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水遣り
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妻に断れる理由などありません。

「宮下さん、君も飲んで」

佐伯が妻にワインを注ぎます。さりげなく妻の体に触れます。

ワインの酔いも手伝っているのでしょう、妻も拒否しません。手の甲で乳房を押すように触れます。

「部長さん、だめっ、悪戯が過ぎます」

乳首をも押したのでしょうか。

ほんのり酔った顔が益々、ピンクに染まります。敏感な乳首です。感じもしたのでしょう。

「ごめん、手が吸い寄せられたみたいだ」

佐伯は すっと引きます。女の恥ずかしがる事は無理強いしません。女の扱いに慣れているのです。

妻は佐伯に誠実さを感じてしまいます。若干の物足りなさも残るのです。

「そうだ宮下さん、君の車は先に代行に頼んで返しておこう。考えてみれば僕も代行を頼まなければいけない。君は僕の車で送って行こう」

少し考えればおかしいのが解る筈ですが、妻は佐伯の好意として受け取ります。

帰りがけ、佐伯から小さな包みを渡されます。

「社用の携帯電話だ。仕事の連絡用に使ってくれればいい。僕の番号とメールアドレスはインプットしておいた。後は自分で必要な分インプットすればいい」

どうして佐伯が直接、手渡すのか。妻はその不自然さに気がつきません。業務用なら、課から支給される筈です。

佐伯が個人で妻との連絡用に用意したものなのです。


食事が終わり、車に乗り込みます。佐伯が乗ってきた車はリムジンタイプの社用車です。運転席からは後部座席の様子は見えません。

乗ってみると後部座席は密室になるのが解ります。会議も出来るスペースです。運転席からは完全に遮断されています。クーラーボックスも付いています。


A亭から自宅へは20分位の道程でしょうか。

妻は安心しきっています。酔いが手伝い、シートにもたれ目を閉じ、少し頭を佐伯の方に傾げています。

妻は眠ってはいません、又眠れる状態ではありません。

密室にお互い悪く思っていない、しかも酔った二人だけが居ます。妻は何かを期待しているのかも知れません。

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どれ程走ったでしょうか、佐伯が突然、妻に接吻をします。

佐伯の胸を手で押します。ほんの小さな力です、形だけの抵抗は佐伯に悟られてしまいます。

「いやっ」と言う声も佐伯の唇に塞がれ吐息に変わります。

妻の小さな唇の形が変わるほど吸われ、佐伯の舌が妻の舌を誘い出します。初めは おずおずと舌を預けます。舌を舐め合っているうちに自分を忘れてしまうのです。

妻の舌を十分味わった佐伯は唾液を流し込みます、それも大量に。妻はゴクリと喉を鳴らし飲み下します。

食道を通り胃の腑へと流れ落ちていきます、それは乳首と女陰に電撃を放つのです。乳首は硬く尖り、女陰は濡れそぼります。



佐伯の手はブラウスのボタンを外し、ブラジャーの下にある乳首を捉えます。

掌でさわさわとこすり上げ、親指と人差し指で摘み捻ります。

ワインを口移しで飲ませ舌と舌を絡めながら、それは強弱をつけて続きます。

苦しくなったのでしょうか、溜息と共に顔が離れます。

佐伯はブラジャーを取り乳首を口に含みます。舌で転がし甘噛みします。妻は もう忘我の境地です。

顔を佐伯の肩に預け、半開きの口からは甘い善がり声と共に「あぁ部長さん」と声が漏れるのです。

妻は乳房への愛撫だけで達してしまったのです。

突然の佐伯の声に、妻は我に帰ります。

「宮下さん、そろそろ君の家だ」

山の頂から麓に下ろされた様な気分です。何と答えて良いのか解りません。

「少し手前で降りたほうが良いだろう。人の目があってはいけない」

「はい、そうします」

妻は これも佐伯の心使いだと受け取ります。

「僕は来週月曜日から一ヶ月位本社を留守にする。大阪支社の立ち上げがいよいよ本番だ。留守中は宜しく頼む」

出張は以前から決まっていた事です。

佐伯は、妻に男としての印象を残す為に食事をわざわざ今日にしたのです。

『洋子はもう落ちたな。完全に俺の女にしてやる』

「部長、今日はご馳走様でした」

車を見送り家に向かいます。

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100メートルばかりの距離を どんな風に歩いたのか覚えていません。

