死の淵から
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夫が倒れたのは店長に恐怖を感じてから数日後のことでした。
出社前に玄関口で崩れるように倒れる夫を見て私は愕然とし、体の奥からわきあがってくる恐怖を感じました。
その後のことは無我夢中で仕事も休み夫が目を覚ますのをじっと待っていました。
夫が目を覚ましたとき、心のそこから安堵する自分を感じ、私自身ほっとする気持ちであるのと同時に、この感情が家族としてだけのものなのでは無いかと考えてしまう自分に、はたと気がつき、また自己嫌悪に陥るのです。
夫が退院する前の日 私は意を決して店長に電話し、もう一度店長に決別の意思を伝えました。
しかし、店長は、
「俺は別にいいが、君が耐えられないんじゃないのかな?何なら旦那の前で いつものようにしてやろうか」
「主人は関係ありません!」
「関係ないとはね・・・まあいい君が来ないなら こっちから行くまでだ」
「・・・・それだけは止めてください」
「それじゃまた」
と電話を切られてしまいました。
私は恐怖で体が硬直し、頭の中で前のことが思い出されました。
また店長に抱かれるだけで体が動かなくなるのではないか?
もし夫がいる間に店長が家にやってきたら 夫は興奮して、また倒れてしまうかも知れない、その時 私は店長の呪縛から逃れられるだろうか?
私に自信はありませんでした。
散々悩んだ末、私は結局自ら店長の家に行くことを店長に伝え、いつまでこんなことが続くのかと思うと酷い絶望感に襲われるのです。
夫が退院した当日は、夫の友人達も訪れ 夫も楽しく過ごしていたようです。
あのように笑顔を見せる夫を見て、最近私に笑顔を見せることが、ほとんどなくなったということに思い当たり、また激しい自己嫌悪に襲われました。
私はこの時から この家族にとって今や私は必要ないのでは、いても悪影響しか及ぼさないのでは と考え、私がいないほうがいいのかもしれないと思い始めていました。
しかし、自業自得であると分かっていても 今まで自分が、大切に育ててきた家族との絆を捨て去る勇気も無く、しかし、店長との関係を切る勇気も無く、夫には知られたくないと思いながら、夫を愛しているのか悩む。
このときの私は自分自身をもてあますほど、矛盾を抱えた中で生きていました。
自分の気持ちの確かであるはずの物が何一つ確かであると思えなくなっていました。
次の日、夫は私に「久し振りに2人で出かけないか」と言ってくれました。
夫は私が理不尽な態度を取っているにもかかわらず、それでもなお 私に優しいのです。
どうして私は店長との関係を切れないのだろう?
これ以上夫を騙し続けていくことに何の意味があるのだろう?
店長が飽きるまで ずっと私は夫を拒否し続けて生きていくのだろうか?
それは夫を愛してるのではなく、私自身この生活を、無くしたくないだけなのでは無いだろうか?
今の生活を無くしたくないことと夫を愛していることは同じことなのだろうか?
