水遣り
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あれは本当に私の妻だったのだろうか。もう一度帰って確認したい衝動に駆られます。
私と妻の20数年は何だったのだろう。ここ2,3ヶ月で妻のこの変貌振りは何なのだろう。
犬にも劣る妻の行為を見てしまった。何故、そこまで妻は落ちてしまったのか?
先程見た妻の痴態が振り払っても振り払っても出てきます。男との絡みを見た方が まだ楽だったかも知れません。自然と涙が出てきます。
どれ程泣いたでしょうか。我に返ると床に涙の水溜りが出来ていました。
これだけ変わった妻は もう私のもとへは、帰って来ないかも知れない。
否、これ程の痴態を見てしまった私は、例え妻が戻ってきても許す事ができるでしょうか。
どうしてもっと早く気がつかなかったのだろう。暫く終わってしまった事を悔やんでいました。
考えて居るうちに、嘆きが怒りに変わります。妻をこんな風にした男が憎い。
妻を憎むより、男に反撃しよう。怒りの矛先は先ず男に向けるべきなのです。
今は顔の無い男です。顔がない事には反撃のしようがありません。
誰だろうヒントを掴もうと考えます。
椅子に座り直します。
フロントにビール、ウィスキーと少々の摘みを注文します。うじうじしても始まりません。考える環境を整えます。
『確か、トシオとか呼んでいたな』
トシオ、私は記憶を辿ります
私の仕事関係、交友関係の名前を思い浮かべます。名前まで覚えている人は僅かです。トシオと言う名前は浮かんできません。
『ふっ、まあ俺の関係でいる訳はないよな、そんな馬鹿な男は』
私は常にバッグの中に名刺ホルダーを持ち歩いています。仕事関係と交友関係に分けてあります。
交友関係と言っても、ただ一度しか会った事の無い人も含まれています。
無駄だと思いながらも一応見てみることにします。あいうえを順に整理してあります。その名刺は直ぐ出てきます。
佐伯俊夫、妻が勤める会社の食品部部長、肩書きは常務。
妻に紹介され名刺交換した覚えがあります。
佐伯なら妻と接点が多い、しかも妻は彼のお陰で正社員になれたと思っています。佐伯なら妻の出張を自在に出来ます。
今、思えば妻は必ず夜10時にトイレにたっていました。佐伯との痴話なのでしょう。
例え私にばれても、仕事の連絡だと逃げる事が出来ます。
『佐伯か。こいつだな、間違いない』
私は部屋に備えつきのパソコンに向かいます。市内の興信所を検索する為です。
ウェブを見ても何処が良いのか解りません。
トップページに”浮気の本質を見つめましょう”と言うような事を掲げている業者がいました。他所とは違うものを感じ、此処にきめます。
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朝一番でその興信所に飛び込みます。
「いらっしゃい、どうしました、鬼のような形相をしてますよ」
60半ばの温和な紳士が私を迎えてくれます。余程、酷い顔をしていたのでしょう。
入った瞬間、選ぶ所を間違えたと思います。この人じゃ調査出来ない、そう思ったのです。
「どうして、うちに来ました?」
「どうしてって、そのー」
「これは聞き方が悪かった。どうして、うちを選んだのですか」
『そんな事聞いてどうするんだ、この親父は。市場調査じゃあるまいし』
私は もうこの場を立ち去って、次の業者に行きたかったのです。
一応答えます。
「いや、御社のホームページが他とは雰囲気が違っていました。浮気の本質がどうとか書かれていたものですから」
「うちは御社と言われるほど立派ではないですよ。面白い方だ」
「面白いって?」
「これは失礼。普通 誰もこんな時に浮気の本質なんて言葉に目もくれないものです」
「じゃあ、どうしてあんな言葉を?」
「大事な事だからです。妻の浮気は妻だけの責任だけで無いかも知れない」
「冗談じゃない。妻の浮気は私のせいじゃない」
「良く考えて下さい。貴方は他の女を抱きたいと思った事はありませんか?商売女や出会いの女ではないですよ。その時、貴方は女を抱きましたか、それとも」
「人生相談に来たのではない。失礼します」
踵を返し、ドアーへ向かいます。
その時、声が掛かるのです。
「貴方は まだ奥さんを愛していますね?」
その言葉が私を所長の方に振り向かせます。
興信所の良し悪しは私には解りません。どこに任せても結果は同じようなものかも知れません。
所長の人柄に商売以上のものを感じ、結局ここにお願いする事にします。
私の名刺を見て、妻の名前を聞いた時、一瞬表情が変わったような気がします。
妻の事、考えられる相手の男の事を話します。
相手の男が地元の名士でも所長は動じる風でもありません。
調査料金等聞いて この日は帰ります。
この興信所にお願いしたのは偶然でした。この偶然が信じられない程の更なる偶然を呼びます。まるで神が苦しんでいる私に与えた贈り物のように。
勿論、私はこの時点では気がついていません。
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まだ11時です。家に帰るには早すぎます。
映画で時間を潰します。見たかった映画ですが、スクリーンを目で追っているだけです。
映画館を出て1時半、まだ早い。取りあえず、妻に電話します。
「宮下です」