はずれたブラジャーはハンドバッグの中です。

一歩送る度、佐伯に愛撫され敏感になった乳首がブラウスに擦れ先程の快感を呼び起こします。

しとどに濡れた女陰は歩く度に くちゅくちゅと音を立てているようです。


玄関が見えると一気に現実に戻ります。

居間の灯りが点いていません。夫は未だ帰宅してないのです。

ほっとしました。シャワーを使います。シャワーの飛沫が乳首にかかり快感を弾き出します。

女陰からは止めどもなく愛液が流れ出します。

『どうしてしまったのでしょう私の体は?』

この体の変化が不思議なのです。

妻は膣に手をやります。クリトリスは自分の手でも、夫の圭一にも愛撫してもらった事はないのです。

右手は膣に左手は乳房に。

膣口を擦り上げ、乳房を揉みしだき夢中でオナニーをするのです。

妻にはオナニーの習慣はありません。結婚前に数度、その程度です、勿論 結婚してからは一度もありません。

オナニーで絶頂に達します。

一度では体が満足していないのが解ります。達した後も手が膣に乳房に伸びてしまうのです。

佐伯の名を呼びながら、何度も何度も絶頂に達しやっと体の火照りから解放されます。

こんなに体が求めるのは佐伯への思いが強いからだと妻は信じ込んでしまうのです。



佐伯は媚薬を使ったのです。ワインに混ぜて飲まされたのです。

佐伯は焦ってはいないのです。今日、行為まで及ばなかったのは、妻に佐伯を恋焦がれる思いを十分にさせたかったのです。

金曜日には、私の帰宅が10時以降になる事も妻から聞いて知っています。

妻がオナニーをする時間は十分あります。

そして佐伯の計画は まんまとその通りになったのです。


3時間程の持続性のある媚薬です。

食事を始めたのが6時半、今は10時、そろそろ薬の効果が切れる頃です。

着替えが終わり居間のソファーに座ります。

『さっきまでの私は何だったのでしょう?今の私は夫にどう映るのでしょうか?』

媚薬の効果が薄れ平常に戻った妻は急に心に痛みを覚えます。

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金曜日の夜は ほぼ毎週、得意先と懇談を兼ねた食事会です。

本当は早く帰りたいのです。

たまには金曜日の夜、妻とゆったりと過ごしたいのです。自然と帰り足が早くなります。

「只今」

「貴方、お帰りなさい。お疲れ様でした。お風呂にしますか?」

「そうしてくれ。飯はいい。客と食べてきた」

仕事から帰れば先ず風呂です。妻と過ごす時は清潔でいたい、そう言う気持ちがあるからかも知れません。

妻は常に私の後です。結婚して以来の習慣です。


バスルームに入ります。



『うん?』


タイルが、誰かが風呂を使った後の様に濡れています。

一瞬、女臭の様なものを嗅いだ気がしましたが、石鹸の強い匂いに紛れてしまいます。

『気のせいか』

「洋子、お風呂使ったか?」

「はい、今日棚卸しのお手伝いで汗をかいたの。先に使って御免なさい」


私の何気ない言葉に妻の表情が変わります。小さな事でも嘘が嫌いな妻です。嘘をつくのが辛いのでしょう。

私は その嘘が気づきません。

「いや、良いんだ。タイルが濡れていて気になっただけだから」

妻は その話題から逃げたいのでしょう、話を逸らします。

「貴方、ビールにしますか、それともウィスキー?」

「今日はワインが飲みたい。ワインにしてくれないか」


妻は目を伏せます。

「はい、解りました」

ワインの言葉で佐伯を思い出したのでしょうか、顔が朱色に染まります。

鈍感な私にも妻の様子の変化が解ります。ふっと物思いに沈んだ顔の中に、いつも以上の色気を漂わせています。

「顔が赤いが、どうかしたか?」

「棚卸しで疲れたみたい。でも大丈夫です。私もワイン頂こうかしら」

私にこれ以上 詮索されたくないのでしょう。顔の赤みをワインで相殺させます。


私は性への欲求は強い方ではありません。

いや、妻がセックスに興味が無いものと思い込み、自分の衝動を抑えているだけかも知れません。

しかし今日の妻の表情を見ていると抱きたい衝動が湧いてきます。


妻を寝室に誘います。

「おいで」

「疲れてるの。その気になれないわ」

私のベッドに体を横たえたものの、やんわり拒絶します。

ほんの1時間ほど前に4度も5度も達した体です。後には何も残っていないのでしょう。


それでも強引に口を吸い、乳房を愛撫します。

少しは感じたのでしょうか、妻の口から甘い香りが漂ってきます。妻は感じ始めると甘い吐息を漏らすのです。

膣の中に自分の物を収めると何か違う感じがします。いつもより熱く、少し緩い感じがします。愛液も多い様です。

しかも、いつもは私の背中を抱く妻の腕がありません。だらりとベッドの上に伸びたままです。

10数分かの結合の後、妻の膣に精を放ちます。

妻は達していない様です。

今時の高校生なら もう少しましな事をするでしょう。自分でも随分稚拙だと思う時があります。

『妻は達していなかった。どうして背中を抱かなかったのだろう?』

ふと疑問が湧きますが、仕事の疲れから睡魔に襲われ直ぐに眠ってしまいます。


自分のベッドに戻った妻は眠った私の横で冴え冴えとしています。

『勝手な人。私を置いていって。もう少しだったのに』

考えずとも、妻は私と佐伯の愛撫を比べてしまいます。

佐伯には乳首を愛撫されただけで達してしまう。乳首がこんなに感じるとは思ってもいなかったのです。

夫のそれは雀が啄ばむ程度にしか感じません。


佐伯の接吻はストレートグラス一杯にも余る量の唾液を流し込まれ、全身に疼きを走らせたのです。

舌と舌を絡み合わせ、痺れるほど思い切り吸われ、長い舌を差し込まれた時は脳を焼かれる思いでした。

佐伯の唾液、長い舌は、その経験が無い妻にとっては、ザーメン、男根に匹敵、いやそれ以上のものだったのです。

夫とのそれは ただ唇と唇を、舌と舌を合わせるだけです。

勿論、唾液を飲んだ事もありません。

愛する人との人との行為は それでも快感をもたらします。

しかし、佐伯の行為は次元が違います。

妻のメスの本能を掘り起こすのです。

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夫に対し酷い事をしてしまった、すまないと言う思いはあります。

しかし、まだ抱かれた訳ではありません。

そんな思いより、佐伯に植えつけられた快感の残滓の方が はるかに大きいのです。

たった一度、口を吸われ、乳首を愛撫されただけでこんなにも変わってしまった。

もし佐伯に抱かれたら、またどう変わっていくのでしょうか?

『佐伯に抱かれてみたい』





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