十年前から電話がかかってきた
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32 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:22:15.56 ID:9FeM9uJP.net
*
「冒険しようぜ!」
朝、携帯の鳴る音で目が覚め、彼女かなと思って出たら、聞こえてきたのは よく知る男の声だった。
33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:22:41.43 ID:9FeM9uJP.net
「意味がわからないんだけど」
「だから、冒険しようってことだよ。楽しそうだろ?」
「いい加減、わかるように話してくれないかな? 桐島」
「だから冒険だって」
いつまでも、話さない桐島に俺はだんだんイラついてきた。
「もう、切るね。じゃあ」
「待って、待てって。ちゃんと話すから」
「最初からそうしてくれないかな?」
「悪かったって」
34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:23:16.59 ID:9FeM9uJP.net
桐島は いつものような お気楽そうな声で、『冒険』とやらのことを話し始めた。
「冒険っていうのはな、宝探しのことだ」
「抽象的な表現がまた別の抽象的な表現になっただけなんだけど? もっと具体的に話してくれないかな? 」
正直もう、いい加減にして欲しかった。
35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:23:37.90 ID:9FeM9uJP.net
「そうだな、具体的に言うとタイムカプセル探しだな」
「タイムカプセル?」
「そうだ」
「タイムカプセルなんて埋めた覚えないんだけど?」
言葉の通り、そんな青春の塊みたいなものを埋めた覚えは一切なかった。
「ああ、俺もないぞ」
きっぱり言い切るその姿は いっそ清々しかったが、本格的にわけがわからなくなってきた。
36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:24:12.60 ID:9FeM9uJP.net
「お前大丈夫か? 埋めてもないタイムカプセルを探せるわけないだろ?」
至極まっとうな意見のはずだ。
埋めてもないものは掘り出せない。
「俺たちじゃなくて、昔の卒業生が埋めたらしいんだよ。それを掘ろうってことだ、わかっただろ?」
「もっとわからなくなったな。なんで他の人が埋めたタイムカプセルを俺たちが掘るんだよ?」
俺は わからないを何回言えばいいんだろうか?『わからない』がゲシュタルト崩壊しそうだ。
37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:24:27.80 ID:9FeM9uJP.net
「実はさ、今年タイムカプセルを埋めて10年たったから掘り出す予定だったらしいんだ。
でも、人数が全然集まりそうになかったから中止になったらしい。それを俺たちが掘り出そうってことだ」
「だからなんでそうなるんだよ? 俺たちにはそのタイムカプセルになんの思い出もないだろ? そもそも何でお前そんなことを知ってるんだ?」
38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:25:16.50 ID:9FeM9uJP.net
「櫻子ちゃんに聞いたんだよ。昔タイムカプセルをうめたってな。あの人うちの学校の卒業生らしいぞ」
「櫻子ちゃん? 誰?」
聞いたことない名前が桐島の口から出ていた。
さっきから俺の言葉には何回クエスチョンマークが使われているんだろうか?
39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:25:54.09 ID:9FeM9uJP.net
「お前知らないのか? うちの学校の音楽の先生だよ。すごいかわいいって有名だぞ」
「知らないよそんなの、音楽の授業とってないし。そもそも、お前も選択音楽じゃないだろ?」
受けてない授業の教師になんて知ってるわけがない。そもそも俺は、隣のクラスの担任の名前すら知らない。
40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:26:09.97 ID:9FeM9uJP.net
「俺は、かわいい人のことは誰だって知ってるんだよ。まぁ、俺だってことを抜きにしても、あの人は結構有名だぞ。知らないお前の方が珍しいからな」
「あっそ」
もう俺は この話から興味を失っていた。
つまるところ、桐島の目的は そのタイムカプセルを掘り出して、その人の機嫌を取ろうというところなんだろう。
そんなことに、貴重な春休みを割くつもりは一切なかった。
その旨を桐島に伝え「一人でやれよ」と言って電話をきろうとした。
41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:26:46.83 ID:9FeM9uJP.net
「待てって、櫻子ちゃんのこと知らないならちょうどいいじゃん。これを機会に仲良くなろうぜ」
調子のいい桐島の声が聞こえた。
43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:27:12.26 ID:9FeM9uJP.net
「仲良くなりたいのはお前だけだろ。俺は一切興味ないから。だから一人で頑張れ」
「わかったよ。後で後悔しても知らないからな」
「絶対にないな」
そう言うと今度こそ電話をきった。
44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:27:30.46 ID:9FeM9uJP.net
しかし、あいつもよくやるよなと思う。
その先生が どんだけ綺麗なのかは知らないが、あいつのルックスや性格だったら、別にその先生じゃなくても たくさん相手がいるだろう。
唯一の問題は自由奔放なところくらいかな。
あれだけにはついていけない人がいるかもしれない。
45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:28:07.34 ID:9FeM9uJP.net
まぁ、そんなことはどうでもいいか。
俺にだってやることはあるからな。
やることといってもただ髪を切りに 行くだけだけど、それでも他人のタイムカプセル掘りよりは有意義なことだろう。
*
47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:28:35.23 ID:9FeM9uJP.net
そういうわけで、髪を切るために美容院まで来た。
