逆転
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自分の生活設計か?男との今後の事なのか?
生活なら当初は、私が援助してもいいのですが、男との事は関知するものではありません。
これほど長く続いた関係を直ぐに断ち切れるものではないと、この年まで生きた私には分かります。
身体の関係を結んだ男と女は、心の契りも出来てくるものでしょう。
「なるべく早くけじめを付けてくれ」
「・・・・子供達は?何て言えばいいの?」
「もう大人だよ。俺から話すさ。その後はあの子達が決めればいい」
妻はしゃがんだまま立とうとしません。肩が小刻みに震えているのは、まだ泣いているのでしょう。
彼女の気持ちを信じるなら、このままの生活もあるのかもしれない。
でも、私は後戻りはしません。どうであれ俺は男だ!そう叫びたい。
これから、まだまだやらねばならない事も山積みですし、一歩も後戻りは出来ません。
この一連の現実は、自分自身にも責任があったのでしょう。しかし、妻と男との関係は長すぎるし、その期間が贖罪であると思う事にしました。
離婚願望が強かったくせに、いざと言う時に躊躇してしまった。
情けないとも思いましたが、いくら気持ちが醒めてると言えども今までの夫婦の歴史があります。当然に情がまったくないわけではないのです。
でもいいです。お互いの幸せなんて言いません。これからは、私と子供達の幸せだけを考えて行きます。
ましてこれから、どう努力しても彼女との生活は苦痛でしかないと思えるのです。
不倫されたのは当然面白くはありませんが、本当はそれほど堪えてもいない自分がいるのは、愛などはもうないと悟っているのです。
私と子供達が幸せなのが、彼女のためだと思いましょう。
『さようなら。ありがとうね』
心の中で妻に声をかけましが、やっぱり私も涙が出そうです。
何度も何度も期待していた時が近づいたのに、私の心の中は複雑で困ります。
「今は話す気分じゃないだろう?悪いけど少し出てくる。話したい事がまとまったら夜にでも、また話し合おう」
不動産屋にでも行って、家賃がどのくらいするのか見てこようか。また金がかかるな。
ふらりと家を出て近くの不動産屋の前の張り出しを見ると、思っていた以上に高いものです。
その中で、何とか手頃な物件がないかと探すと、それなりにあるものですね。
1ルームでトイレとお風呂があれば、どうにか不自由はしないと思います。今の家庭は非常事態なのですから、贅沢は言ってられませんでしょう。
何軒かの店で こんなものかなと納得した物件を見つけました。現地に行って見たわけではありませんが、そんな事はどうでもいいのです。少しでも早く行動に出たい。そこそこ家から近くて、なるべく安ければ助かるのです。
店の中に入り思い切って手付金を払いましたが、恥ずかしい話し5000円だけです。手持ちがそれだしかないのですから情けない限りです。
夕方近く家に戻ると、居間から娘達の華やいだ声が聞こえてきます。
私の帰宅に気が付いた長女が笑顔で話し掛けてきましたが、そこに妻の姿はありません。
「お帰りなさい。お母さんと会わなかった?探しに行くとか言って出て行ったわよ」
私が何処へ行くのかも知らないで、どう探すと言うのか。また探しに来て何をしようと思っているのか。
私には分かりませんが、携帯と言う便利な物があるのにと、思ったとたんに持たずに出たのに気付きました。
部屋に行き携帯の着信履歴を確認すると、確かに妻からのものが何通もあります。
居間では まだ話が弾んでいるようで、私が入ると長女が笑いながら話を振ってきました。
「ねぇ、ねぇ、お父さん。この子、彼氏が出来たんだって」
「あ〜ぁ!お姉ちゃん!内緒だって言ったのにぃ!」
その話を聞いた私の視線が少し険しかったのか、長女は からかってきました。
「あれぇ、お父さん妬いてるの?」
そうなんです。次女の彼氏に敵意を感じたのです。
その感情は妻が男と関係を持った以上に嫉妬したのでした。
妻への感情よりも娘への嫉妬心が強いのは どんなもんなんでしょう?世のお父さん達はどうですか?
