僕とオタと姫様の物語
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317 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/06(月) 00:24
姫様は子供の頃の話をしてくれた。
ある日 突然消えてしまった父親のこと。
母親は父の失踪について、幼かった兄弟には何も説明してくれなかったこと。
それから1年もしないで自殺した母親のこと。
言動がおかしくなり、育児のいっさいを放棄して自室に閉じこもりぎみになったこと。
弟は姫様の後をついてまわり、後追いの年齢をとっくに過ぎてるのに決して離れようとはしなかったこと。
彼女は自分のいた世界が変わり果ててしまったことを はじめは信じられなかったと言った。
それは永遠に普遍的で、そこにいることは ごく当たり前の約束されたことで しばらく我慢すればまた元通り、何事もない毎日が戻ってくると信じていた。と。
ところが、父親の妹の家族として再編成されたあたりから子供心にも、こいつはおかしい。自分と幼い弟は見知らぬ世界に住むことになったのだ。と、ようやく そのときになって、耐えがたい悲しみに襲われた。
近所の公園が自分と弟のいる場所であり、実際そこで過ごす時間が多かった。
食事は一日一回だけ。夜眠る時間なって ようやく暖かい部屋に入れた、と笑いながら言った。
それでも暴力にさらされなかっただけ、姉弟は ついていたのだとも言った。
公的施設の門をくぐることもなく、むしろ姉弟は いつもいっしょで、あの公園のいたるところに弟の思い出があり、たまには親切にしてくれる大人もいて 熱い夏の盛り、アイスキャンディや花火をもらうこともあった。
悪い思い出ばかりでもないんだよ。と。
ぼくは何も言わなかった。
肩を抱き、ただ彼女の唇からもれる言葉に耳をかたむけた。
姫様が公園の隅で弟といっしょになって蝉を追いかけてた夏 ぼくは どこで何をしていたんだろう。
弟とゲームソフトの奪いあいで喧嘩をして、泣きわめく弟に とどめの蹴りをいれたときだろうか。
それとも、弟が ぼくの大切なCDに落書きした報復として弟専用ゲームマシンのソフトウェア接続口に接着剤を流しこんだときだろうか。
ぼくは いたたまれない気分になった。でも、ぼくは憐れんでいるわけでもなかった。
姫様の古い時間は残念ながら過ぎ去った。悲しいのは、いまここにいる姫様が悲しんでるということ。
ぼくの目には彼女は自暴自棄に陥ってるようにみえた。自分の未来は不要なもの、弟が消えた夜から こっちを残酷なオマケとしてとらえている。
だけど今にして思えば、そんなぼくの分析こそが甘く幼稚だったわけだけど。
335 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 05:08
Smashing Pumpkinsを3回ほどリピートしたあたりで、姫様は うとうとしはじめた。
シーツでしっかりくるんであげて、ヒーターを高めの温度に再設定した。
眠っているようで頭はしっかりしていて それでいて、複雑な質問には答えられない。
彼女は何か話しをしてほしいと言った。
しばらく考えたあとで、ぼくは夢の話を持ち出した。昨夜みた夢。いや、いつだってのいい。嘘だっていい。
彼女は興味深々で、はやく早くと ぼくを急きたてた。
ぼくは病院の待合室にいる。
風邪をこじらせたのかもしれない。
理由は はっきりとしないけど、ぼくは そこにいて、ぼんやりテレビをながめている。急患ではなかったんだろうね。
ぼくは焦ってはいなかったし、行き交う看護婦も ぼくには無関心だった。ただ順番がまわってくるのを おとなしく座って待っていたんだと思う。
テレビのチャンネルは退屈なワイドショーで そのうち ぼくは、もっと退屈そうな医学雑誌を本棚から引っぱりだした。
ほら、よくあるでしょ。退屈さをまぎらすために、もっと退屈な何かをはじめてしまうことって。
雑誌の最初のページは特集でナノテクノロジーの話だった。
ナノテクっていうのは、驚くほど小さな世界の話。
細菌と同じくらいか、もっと ちいさなロボットでもって体の掃除をしたり場合によっては手術までしちゃうこともある。
でもさ、おかしなことに そこに書いてあるのは そんなことじゃなかった。