ここは床屋というよりは美容院というべきところだろう。
誤解しないでほしいんだけど、別におしゃれに気を使ってるとかじゃないよ。
ただ子供の頃から髪を切る場所を変えてないだけだ。
そこだけはわかっておいてほしい。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:29:25.83 ID:9FeM9uJP.net
「いらっしゃいませー、カット?」
見知った顔の店員が聞いてくる。
「はい」
「じゃあいつも通り美咲ちゃんでいいよね?」
「はい」
「オッケー、じゃあちょっと待ってて」
美咲とは四年くらい前からこの店で働いている店員のことで、最近はずっと この人に切ってもらってる。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:29:43.67 ID:9FeM9uJP.net
十分くらいで美咲さんの手はあいたようで、席に案内された。
「今日はどうする?」
席に着くと早々、美咲さんは美容師の定型句を口にした。
どうすると聞かれても、さっき言った通りこだわりなんか持ち合わせてないので「いつも通りで」と答えた。
ちょっと思ったんだけど、『いつも通り』ってなんかこそばゆい感じがしない?
ほら、バーで「いつもの」とか「あの女性に一杯」って言ってるみたいで、恥ずかしいよね。
まぁ、どうでもいいんだけど。
50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:30:05.76 ID:9FeM9uJP.net
「君、いつも同じこと言うよね。たまには冒険しようよ」
美咲さんは いつも通りに少し不満なのか、どこかで聞いたようなことを言ってきた。
だけど、一日に二回も「冒険しよう」って言われると思わなかったよ。まだ昼過ぎなんだけどね、もしかしたら また別の人に言われるかもしれないな。
51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:30:41.45 ID:9FeM9uJP.net
「安心とか安全を好むんですよ、俺みたいなのは」
「つまらないなー、まぁ、いいや。お客様の仰せのままに」
少し笑う美咲さんの顔が鏡越しに見えた。
「それでお願いします」
52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:31:01.77 ID:9FeM9uJP.net
そうして、俺の髪が切られ始めた。
美容師って すごい話しかけてくる人と、あんまり話しかけてこない人がいると思うんだけど、美咲さんは話しかけてくる方のタイプだった。
俺は本来、どっちのタイプも苦手なんだ。
話しかけてくる人は面倒くさいし、かといって話しかけてこないと気まずくて鏡と自問自答したりしちゃうし、要するにすごい面倒くさい人間なんだけど、でも、美咲さんには何故か話しかけられても平気だった。
53 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:31:27.22 ID:9FeM9uJP.net
もちろん初めて切ってもらった時から たくさん話せたわけじゃないけど、それでも他の人よりは全然大丈夫だった。
それで、何回か通っているうちに普通に話せるようになってた。
54 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:31:44.85 ID:9FeM9uJP.net
なんでだろうか? 別に好きとかじゃないんだ。
ただ、一緒にいるとなんか心地いい感じがする。
美容師の究極のテクニックかもしれない。
桐島も同じような能力を持っている気もするけどな。
*
55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:32:02.55 ID:9FeM9uJP.net
「いや、それ絶対好きですよね?」
もう何度目だろうか? 彼女の口から同じ言葉が繰り返される。
「だからそういうのじゃないって言ってるだろ」
俺が何度否定しても彼女は引かなかった。
「いや絶対好きでしょ」
「だから……」
56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:32:27.53 ID:9FeM9uJP.net
とりあえず、なんでこんなことになっているか説明しよっか。
まず、あの後髪を切り終えて家に帰った。
その後は いつも通り適当に過ごして、夜になると約束通り彼女から電話がかかってきた。
58 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:33:04.55 ID:9FeM9uJP.net
最初は過去(未来)につながった電話の謎について割と真剣に話し合ってたんだ。
でも、いくら話しても結局思い当たる節もなくてだんだん話が脱線していき、気づくと今日あったことをお互いにはなしてた。
59 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:33:22.10 ID:9FeM9uJP.net
その流れの中で美咲さんのことを話した結果、俺は彼女に何回も「好きですよね?」と聞かれ続けられてるわけだ。
60 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:33:39.00 ID:9FeM9uJP.net
「好きですよね? 絶対好きですよね?」
「だから違うって。そんなこと言うなら君だって磯崎先輩って人のこと好きだろ?」
磯崎先輩とは、彼女と話している時に何回か出てきた人で、この人のことを話している時の彼女は どことなく嬉しそうだった気がした。
しつこい彼女への俺なりの反撃だ。
*
「冒険しようぜ!」
朝、携帯の鳴る音で目が覚め、彼女かなと思って出たら、聞こえてきたのは よく知る男の声だった。
33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:22:41.43 ID:9FeM9uJP.net
「意味がわからないんだけど」
「だから、冒険しようってことだよ。楽しそうだろ?」
「いい加減、わかるように話してくれないかな? 桐島」
「だから冒険だって」
いつまでも、話さない桐島に俺はだんだんイラついてきた。
「もう、切るね。じゃあ」
「待って、待てって。ちゃんと話すから」
「最初からそうしてくれないかな?」
「悪かったって」
34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:23:16.59 ID:9FeM9uJP.net