だからと言って こんなことを続ける理由なんて無いのに、私の中で答えの出ない問答が延々と繰り返されていました。
しかし、夫が家にいるにも関わらず、無意識にお風呂に入って準備をしている私がいるのもまた紛れも無い事実です。
そのような自分の姿を鏡で見ながら、私はどこで間違ってしまったんだろうと考えていました。
体を拭き下着を履きドライヤーで髪を乾かそうとした、その時浴室の扉が開きました。
夫がそこに立って私の姿を見ているのです。
私は はっと気が付き「見ないで」と声を上げ泣いてしまいました。
夫は一時 唖然とし、そして次の瞬間 私に覆いかぶさり私の下着を剥ぎ取ったのです。
私の秘部は店長に剃られていましたから・・・夫は私の秘部を見ると そのまま固まってしまい、その隙に私は下着を手に取ると一目散に寝室へと向かいました。
何も考えられない・・・ただ何もかも無くしてしまった実感だけは、私の中に確かな事実としてありました。
『もうここには居られない・・・私は必要ない』
その言葉だけが頭の中を支配しています。
寝室から出るとき夫と鉢合わせし、一瞬夫の顔が見えました。
その瞬間、私は背中がちりちりと痛みそして、夫を突き飛ばし涙がこぼれるのが分かりました。
夫の手を振り切り玄関に向かう短い間 ただここから逃げることしか考えていませんでした。
私はこうなっても最後まで夫に向き合うことから逃げたのです。
玄関口で夫に捕まり、私は何も考えられず、ただただ泣くことしか出来ないで、夫に何も言えず手を振り払おうとしていました。
その時、夫が突然胸を押さえ、その場に蹲り、何か言いたそうに口を開くと そのまま倒れ、そして私は頭を抱え泣き叫ぶことしか出来ませんでした。
夫の呼吸が乱れぐったりした時、私はとっさに救急車を呼び、呼吸器を夫の口に当て、泣きながら必死に救命措置をしていました。
救急車が来て夫に付き添いながら、夫の手を握っていると自然と、「ごめんなさい、ごめんなさい」と言っている自分に気が付きました。
そして夫が かすかに口を開いて「諒子・・・諒子・・・」と私を呼ぶのです。
そして夫に顔を近づけたとき 夫は目を閉じながら、「すまない・・・愛しているんだ諒子・・・」とうわごとのように言っているのです。
私はその場で崩れ落ち 頭を抱えながら震え、救急隊員の人に抱えられなければ車を降りることも出来ません、そして、しばらく椅子に座っていると看護士さんに、
「大丈夫ですか・・・旦那さんは命に別状は無いようですよ。安心してください」
と言われた時 私は人目を憚らず号泣してしまいました。
看護士さんは私の身を気遣いながら、「これだけ思ってくれる奥さんが居て旦那さんは幸せですね」と言うのです。
私は思わず「貴方に何が分かるの!」と怒鳴ってしまい、そしてすぐに自分がしてしまったことを思い出し気が狂いそうになりました。
そこからは私も どうやって家についたのか憶えていません。
ただ病院から夫の両親に連絡したのだけは憶えています。
家に帰ると玄関で夫が倒れたことが思い出され、もう自分自身で どうしたらいいのか分からなくなっていました。
しばらく玄関口で呆然としていると、
「来ないと思ったら・・・旦那でも死んだか?」
と聞こえました。
私が振り向くと そこに立っていたのは店長でした。
私は首を横に振りました。
「じゃ ばれたって所か・・・・」
不思議と店長を見ても何にも感じません。
憎いともすがりたいとも・・・感情自体無くなっていたかも知れません店長はゆっくり私に近づき、
「もう君に行く場所は無いだろ?今度 私は転勤になる、なんなら君の面倒は俺が見てやるから一緒にくるか?」
と言い、そして私は肩を落とすように頷いてしまいました。
私は考えることを止めて淡々と家を出て行く準備をしていました。
しばらくすると子供が帰ってきたのが分かり、子供を両親に預けなければと思い、両親に連絡したのだと思います。
このときのことは はっきりとは憶えていません。
ただ子供達は、私の態度に不安を抱いたのか泣いていたのだけは なんとなく憶えています。
そして車に乗り出て行こうとした時、私の前に田中さんが立っていました。
田中さんにも暴言を履いたと思います、しかしあの時 田中さんが、私を止めてくれなければ私の末路は店長の慰み者になっていたのだと思います。
田中さんの家に向かう途中 私は色々考えていました。
これからのこと、夫とのことそして店長のこと・・・・
田中さんの家で美鈴さんと話しながらも、私は どこか現実離れした感覚の中に居ました。
田中さんたちと話している間も現実感に乏しく、自分が何を言ってるのか よく分かっていませんでした。
夫を裏切ってしまった、でもずっと夫を愛していたはず
しかし、それが本当なのかと考えると・・・・
店長が憎い・・・でも関係を止められなかったのは私。