微細ロボットをつかって人を大量死させる計画とかどこかの国がもう実験をはじめてるとか、そんな怖くなるような話だった。
嫌気がさして雑誌を空席に投げ出し、それから ぼくはまたテレビに目をやった。
たしか そのときだったと思う。
ワイドショーの画像が一瞬グニャと曲がって、それから緊張したアナウンサーを映し出した。
ほら、よくあるじゃん。報道部からの生中継。
まわりで忙しそうに走りまわるスタッフがいてさ。
そしてアナウンサーは、カメラの手前にいる誰かと話をして視線をカメラに戻さないままソビエト連邦が崩壊したと言い、ついで旧連邦軍の一部が日本に侵攻を開始したと告げた。
どれほど怖かったか。
テレビは それきり何も映らなかったし 病院はソビエト軍に制圧、閉鎖されて ぼくは外にでることもできなかった。
336 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 05:09
戦争になったの?と彼女は聞いた。
「さあ、どうなんだろうね」とぼくは姫様の頭を撫で、「そこで いつも夢は途切れるんだよ」と説明した。
「よく見る夢?」
「頻繁には見ない。でも子供の頃から見てる怖い夢。
侵略軍は子供の頃は火星人だった。
いつの間にか ぼくから空想力がなくなって旧ソビエトになったけどね。
でもさ、いつもほんとに怖いんだよ。
毎回新しい恐怖があって、それに慣れることはないんだ」
「わたしも怖い夢みるよ」
と彼女は言った。
「誰にだって怖い夢はあると思う。気にしないことだよ」
「ヒロは死んじゃう?えっと、その夢の中で」
「死ぬことはないね。途切れるから。ぼくが味わうのは恐怖だけ」
「わたしは死んじゃうの。夢の中で」
「誰かに殺される?追いかけられて?」
「ううん。自殺しちゃうの。ビルからジャンプして」
姫様は あくびをして、すぐに眠りに落ちた。
半ば寝た状態での話だったから、脳の大半は寝てたのかもな。
もうじき夜が明けようとしていた。
5日目の朝。
337 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 05:12
姫様がセクシーな下着姿で眠りについたあと、ケータイに着信があった。
送り手はオタで、メッセージはPCで確認してほしいとのこと。
早いな。すごい士気の高さだ。
PCを起動してメールを確認すると、数時間前に送付したファイルの解説がもう届いてた。
>ヒロくん。確信とまではいかないけど、今回の中身は当りだ。
>いままで意味のなかったジグソーパズルの断片に、
>収まるべき位置を指示することができるかもしれない。
>
>最初にまず確認しておきたいことがある。
>どうにかして、嬢様の本名を調べることができないかな。
>おまえは嫌がるかもしれないけど、
>彼女のバッグをひっくり返してまず免許証を調べることを
>すすめる。
>
>彼女の本名は、佐藤恵子。19歳。
>国内での運転免許取得済み。
>
>その若さでアジアのほとんどの国と、
>ヨーロッパの数ヶ所を旅したことがある。
>
>広東語を少し話せる。
>
>それからジュネーブ商業銀行に口座を持ってて
>預金額は日本円で2800万円。
>
>さらに詳しい説明は、彼女の免許証の確認のあとで。
>
>もちろんおまえには、彼女のバッグに触れないという選択
>肢だってある。
>おれにでも理解できる。そのくらいは。
>
>ここから先は彼女の本物のプライバシーだ。
>おまえは立ち入るべきじゃない。
>いづれにしても連絡をくれ。急いで。
>寝ないで待ってる。
大袈裟なことになっちまったな。
ぼくが知りたかったことは そんなことじゃなかったのに。
彼女のフロッピィの中身が分かれば それでよかったんだ。
こんな大事の予定じゃなかったんだ。
ぼくはオタに返信した。
>もう充分だよ。ありがとうオタ。ここで降りる。
そして、送信ボタンを押したあと、ぼくは彼女のバッグをひっくり返した。説明し難い衝動に駆られて。
ぼくは確かに彼女のフロッピィを盗み見た。でも それは おそらくは解明できない難しい何か、で終わる予定だった。
彼女は なにかよくないこと、をやってるようだったし、あるいは ぼくの助力を必要としているのかもしれない、という勝手な思いこみもあった。