「そっそんな事ないよ。そうか、青春してるのか」
冷静になった時に、自分のそんな時代に思いを馳せますと、私にもそんな時があった。
でも流れに任せて、その場その場で適当に生きてきただけで、本当に心から人を愛した事があったのか?
あの時の彼女らは今、どうしてるのか。
私はこの人でなければ駄目なんだと思って結ばれたのか?
惰性の人生が産む結果は初めから見えていたのかも知れませんね。だけど、御見合い結婚で幸せな人生を送っている御夫婦もいらっしゃる。
私は心から愛して、この人のためならどんな犠牲もいとわない。そんな気持ちで結婚と言う人生の一大事に立ち向かうべきだったのです。
そのへんが、大いに欠けた未熟者だったと、素直に認めざるおえないですね。
「広く浅く沢山の男友達と付き合って、この人と思うのを探したらいいよ」
良いアドバイスなのかは分かりませんが、一応は、親として何かを言いたいと口から出た言葉です。
「いやよ、そんなの!彼は素敵なの!」
次女はむきになって言い返してきました。
はい、はい、好きにしてちょうだい。今時の子に何を言っても聞かないでしょう。
そんなこんなで賑やかな雰囲気に任せて、私の決意を子供達に伝えます。
「あのな、お父さんと、お母さん、しばらく別々に暮らそうと思うんだ」
「・・・・・・・・・・・」
雰囲気が一変してしまいました。
妻の取った行動を、この子達は知っています。
私達夫婦に起こりえる事態だとも感じていたのだろうと思いますが、それでもショックなのでしょう。
「少しだけ?また一緒に暮らすんでしょう?」
長女が次女の気持ちも伝えてきました。
「・・・それはないと思う・・・」
色んな事を伝えたいと思うのですが、それだけ言うのが精一杯です。
そんな時に妻が帰ってきました。
私と子供達の話の内容は分かっていないのでしょうが、微妙な雰囲気には気付いたようです。
神妙な表情で私達と同じ席につきました。
まずは乗り越えなければならない第一の関門です。
『俺は男だ!俺は男だ!!腹に力を入れて立ち向かえ』
適当にその場を濁して逃げてきた自分自身に言い聞かせます。
家族皆が私を注視しています。
「お父さん、部屋を借りる事にした。今度の休みに間に合えば引越ししたいと思ってるんだ」
子供達の方だけを見て喋り出しました。
「・・・・・・・・・」
誰も口を開く者がいません。私の意思の強さが滲み出ていたからなのでしょうか?
しかし、条件が少し変わってしまったのです。
「私が原因だから私が出ます。ただ離婚は少し待って欲しい・・」
子供達も妻が出る事に異議はなく、親の離婚についても心の準備が必要だからと次女が主張するので飲むしかありません。
その次女を嬉しそうに見つめる妻が少々気にはなりましたが・・・
それでも、こうすんなりと事が進むとは思っていなかったので了解しました。
下準備が整っていたとは言え、こんなにスムーズに行くとは思わなかった。それが本心です。
私が決めてきた所でいいのかどうか下見をさせましたが、それでOKだとの事で引越しまでに時間は掛かりませんでした。
出て行こうとする妻に、娘達の目を盗んで こそっと渡した離婚届には、私のサインが書かれています。
「気持ちの整理が出来たら提出してくれ。出したら連絡してくれな」
その言葉に目を伏せ返事はありませんでした。
その態度に子供達の了解が出ても、第2関門を迎えるのだと覚悟したものです。
あの日、次女を見た嬉しそうな表情と、この日の妻の表情に離婚には、中々応じまいと悟ったのでした。
離婚は人生の中でも大イベントだと思いますが、今の時代に珍しい事でもありません。
それに抵抗する妻の真意は いかばかりなものなのか?
