突然の海外赴任
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私は、毎回そんな彼女を誘うようになり、何度か一緒に朝を迎えている内に分かった事は、
彼女は30歳で私と会う一ケ月前に夫を病気で亡くし、小さな子供が2人と病弱な母親がいる為に生活に困り、あの場所に立つ様に成ったのですが、
まだ恥ずかしくて消極的だった為にお客がつかず、私が初めての客であった事です。
私は、毎日の様に彼女を誘い、終には彼女の家に転がり込んで生活する様になってしまい、薄い壁一枚隔てた隣に子供達や母親がいる事もお構い無しに、毎晩の様に妻を忘れさせてもらっていました。
その頃には、その事で、一緒に働く現地の人間に後ろ指を指されるようになっていましたが、仕事はきちんとこなしていたので、妻を失って自棄になっていた私には、何を言われようとも気になりません。
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その様な生活をしていて半年が過ぎ、ようやく修理も終ったのですが、私は会社を辞めて、このままこの国に残ろうかと真剣に考えていました。
日本に帰ったところで、何も良い事は有りません。
妻と稲垣が、仲良く暮らす側で生きて行くのが辛いのです。
しかし 娘の事は気になり、娘の近くで暮らしたい感情の方が勝り、一緒に暮らしていた彼女には、この国では大金と言える額のお金を渡して、帰国する事を告げました。
ところが、お金の為だけに私に尽くしてくれていると思っていた彼女が、私と別れたく無いと言って抱き付いて来て泣き叫び、私を必死に止める姿を見た時は日本に連れ帰り、一緒に暮らそうかとも思いましたが、彼女には病弱な母親を残して行く事は出来ません。
そう言うと聞こえは良いのですが、仮に母親の事が無かったとしても、情は有っても、彼女に対しての愛情は、そこまで無かったのかも知れません。
彼女にしても、心細さから誰かに頼りたかっただけで、私を愛していた訳では無かったと思います。
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しかし別れは辛く、後ろ髪を引かれる思いで帰国し、真っ先に娘に会いたかったのですが、私には居場所が分かりません。
妻の携帯に電話しても、解約されているらしく繋がらず、私の実家には何処に住んでいるのか必ず連絡を入れておく約束だったのですが、その約束も守られている自信は有りません。
しかし、今のところ他に方法も思いつかず、あまり期待もせずに実家に顔を出すと、そこには新しいピアノが置いて有りました。
「このピアノは?」
「ああ、お友達が始めたらしくて、どうしても理香ちゃんが習いたいと言うものだから、お爺さんが買ってあげた物だよ。お爺さんは理香ちゃんに甘いから。」
そう言う母も、父に負けないぐらい娘には甘いのです。
「理香はここにいるのか?智子は理香をおいて出て行ったのか?」
私は てっきり、自分達が楽しむ為には娘が邪魔な稲垣に言われ、他に行く所の無い妻は仕方なく、娘をおいて出て行ったと思いました。
「何を言っているんだい。智子さんもお前の家を出てから、ずっとここに住んでいるよ。」
「ここに住んでいる?どうして?智子は出て行く約束だったのに。」
「だから約束通り、おまえの家は出たじゃないか。その後 何処に住もうと智子さんの自由だろ?」
「でも可笑しいだろ?俺と智子は離婚したのだぞ。その智子が俺の実家に住んで居たのでは、どう考えても変だろ。」
「離婚?おまえ達は もうしているのかね?証人を2人書く欄が埋まらなくて困っていたから、勝手に決めずに、おまえが帰ってから誰にするか話し合えと言っておいたから、離婚届はまだ出さずに持っていると思うよ。」
「証人は親父とお袋に頼んだはずだ。書いてくれなかったのか?」