しかし、彼女の財布を開いてみること、それは彼女のプライバシーに直接触れる行為だ。
そんなことはしたくなかった。するつもりもなかった。
でも、ぼくはそうした。
何枚かのクレジットカードに紛れて、免許証は見つかった。
見覚えのある端正な顔立ち。
名前を確認すると、佐藤恵子と書かれてあった。
生年月日から彼女の年齢が19歳だとわかった。
>オタ。彼女は、佐藤恵子。
>間違いない。免許証を確認した。
>ファイルを送信してほしい。
>説明が聞きたい。
346 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 22:23
オタは待っていてくれた。
ぼくからの連絡に待機してたかのようなスピードでレスが返ってきた。
1通ごとにアップして そのまま送ってくれてるんだろう。
紙芝居のように、ファイルがひとつづつ届き、ぼくの指先で開かれる。
>いきなり戸惑うかもしれないけど
>その免許証は偽モノ。つまり偽造。
>嬢様は免許取得後1年以内に免停を喰らってる。
>その後 再発行された形跡はない。理由はわからない。
>
>これを調べるために、やばいことをやった。
>内容は説明しないけど。
>蛇の道はheavy。その手の情報をすぐに洗ってくれるやつが
>いるってことだけ。
>
>金もかかった。請求なんて野暮なことは言わない。
>しかしだ。スニーカをいますぐ梱包して おれに送るくらい
>のことをしても罰はあたらないじゃないかな。
>
>ああ、それから彼女の名前だけは、ほんものだ。
>だから確認する必要があった。
>彼女の免許証の名は つまりパスワードだったってわけだ。
>19歳ってのも嘘。
>名前以外の情報は その後 誰かが更新してるらしい。
>黙ってて悪かった。
>
>でもさ、知ってたら おまえは間違いなく
>彼女のバッグを調べたと思うんだ。
>正直 そうはしてほしくなかった。
>最初におまえが「降りる」とレスくれたとき
>心底ほっとしたんだけどな。
>でもおまえは やはりやった。残念だったよ。
免許証も偽者か。驚いた。
とはいえオタのレスにあった「蛇の道はheavy」の一行を見逃すほど動揺はしてなかった。
その言い回しは いまいちだ。できれば止めたほうがいい。
姫様は子供の頃の話をしてくれた。
ある日 突然消えてしまった父親のこと。
母親は父の失踪について、幼かった兄弟には何も説明してくれなかったこと。
それから1年もしないで自殺した母親のこと。
言動がおかしくなり、育児のいっさいを放棄して自室に閉じこもりぎみになったこと。
弟は姫様の後をついてまわり、後追いの年齢をとっくに過ぎてるのに決して離れようとはしなかったこと。
彼女は自分のいた世界が変わり果ててしまったことを はじめは信じられなかったと言った。
それは永遠に普遍的で、そこにいることは ごく当たり前の約束されたことで しばらく我慢すればまた元通り、何事もない毎日が戻ってくると信じていた。と。
ところが、父親の妹の家族として再編成されたあたりから子供心にも、こいつはおかしい。自分と幼い弟は見知らぬ世界に住むことになったのだ。と、ようやく そのときになって、耐えがたい悲しみに襲われた。
近所の公園が自分と弟のいる場所であり、実際そこで過ごす時間が多かった。
食事は一日一回だけ。夜眠る時間なって ようやく暖かい部屋に入れた、と笑いながら言った。
それでも暴力にさらされなかっただけ、姉弟は ついていたのだとも言った。
公的施設の門をくぐることもなく、むしろ姉弟は いつもいっしょで、あの公園のいたるところに弟の思い出があり、たまには親切にしてくれる大人もいて 熱い夏の盛り、アイスキャンディや花火をもらうこともあった。
悪い思い出ばかりでもないんだよ。と。
ぼくは何も言わなかった。
肩を抱き、ただ彼女の唇からもれる言葉に耳をかたむけた。
姫様が公園の隅で弟といっしょになって蝉を追いかけてた夏 ぼくは どこで何をしていたんだろう。
弟とゲームソフトの奪いあいで喧嘩をして、泣きわめく弟に とどめの蹴りをいれたときだろうか。
それとも、弟が ぼくの大切なCDに落書きした報復として弟専用ゲームマシンのソフトウェア接続口に接着剤を流しこんだときだろうか。
ぼくは いたたまれない気分になった。でも、ぼくは憐れんでいるわけでもなかった。