妻の声はいつもと変わりありません。
「僕だ。今、成田だ。2時間半くらいで家に着くと思う」
「お疲れ様でした。お待ちしています」
喫茶店で時間を潰します。
妻を見て平常心でいられるか、罵声を浴びせてしまうのでないか。考えてしまいます。調査の結果が出るまでは平静でいよう。
喫茶店を出て家へ向かいます。
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『汚らわしい事をしてしまった』
皿に盛られた精液を、女陰を擦りながら犬のように舐めとった。
今、妻は恥じ入っています。自分を卑下しているのです。自分が今までしてきた事に気がつくのです。
『佐伯とはもう』
夫の電話で我に返ります。夫の声を聞くと申し訳ない思いで一杯になるのです。
昨日の行為で尚更、その思いは強くなります。
「ただいま」
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
妻の顔は沈んでいるようです。しかし、いつも通りの受け答えに腹が立つのです。
『どうしてお前はそんな普通の態度でいられるんだ』
妻の髪を掴み引きずり回したい衝動に駆られます。押さえたものが顔に出たのでしょう。
「貴方、お疲れになったみたいですね?顔色が優れません」
妻の言葉に また腹が立ちます。
「疲れるのは当たり前だ。昨日・・・・・」
喉まで出掛かっている言葉を飲み込みます。
「昨日どうかされたのですか?」
「いや、何でもない。少し疲れた。早いが風呂に入る」
私はバスルームに向かいます。
妻は あんな行為をしても、平常でいられるのか。
佐伯との関係も私の推測が正しければ50回は超えているかも知れません。
私にばれなければ、平常でいられるのでしょうか。
その回数の圧倒的な多さに怒りを覚えるのです。劇的に妻を変えてしまった男に怒りを覚えるのです。妻を犬にしてしまった男を殺したいのです。
『待っていろ佐伯』
怒りを抑えようと冷水シャワーを頭から浴びて、バスルームを出ます。
「貴方、食事にされます」
テーブルには私の好物が並んでいます。
「いや、飯はいい」
好物を摘みにビールを飲みます。
妻は毛糸で何か編んでいます。マフラーのようです。
今時は毛糸で編物をする女性は少ないでしょう。妻は色々編んでくれます。靴下、手袋、セーター。
今でも季節がくれば、私はそれを身に着けていました。妻の気持ちで暖かかったのです。
「貴方のマフラーを編んでるの。今年の冬は寒いそうですから」
妻の気持ちが解りません。佐伯とあんな関係になっても平常の生活を営めるのです。
私はウィスキーを持ってリビングのソファーに座り直します。
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ごく普通の夫婦の風景が そこにはあります。その風景に引っ張られて、一つの事を思い出します。
台湾で買ってきた妻へのプレゼントがあるのです。バッグから小さな包みを出し妻に渡します。
「有難う。これは何ですか?」
「まあ、綺麗」
ブローチです。大きな紫水晶の回りに普通の水晶を散りばめてあります。
まるで、妻の好きなフラッシュダークネクタリーのようです。
妻も直ぐ気がつきます。
「クリスマスローズみたい」
「気に入ってくれたか」
「うん、嬉しい、本当に有難う」
妻は着ているブラウスに付けようとしています。
「本当は昨日、渡そうと思っていた。だが昨日はまだ台湾だ」
「どうして、昨日なんですか?」
「君は覚えていないか、昨日10月17日は僕たちが初めて会った日だ。あれから25年か」
大学対抗水泳で私はある大学のOBとして、妻は対抗側の3年生として参加しました。それが妻との出会いでした。
妻も思い出したのでしょう、ブラウスに付けようとした手が止まります。
その手を膝に置き、妻は顔を俯け、その目はブローチを見つめ続けています。
「どうした」
「嬉しいんです。それなのに・・・」
後は言葉になりません。
『圭一さんはこんな事まで覚えていてくれた。それも私の好きなリスマスローズに託してくれて。それなのに、それなのに私は・・・』
”それなのに”、私はわざと違う解釈をします。
「特別な記念日でもない。君も忙しかった。忘れる事もあるさ」
私はずるい男です。こんな時にわざわざ贈り物をする亭主はいないでしょう。
喜ばす為にあげたのではありません、妻の反応を見ているのです。贈り物で妻を苛めているのです。
妻は そんな事を知る由もありません。
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漫然とテレビを見ています。妻はまた編物を始めています。
10時になり妻はトイレに立ちます。こんな時でも佐伯との約束は守るのです。
ついさっき、”それなのに”と涙を流したばかりです。妻には魔物が住んでいるのでしょうか。
相手が佐伯だと100%の確証が無くとも、ここで妻に もう止めろと言えた筈です。携帯を取り上げて確認すれば済む事です。
結果が出るまでは手を出さない、そう決めています。相手は腐れ男でも一応地元の名士です。100%の証拠が無ければ叩けません。
成り行きに任せる事にします。
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