夫の前から いなくなりたい・・・・私には夫の前に出る勇気は無い。
じゃ子供は?でも私が居ては 夫をもっと苦しめる。
逃げたいだけ?そうかもしれない・・・
どうすればいいのか・・・私には全然分かりませんでした。
田中さんに「これからどうするの」と聞かれても、私には ちゃんとした答えなど無いのです。
このときも私は全ての責任を店長に押し付け、私は悪くないと そう自分に言い聞かせるのが精一杯でした。
次の日から私は結局、店長の所へ行くことも無く、また仕事にも行かず、何も考えず ただ子供の世話だけをしている状態でした。
私の様子を心配した田中さんが両親に連絡し、私を父の兄の元へ預けることが決まったときも、どこか人事のように感じていました。
子供の前でだけ見せる正気の部分と一度子供がいなくなると、まるで幽霊のような私を見て、このままでは夫も私も壊れてしまうと考えたのでしょう。
私は夫と一生会わないつもりで、父の提案を受け入れ、夫が退院する直前 私は夫の前から姿を消しました。
-----妻の最後の手紙----
あの日、貴方が玄関口で倒れた時、私は救急車の中で、貴方が言った愛しているという言葉を聞き、初めて貴方に愛していると言われた時のことを思い出していました。
私が忘れていた気持ちを取り戻した時、私の前に広がっている絶望の淵に気がつき、自分の過ちを・・・どこで間違ったのかのかを気がついたのかもしれません。
私の人生が狂ったのは、決してホテルで乱暴されたからでは無いのです。
私は私自身で貴方を裏切ることを選んだ時から貴方に平気で嘘をつける人間になってしまった。
貴方には謝っても謝り切れないほど酷いことをしました。
もう元には戻れません。
貴方の人生にご多幸があらんことを
諒子
--------------------
手紙には離婚届が同封されていました。
私は何も言えず、ただ妻のことを考えていました。
それでも私は妻を愛しているのだろうかと、幾度も自問自答しました。
妻を取り戻したい、私の妻は諒子だけだ、何度考えても そう思えました。
私は何としても妻に会うべく義両親に、妻に会わせてくれと詰め寄りました。
最初、妻の両親は答えをはぐらかし、妻の居場所を教えようとはしませんでした。
私は「なら何としても調べてやる。興信所を使っても、妻の手紙から大体の場所は分かってるんだ。このまま離婚なんて納得できるか!」と言い、義父兄の住所が分かるものを調べ始めました。
義父が止めるのも聞かず、電話帳を調べ、はがきを調べ義父兄の住所が分かると、とうとう義両親も観念したのか、肩を落としながら義父が
「勇君・・・すまない あの子は今兄のところにはいない」
「どういうことですか!?今諒子はどこに?」
私の剣幕に義母が驚き、
「勇さん諒子は・・・」
というと義父が義母を制し、
「あの子の行き先はおそらく あの男のところだろうと思う。」
「あの男?店長のことか!?」
「そうだ・・・あの男は、すまない私達が馬鹿だったんだ。私達があの男の脅しに乗ってしまったばっかりに・・」
「脅し?」
「私はあの子のことを思って あの男と話をつけ様とした。このまま あの男に証拠を握られたままでは、諒子は君のところへ戻れない、だから私はあの男に金を・・・」
「お父さんまさか・・・」
「あんな卑劣な男がいるなんて・・・」
「お父さん落ち着いて事情を話してください」
「私は あの男を探し出し一切関わらないことを約束してくれと話に言ったんだ。
こちらから訴えないことと引き換えにと、そうしたらあの男は、
『訴えるのはあなた達ではなく旦那さんでしょう?
そうですね、旦那さんに訴えられたら仕方ないでしょう。
でも旦那さんこのこと知ってるんですか?
知らないなら気の毒だから俺が教えてあげようかな』
とあの子の卑猥な写真を取り出し、
『これがいいな・・・教えるだけじゃ信憑性無いから、これも一緒に送ることにしよう』と言うのだ。
私がそれだけはやめてくれ!と頼むと金を要求され仕方なく・・・」
「何故!何故ですか!私に相談してくれれば こんなことには・・」
「もうこれ以上 あの子を傷つけたくなかったんだ!」
「いくらです・・・全部で」
「積もり積もって500万ほど・・・」
「1回じゃなかったんですね?でも何でそれが諒子がいなくなる理由に?」
「あの子は知ってしまったんだ 私達が脅されているのを・・・
それで私に隠れて あの男のところへ会いに行ってしまった。
そしてまた隠れてあの男と会っていたんだ・・・
私達は元気を取り戻したと思っていて・・・
兄の店で手伝いをしていたから、まったく疑ってなかった。
まさか夜に抜け出して会っているなんて・・・
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