姫様の古い時間は残念ながら過ぎ去った。悲しいのは、いまここにいる姫様が悲しんでるということ。
ぼくの目には彼女は自暴自棄に陥ってるようにみえた。自分の未来は不要なもの、弟が消えた夜から こっちを残酷なオマケとしてとらえている。
だけど今にして思えば、そんなぼくの分析こそが甘く幼稚だったわけだけど。
335 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 05:08
Smashing Pumpkinsを3回ほどリピートしたあたりで、姫様は うとうとしはじめた。
シーツでしっかりくるんであげて、ヒーターを高めの温度に再設定した。
眠っているようで頭はしっかりしていて それでいて、複雑な質問には答えられない。
彼女は何か話しをしてほしいと言った。
しばらく考えたあとで、ぼくは夢の話を持ち出した。昨夜みた夢。いや、いつだってのいい。嘘だっていい。
彼女は興味深々で、はやく早くと ぼくを急きたてた。
ぼくは病院の待合室にいる。
風邪をこじらせたのかもしれない。
理由は はっきりとしないけど、ぼくは そこにいて、ぼんやりテレビをながめている。急患ではなかったんだろうね。
ぼくは焦ってはいなかったし、行き交う看護婦も ぼくには無関心だった。ただ順番がまわってくるのを おとなしく座って待っていたんだと思う。
テレビのチャンネルは退屈なワイドショーで そのうち ぼくは、もっと退屈そうな医学雑誌を本棚から引っぱりだした。
ほら、よくあるでしょ。退屈さをまぎらすために、もっと退屈な何かをはじめてしまうことって。
雑誌の最初のページは特集でナノテクノロジーの話だった。
ナノテクっていうのは、驚くほど小さな世界の話。
細菌と同じくらいか、もっと ちいさなロボットでもって体の掃除をしたり場合によっては手術までしちゃうこともある。
でもさ、おかしなことに そこに書いてあるのは そんなことじゃなかった。
微細ロボットをつかって人を大量死させる計画とかどこかの国がもう実験をはじめてるとか、そんな怖くなるような話だった。
嫌気がさして雑誌を空席に投げ出し、それから ぼくはまたテレビに目をやった。
たしか そのときだったと思う。
ワイドショーの画像が一瞬グニャと曲がって、それから緊張したアナウンサーを映し出した。
ほら、よくあるじゃん。報道部からの生中継。
まわりで忙しそうに走りまわるスタッフがいてさ。
そしてアナウンサーは、カメラの手前にいる誰かと話をして視線をカメラに戻さないままソビエト連邦が崩壊したと言い、ついで旧連邦軍の一部が日本に侵攻を開始したと告げた。
どれほど怖かったか。
テレビは それきり何も映らなかったし 病院はソビエト軍に制圧、閉鎖されて ぼくは外にでることもできなかった。
336 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 05:09
戦争になったの?と彼女は聞いた。
「さあ、どうなんだろうね」とぼくは姫様の頭を撫で、「そこで いつも夢は途切れるんだよ」と説明した。
「よく見る夢?」
「頻繁には見ない。でも子供の頃から見てる怖い夢。
侵略軍は子供の頃は火星人だった。
いつの間にか ぼくから空想力がなくなって旧ソビエトになったけどね。
でもさ、いつもほんとに怖いんだよ。
毎回新しい恐怖があって、それに慣れることはないんだ」
「わたしも怖い夢みるよ」
と彼女は言った。
「誰にだって怖い夢はあると思う。気にしないことだよ」
「ヒロは死んじゃう?えっと、その夢の中で」
「死ぬことはないね。途切れるから。ぼくが味わうのは恐怖だけ」
「わたしは死んじゃうの。夢の中で」
「誰かに殺される?追いかけられて?」
「ううん。自殺しちゃうの。ビルからジャンプして」
姫様は あくびをして、すぐに眠りに落ちた。
半ば寝た状態での話だったから、脳の大半は寝てたのかもな。
もうじき夜が明けようとしていた。
5日目の朝。
337 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 05:12
姫様がセクシーな下着姿で眠りについたあと、ケータイに着信があった。
送り手はオタで、メッセージはPCで確認してほしいとのこと。