桐島は いつものような お気楽そうな声で、『冒険』とやらのことを話し始めた。
「冒険っていうのはな、宝探しのことだ」
「抽象的な表現がまた別の抽象的な表現になっただけなんだけど? もっと具体的に話してくれないかな? 」
正直もう、いい加減にして欲しかった。
35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:23:37.90 ID:9FeM9uJP.net
「そうだな、具体的に言うとタイムカプセル探しだな」
「タイムカプセル?」
「そうだ」
「タイムカプセルなんて埋めた覚えないんだけど?」
言葉の通り、そんな青春の塊みたいなものを埋めた覚えは一切なかった。
「ああ、俺もないぞ」
きっぱり言い切るその姿は いっそ清々しかったが、本格的にわけがわからなくなってきた。
36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:24:12.60 ID:9FeM9uJP.net
「お前大丈夫か? 埋めてもないタイムカプセルを探せるわけないだろ?」
至極まっとうな意見のはずだ。
埋めてもないものは掘り出せない。
「俺たちじゃなくて、昔の卒業生が埋めたらしいんだよ。それを掘ろうってことだ、わかっただろ?」
「もっとわからなくなったな。なんで他の人が埋めたタイムカプセルを俺たちが掘るんだよ?」
俺は わからないを何回言えばいいんだろうか?『わからない』がゲシュタルト崩壊しそうだ。
37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:24:27.80 ID:9FeM9uJP.net
「実はさ、今年タイムカプセルを埋めて10年たったから掘り出す予定だったらしいんだ。
でも、人数が全然集まりそうになかったから中止になったらしい。それを俺たちが掘り出そうってことだ」
「だからなんでそうなるんだよ? 俺たちにはそのタイムカプセルになんの思い出もないだろ? そもそも何でお前そんなことを知ってるんだ?」
38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:25:16.50 ID:9FeM9uJP.net
「櫻子ちゃんに聞いたんだよ。昔タイムカプセルをうめたってな。あの人うちの学校の卒業生らしいぞ」
「櫻子ちゃん? 誰?」
聞いたことない名前が桐島の口から出ていた。
さっきから俺の言葉には何回クエスチョンマークが使われているんだろうか?
39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:25:54.09 ID:9FeM9uJP.net
「お前知らないのか? うちの学校の音楽の先生だよ。すごいかわいいって有名だぞ」
「知らないよそんなの、音楽の授業とってないし。そもそも、お前も選択音楽じゃないだろ?」
受けてない授業の教師になんて知ってるわけがない。そもそも俺は、隣のクラスの担任の名前すら知らない。
40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:26:09.97 ID:9FeM9uJP.net
「俺は、かわいい人のことは誰だって知ってるんだよ。まぁ、俺だってことを抜きにしても、あの人は結構有名だぞ。知らないお前の方が珍しいからな」
「あっそ」
もう俺は この話から興味を失っていた。
つまるところ、桐島の目的は そのタイムカプセルを掘り出して、その人の機嫌を取ろうというところなんだろう。
そんなことに、貴重な春休みを割くつもりは一切なかった。
その旨を桐島に伝え「一人でやれよ」と言って電話をきろうとした。
41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:26:46.83 ID:9FeM9uJP.net
「待てって、櫻子ちゃんのこと知らないならちょうどいいじゃん。これを機会に仲良くなろうぜ」
調子のいい桐島の声が聞こえた。
43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:27:12.26 ID:9FeM9uJP.net
「仲良くなりたいのはお前だけだろ。俺は一切興味ないから。だから一人で頑張れ」
「わかったよ。後で後悔しても知らないからな」
「絶対にないな」
そう言うと今度こそ電話をきった。
44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:27:30.46 ID:9FeM9uJP.net
しかし、あいつもよくやるよなと思う。
その先生が どんだけ綺麗なのかは知らないが、あいつのルックスや性格だったら、別にその先生じゃなくても たくさん相手がいるだろう。
唯一の問題は自由奔放なところくらいかな。
あれだけにはついていけない人がいるかもしれない。
45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:28:07.34 ID:9FeM9uJP.net
まぁ、そんなことはどうでもいいか。
俺にだってやることはあるからな。
やることといってもただ髪を切りに 行くだけだけど、それでも他人のタイムカプセル掘りよりは有意義なことだろう。
*
47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:28:35.23 ID:9FeM9uJP.net
そういうわけで、髪を切るために美容院まで来た。
ここは床屋というよりは美容院というべきところだろう。
誤解しないでほしいんだけど、別におしゃれに気を使ってるとかじゃないよ。
ただ子供の頃から髪を切る場所を変えてないだけだ。
そこだけはわかっておいてほしい。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:29:25.83 ID:9FeM9uJP.net
「いらっしゃいませー、カット?」
見知った顔の店員が聞いてくる。
「はい」
「じゃあいつも通り美咲ちゃんでいいよね?」
「はい」
「オッケー、じゃあちょっと待ってて」
美咲とは四年くらい前からこの店で働いている店員のことで、最近はずっと この人に切ってもらってる。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:29:43.67 ID:9FeM9uJP.net
十分くらいで美咲さんの手はあいたようで、席に案内された。
「今日はどうする?」
席に着くと早々、美咲さんは美容師の定型句を口にした。
どうすると聞かれても、さっき言った通りこだわりなんか持ち合わせてないので「いつも通りで」と答えた。
ちょっと思ったんだけど、『いつも通り』ってなんかこそばゆい感じがしない?