「ああ、いざ書こうと思ったら気が変わった。あんな縁起の悪い物に名前を書いたら、良い死に方も出来無い様な気がして、私もお爺さんも断った。」
私は母の意図を測りかねました。
「理香と智子は今何処にいる?」
「時差ボケかい?時計を見てごらんよ。理香ちゃんは学校に決まっているだろ。
智子さんは、お爺さんの友達がやっている部品工場で働いているよ。
おまえも知っているだろ?ほら隣町の。
車で通っているから5時過ぎには帰ってくるけれど、おまえとゆっくり話している時間は無いと思うよ。
その後、6時からコンビニの仕事が待っているから。」
「部品工場の後、コンビニ?」
「ああ。部品工場だけにしておけと言ったのだが、どうしても働きたいからと言うもので、何か有った時に無理が言える様に、おまえの同級生がやっているコンビニを、私が紹介してやったのさ。
ほら、おまえが中学の時仲の良かった・・・・・。
5時に起きて私達や理香ちゃんの朝食の仕度や洗濯をしてくれる。
8時までには工場へ行って 5時過ぎに帰り、6時までにコンビニへ行って夜中の12時まで働いて、帰って来てから夕食を食べて、
その後 片付けをしてお風呂に入るから、寝るのはいつも1時半を過ぎている。
理香ちゃんの学校の用意で2時を過ぎる事も有る。
土曜日も休みでは無いから、ゆっくりと出来るのは日曜だけ。
ゆっくり出切ると言っても夕方からは、またコンビニに行くから、たまには ゆっくりと寝坊でもすればいいのに、普段 理香ちゃんに構ってやれないからと言って、早く起きて ずっと理香ちゃんと一緒にいる。
このままだと身体を壊すからと言っても聞かない。」
「どうして、そんな無理な事を?」
「おまえと相手の奥さんに慰謝料を払いたいそうだ。相手の奥さんには良いとして、おまえに慰謝料だなんて・・・・・・。
第一おまえは、まだ離婚したいと思っているのかい?」
私が日本を離れてから、妻と母の間に どの様な会話が有ったのかは分かりません。
生半可な覚悟で ここまでは出来ないと思うので、妻の努力は認めます。
しかし、その事と私達の離婚の話は別で、私には上手くやって行く自信が有りません。
母は私達の離婚を止めさせたい様でした。最初は、可愛い孫を失いたくない想いからだと思っていましたが、それだけでは無いようです。
「どうしても離婚したいのかい?理香ちゃんの為に、おまえは己を捨てる事も出来ないのか?」
皮肉なもので、以前 妻から聞いた稲垣の鮭の話を思い出しました。
鮭の様に、命を捨ててでも子孫の為に激流を傷付きながら上る。
私にも娘の為に、命を捨てる覚悟は有ります。しかし、私と妻が我慢をして一緒にいる事が、必ずしも娘の為に良いとは思えませんでした。
「これは俺だけの為では無い。智子の為、理香の為にも その方が良いと思った。」
「本当にそうかな?智子さんから全て聞いたが、おまえが智子さんを許せないだけでは無いのかい?
智子さんは一時、2人の男を愛してしまった。
いくつになっても、結婚していて例え伴侶がいたにしても、誰にでも他に恋心を持ってしまう事は有るし、その気持ちまでは縛れない。
しかし、そうかと言って行動に移してしまった事は、確かに許せる行為ではない。
でも、一度失敗をしてしまった者は、どんなに努力をしても許されないのだろうか?
どんなに反省しても、もう許されないのだろうか?
それは、おまえが決める事だが、おまえは、おまえだけを愛している智子さんが好きだったのか?
それとも、智子さんそのものが好きだったのか?
智子さんに おまえ以外にも好きな人がいると、もしも結婚前に分かっていたとしたら諦めていたか?
智子さんに対する愛情もそれで冷めていたか?
その程度の想いだったのか?
それとも、それでも良いから、何が何でも智子さんを自分のものにしたいと思っただろうか?」
母の言う事も分かるのですが、身体が拒否している今、何を言われても無理なものは無理なのです。
「相手がどう思っていようと、俺は愛しているでは駄目なのか?