妻の居ない生活は、私には日常と何の変わりも感じなかったのですが、子供達には違ったようです。
特に次女は寂しそうで可愛そうに思います。
何の罪もないこの子達に辛い思いをさせているのは、明らかに私達夫婦の責任です。
早く帰宅した時に食事の用意をしてくれている次女の背中を見ると、妻と2人で台所に立ち私に今回の事を水に流せと訴えたそうにしていた日を思い出します。
『ごめんな』
心の中でそう呟くしかない。
これはこれで結構辛いのです。
ただ居場所も知っているのだから、会いに行けばいいし、もう大人なの君に、お父さんがとやかく言う事はないよ。
しばらく経つと、その通り行き来はしていたようです。
私に気兼ねしてか、はっきりとは言いませんでしたが、出て行ってから1日に1回は必ず連絡を取ってきていた妻から聞いていました。
何もなかった夫婦のように、
「食事はちゃんと出来てる?不便な事があったら何時でも行くわよ」
と新婚当時のような優しい口調が携帯の向う側から聞こえてきます。
私も敢えて離婚届の話はしません。
それが尚更電話をしやすくしたのか、次女が会いに行った時には、少女のように弾んだ声で嬉しそうに話すのです。
それでも次女しか会いに来ないのが せつないようですが。
それはそれで、まだ家族の絆が切れていないのを喜んでいるのかもしれません。
私は私で羽を伸ばし、帰りが遅くなる日もしばしばです。
たがが外れた私は1人者のような振る舞いでした。
境遇を気に掛けてくれる、あの同僚と飲み歩き、奥さんからクーレムを付けられる始末でしたし、娘達にも小言を言われます。
取引先のあの女性とも合コンまがいの飲み会を何度も催していましたが、ある時に同僚が軽口を叩きました。
「君達お似合いじゃないか。こいつ半分独身のようなもんだ。唾を付けるなら今だぞ」
「ばっ馬鹿言うな。俺はよくても此方に失礼じゃないか。ねぇ、ごめんね」
彼女は微笑むだけです。
この軽口が運を運び、その日のうちに彼女のメールアドレスをゲットしたのです。
それでも結婚以来、妻以外の女性との付き合いがなかったもので、メールする勇気が持てなかっのです。
何の連絡もして来ないのに業を煮やしたのか、最初のコンタクトは彼女からです。と言っても、挨拶代わりの他愛のないものでしたが。
それでも何かウキウキするものですね。嬉しかったなぁ。
久し振りに気分よく遊び歩く私に、子供達が釘を刺してきました。
「たまには、お母さんの所へも顔を出して来てね」
この言葉は結構重いんです。
すっかり独身になったつもりの私を現実に戻します。
子供が居なければ、このままスンナリと行くかもしれないのに、そうは問屋が卸しません。
しょうがなく、妻のアパートに出向きますが、彼女の車がないのをいい事に直ぐに立ち去る私でした。
どうして居ないのかなんて気にも止めないのです。
実はこの頃、例の彼女と交際を出来るのでは、と予感めいたものを感じていたのが私にそうさせたのです。
あくまでも私の希望的予感でしかありませんがね。
居ないのだからしょうがないと自分に言い訳をしても、子供達には納得が行かないようです。
男との繋がりを連想させてしまうからなのでしょうが、それは妻とのやり直しを望んでいるからなのかと思うと重い気持ちになってしまいます。
口には出さないまでも、離婚届を少しでも早く提出してくれればと望んでいるのですから。
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そんな中途半端な日々を送っていた時分に、携帯に見慣れない番号の着信がありました。
「・・・岸部の家内でございます・・・突然お電話して申し訳ありません・・・今よろしいでしょうか・・・」
言いにくそうに話す相手に、私も頓珍漢な受け答えをしてしまいます。
「あぁ、どうも。ご無沙汰しております」
もう少し気の利いた事を言えなかったものか。
「・・・こんな事を、お願いする立場じゃないのは、重々承知しておりますが・・・」
「何かありましたか?」
岸部が会社での立場が危うくなり、今度の事を何とか穏便にすませて助けてくれないか。
そんな内容の事を申し訳なさそうに、おどおどしながら懇願するのでした。
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