ほら、バーで「いつもの」とか「あの女性に一杯」って言ってるみたいで、恥ずかしいよね。
まぁ、どうでもいいんだけど。
50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:30:05.76 ID:9FeM9uJP.net
「君、いつも同じこと言うよね。たまには冒険しようよ」
美咲さんは いつも通りに少し不満なのか、どこかで聞いたようなことを言ってきた。
だけど、一日に二回も「冒険しよう」って言われると思わなかったよ。まだ昼過ぎなんだけどね、もしかしたら また別の人に言われるかもしれないな。
51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:30:41.45 ID:9FeM9uJP.net
「安心とか安全を好むんですよ、俺みたいなのは」
「つまらないなー、まぁ、いいや。お客様の仰せのままに」
少し笑う美咲さんの顔が鏡越しに見えた。
「それでお願いします」
52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:31:01.77 ID:9FeM9uJP.net
そうして、俺の髪が切られ始めた。
美容師って すごい話しかけてくる人と、あんまり話しかけてこない人がいると思うんだけど、美咲さんは話しかけてくる方のタイプだった。
俺は本来、どっちのタイプも苦手なんだ。
話しかけてくる人は面倒くさいし、かといって話しかけてこないと気まずくて鏡と自問自答したりしちゃうし、要するにすごい面倒くさい人間なんだけど、でも、美咲さんには何故か話しかけられても平気だった。
53 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:31:27.22 ID:9FeM9uJP.net
もちろん初めて切ってもらった時から たくさん話せたわけじゃないけど、それでも他の人よりは全然大丈夫だった。
それで、何回か通っているうちに普通に話せるようになってた。
54 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:31:44.85 ID:9FeM9uJP.net
なんでだろうか? 別に好きとかじゃないんだ。
ただ、一緒にいるとなんか心地いい感じがする。
美容師の究極のテクニックかもしれない。
桐島も同じような能力を持っている気もするけどな。
*
55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:32:02.55 ID:9FeM9uJP.net
「いや、それ絶対好きですよね?」
もう何度目だろうか? 彼女の口から同じ言葉が繰り返される。
「だからそういうのじゃないって言ってるだろ」
俺が何度否定しても彼女は引かなかった。
「いや絶対好きでしょ」
「だから……」
56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:32:27.53 ID:9FeM9uJP.net
とりあえず、なんでこんなことになっているか説明しよっか。
まず、あの後髪を切り終えて家に帰った。
その後は いつも通り適当に過ごして、夜になると約束通り彼女から電話がかかってきた。
58 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:33:04.55 ID:9FeM9uJP.net
最初は過去(未来)につながった電話の謎について割と真剣に話し合ってたんだ。
でも、いくら話しても結局思い当たる節もなくてだんだん話が脱線していき、気づくと今日あったことをお互いにはなしてた。
59 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:33:22.10 ID:9FeM9uJP.net
その流れの中で美咲さんのことを話した結果、俺は彼女に何回も「好きですよね?」と聞かれ続けられてるわけだ。
60 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:33:39.00 ID:9FeM9uJP.net
「好きですよね? 絶対好きですよね?」
「だから違うって。そんなこと言うなら君だって磯崎先輩って人のこと好きだろ?」
磯崎先輩とは、彼女と話している時に何回か出てきた人で、この人のことを話している時の彼女は どことなく嬉しそうだった気がした。
しつこい彼女への俺なりの反撃だ。
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