智子さんと話していて、支店長の事も愛したかも知れないが、今は、おまえだけを愛している様に私は感じる。
凄く強い愛を感じる。反省した智子さんを、今の智子さんを見られないのか?」
「お袋の言いたい事は分かる気もするが、これは裏切られた人間で無いと分からない。お袋と親父のように、愛し愛されてやってきた人間には分からない。」
「そうかい。これは一生おまえ達には言わずに、お墓の中まで持って行こうと思っていたが、昔私もお爺さんに裏切られた事が有る。」
母の告白はショックでした。
私は、物心がついてからずっと、我が家は かかあ殿下で 父はいつも母の後ろで笑っている、大人しい人間だと思っていました。
父は酒も呑めず、タバコも吸わない真面目で大人しい人間だと思っていました。
ところが信じられない事に、昔は大酒呑みでヘビースモーカー。
何か気に食わないことが有れば母に手を上げ、外でもすぐに他人を殴るような、荒くれ者だったそうです。
その上、絶えず女の影が有り、その事を言えば暴れるので、母はいつも泣き寝入りでした。
母の話しに、私は動揺を隠し切れませんでしたが、
「・・・・でもそれは・・・・智子の浮気とは・・・・。」
「まさか、男の浮気は甲斐性で、女の浮気は裏切りだなんて言わないだろうね?」
「そんな事は言わないけれど・・・・・・・・・・。いつから親父は あの様に変わった?」
私は母の話しに、固唾を飲んで聞き入っていました。
母は、ずっと父の浮気には目を瞑っていましたが、ある時、どうしても許すことの出来ない浮気を知り、気が付くと私を背負い、兄の手を引いて橋の上に立っていたそうです。
そのまま川に飛び込もうとした時、兄が泣き出し躊躇していると、私達を探し回っていた父が見つけて駆け寄り、
「俺が悪かった。死なないでくれ。おまえ達を死なせる訳にはいかない。おまえ達が死ぬぐらいなら俺が死ぬ。」
そう言うが早いか、川に飛び込んでしまいました。
幸い死に切れずに何とか岸へ泳ぎ着いたのですが、父は その日を境に一滴も酒を呑まなくなり、タバコも完全にやめて、ずっと母には気を使って来たそうです。
父は、酒とタバコを止める事で母に対して、改心した自分を分かって欲しかったのだと思います。
「お袋は、よく忘れる事が出来たな。どうやったら忘れる事が出来た?」
「忘れる事なんて出来ないさ。最初の頃は何とか忘れようとしたけれど、努力しても忘れられるものでも無いし、忘れようとする事をやめたら、逆に気が楽になったよ。
今でも たまに相手にも会うし、未だにその頃の事を夢に見る事も有る。」
「今でも相手に会う?」
「ああ、ここまで話したから全て話してしまうが、相手は妹の良子だよ。他の浮気は我慢出来ても、この浮気だけは許せなかった。」
「えっ、良子叔母さん?」
私は母の辛さを知りました。
私の数倍は辛かったと思います。
もしも妻の相手が私の兄だったなら、私はどうなっていたか分かりません。
「教えてくれ。どうやって2人を許した?」
「おまえには偉そうな事を言ったが、まだ許してはいないのかも知れない。
ただ、それは あの頃のあの人を許していないだけで、今のお爺さんは遠に許している。
あの頃とは違う人だと思っている。」
「お袋は幸せか?」
「ああ、幸せだね。
死ななくて良かった、あの時 別れなくて良かったと心底思っている。
あの頃のお爺さんは今でも嫌いだけれど、その後のお爺さんは大好きさ。
息子の前で惚気るのも嫌だが、川に飛び込んだ後のお爺さんを愛している。」
私は、母の車を借りてコンビニへ行き、同級生に無理を言って妻を解雇してもらい、実家に戻ると
娘は、ピアノのレッスンに、釣りから帰った父が連れて行ってくれていて、暫らくすると 妻が帰って来ました。
「あなた・・・・・・・・・。」
私の顔を見るなり、妻の目には涙が溜まり、
「お帰りなさい、ご苦労様でした。・・・・・・・・いつ戻られたのですか?」
そう言い終ると、溢れた涙が頬を伝っていました。
「今日帰って来た。2人だけで話が有るから家に帰ろう。」
娘の事は母に頼み、妻と2人で家に帰ると向かい合って座りました。
妻を見ていると、稲垣の所には行かずに頑張って来た、袖口が油で汚れた色褪せたTシャツを着て、終始俯いている妻を愛おしく感じます。
「頑張っていたそうだな。いくら溜まった?」
「お義父さんやお義母さんはいらないと言って下さったけれど、少しですが生活費も払わせてもらっていたので、まだ百万ぐらいしか溜まっていません。
あなたに借りた五十万を返すと、残り五十万しか有りません。
車を勝手に借りていたけれど、あなたが帰って来たから返さないと。
工場やコンビニに行くのに車がいるから、五十万で車を買うと・・・・・・・。」
「奥さんに慰謝料をいくら払うつもりでいる?」
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