早いな。すごい士気の高さだ。
PCを起動してメールを確認すると、数時間前に送付したファイルの解説がもう届いてた。
>ヒロくん。確信とまではいかないけど、今回の中身は当りだ。
>いままで意味のなかったジグソーパズルの断片に、
>収まるべき位置を指示することができるかもしれない。
>
>最初にまず確認しておきたいことがある。
>どうにかして、嬢様の本名を調べることができないかな。
>おまえは嫌がるかもしれないけど、
>彼女のバッグをひっくり返してまず免許証を調べることを
>すすめる。
>
>彼女の本名は、佐藤恵子。19歳。
>国内での運転免許取得済み。
>
>その若さでアジアのほとんどの国と、
>ヨーロッパの数ヶ所を旅したことがある。
>
>広東語を少し話せる。
>
>それからジュネーブ商業銀行に口座を持ってて
>預金額は日本円で2800万円。
>
>さらに詳しい説明は、彼女の免許証の確認のあとで。
>
>もちろんおまえには、彼女のバッグに触れないという選択
>肢だってある。
>おれにでも理解できる。そのくらいは。
>
>ここから先は彼女の本物のプライバシーだ。
>おまえは立ち入るべきじゃない。
>いづれにしても連絡をくれ。急いで。
>寝ないで待ってる。
大袈裟なことになっちまったな。
ぼくが知りたかったことは そんなことじゃなかったのに。
彼女のフロッピィの中身が分かれば それでよかったんだ。
こんな大事の予定じゃなかったんだ。
ぼくはオタに返信した。
>もう充分だよ。ありがとうオタ。ここで降りる。
そして、送信ボタンを押したあと、ぼくは彼女のバッグをひっくり返した。説明し難い衝動に駆られて。
ぼくは確かに彼女のフロッピィを盗み見た。でも それは おそらくは解明できない難しい何か、で終わる予定だった。
彼女は なにかよくないこと、をやってるようだったし、あるいは ぼくの助力を必要としているのかもしれない、という勝手な思いこみもあった。
しかし、彼女の財布を開いてみること、それは彼女のプライバシーに直接触れる行為だ。
そんなことはしたくなかった。するつもりもなかった。
でも、ぼくはそうした。
何枚かのクレジットカードに紛れて、免許証は見つかった。
見覚えのある端正な顔立ち。
名前を確認すると、佐藤恵子と書かれてあった。
生年月日から彼女の年齢が19歳だとわかった。
>オタ。彼女は、佐藤恵子。
>間違いない。免許証を確認した。
>ファイルを送信してほしい。
>説明が聞きたい。
346 名前:70 ◆DyYEhjFjFU 投稿日:04/09/08(水) 22:23
オタは待っていてくれた。
ぼくからの連絡に待機してたかのようなスピードでレスが返ってきた。
1通ごとにアップして そのまま送ってくれてるんだろう。
紙芝居のように、ファイルがひとつづつ届き、ぼくの指先で開かれる。
>いきなり戸惑うかもしれないけど
>その免許証は偽モノ。つまり偽造。
>嬢様は免許取得後1年以内に免停を喰らってる。
>その後 再発行された形跡はない。理由はわからない。
>
>これを調べるために、やばいことをやった。
>内容は説明しないけど。
>蛇の道はheavy。その手の情報をすぐに洗ってくれるやつが
>いるってことだけ。
>
>金もかかった。請求なんて野暮なことは言わない。
>しかしだ。スニーカをいますぐ梱包して おれに送るくらい
>のことをしても罰はあたらないじゃないかな。
>
>ああ、それから彼女の名前だけは、ほんものだ。
>だから確認する必要があった。
>彼女の免許証の名は つまりパスワードだったってわけだ。
>19歳ってのも嘘。
>名前以外の情報は その後 誰かが更新してるらしい。
>黙ってて悪かった。
>
>でもさ、知ってたら おまえは間違いなく
>彼女のバッグを調べたと思うんだ。
>正直 そうはしてほしくなかった。
>最初におまえが「降りる」とレスくれたとき
>心底ほっとしたんだけどな。
>でもおまえは やはりやった。残念だったよ。
免許証も偽者か。驚いた。
とはいえオタのレスにあった「蛇の道はheavy」の一行を見逃すほど動揺はしてなかった。
その言い回しは いまいちだ。できれば止めたほうがいい。
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