさい。ごめんなさい。」
彼の事も好きだと言い掛けたと思い、言いようの無い寂しさに襲われました。
この後、何度も妻を問い詰めましたが、結局、相手の事は言わずに朝を迎え、会社に嘘をついて何日か休む事を電話し、少し休もうと横になった時
妻の携帯が鳴り、それは妻の上司からのようで、今日は休む事をお願いしていました。
妻の顔は腫れて少し青あざになってきたので、しばらくは行けないと思います。
横になっていて眠ってしまい、目が覚めたのは夕方でした。
妻は、腫れた顔を冷やしながら泣いていて、寝ていないようです。
先生をしている彼に連絡を取ると、私と会うことを意外とあっさり承諾してくれたので、妻を残して会いに行き、待ち合わせ場所で彼の車に乗り込むと。
「ご主人がまた連絡してくると思っていました。今度会ったら 全て話そうと覚悟していました。」
「そうか。ありがとう。実は今日、脅迫してでも聞き出そうと思っていたのだが・・・・・・・。」
「自分の蒔いた種です。もう逃げない事にしました。奥さんの相手は野田です。たしか奥さんの上司だと思います。
私は、昨年、新任の教師として この学校へ赴任して来ました。
新任なのに すぐにPTAの係りにさせられ、何も分からない私は、お母さん達と上手く付き合う事ができずに悩んでいました。
その時 役員の1人だった野田の奥さんに優しくされ、誘われるままに関係を持ってしまいました。
女の人が初めてだった私は、彼女の身体に溺れてしまい、やがて探偵を付けられて発覚し、慰謝料も分割ですが払い終わりました。
先月初め 野田に呼び出され
“今不倫をしていて、ばれるかもしれない。
俺が不倫したのも お前達のせいだ。ばれないように協力しろ。
もしばれた時は、お前が身代わりになれ。そうしないと学校、教育委員会、PTAに生徒の母親と不倫した教師を処分しろと言いに行く。”
そう脅されました。」
「そうか。妻から聞いた事にして、あんたの名前は出さない。ありがとう。」
急いで家に帰り。
「おい、相手が分かったぞ。課長の野田だそうだな。あんなもっともらしい電話までして来やがって。なんて悪賢いやつだ。分かったからにはキッチリ責任は取ってもらう。」
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