突然の海外赴任
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すると奥さんは頷いて、
「私も今、主人と2人で話し合いたいと思っていました。」
稲垣夫婦は、そのまま座敷に残り、私達は寝室に行き、
「ずっと俺を騙していたのだな。身体の関係はあの時だけかも知れないが、ずっと繋がっていたのだな?」
「繋がっていた?いえ、そうかも知れません。
結婚してから 偶然同じ支店になるまでも、何度か電話で話したりしていました。
同じ支店になってからも、関係を持ったのは1晩だけですが、2人だけで食事に行った事も有ります。
理香が生まれてからは疎遠になって、連絡も取り合っていませんでしたが、支店長として彼が来た時、正直嬉しかったです。」
「あいつとは どの様な関係なんだ?お互い、そんなに好きなら、奴が婚約を破棄してでも結婚すれば良かったんだ。どうして俺と結婚した?」
「違うのです。彼とはその様な関係では有りません。あなたを愛したから結婚したし、今でも愛しているのはあなただけです。
彼とは結婚したいとは思っていなかったし、ましてや抱かれたいなんて思った事は一度も有りません。」
私には妻が理解出来ません。
「それならどうして抱かれた?レイプされたのか?今回もずっと脅されていたのか?」
「違います。彼は その様な事はしません。」
「それなら聞くが、抱かれて感じなかったのか?気持ち良くならなかったのか?」
「行為中は興奮もしたし、気持ち良くもなっていました。抱かれていて凄く感じてしまいました。
ごめんなさい。でも、彼とセックスしたいなんて思った事は有りません。」
聞けば聞くほど、迷路の奥深く迷い込んで行く様な感覚です。
私は、妻の言葉を何とか理解しようとしましたが、やはり訳が分からずに黙っていると、暫らく沈黙が続いた後、
「彼の言う事に間違いは無いと思っていたし、彼の言う通りにしていれば、私は幸せになれると信じていました。でも、愛しているのは あなただけです。」
その後も、妻の涙ながらに話す稲垣に対する思いを聞いていて、私にも少しだけ分かった事が有ります。
妻は、父親に裏切られ、その後も男の嫌な面ばかり見せられて男性不信になりました。
その後、母親や姉にも裏切られた形になり、男性不信と言うよりは、人間不信に陥っていたのかも知れません。
信じられるのは自分自身だけになってしまい、猛烈な孤独感の中、気が付くと稲垣だけが、唯一身近に感じられる存在になっていたのでしょう。
まだ自分以外の人間を信じる事の出来る、心の拠り所になっていたのかも知れません。
妻が生まれて初めて接した、真剣に妻の事を思い考えてくれる、絶対に妻を裏切らない存在だと思ってしまったのでしょう。
鳥は、生まれて初めて見た動く物を、親だと思い込むと聞いた事が有ります。
それと同じ様に、稲垣は妻が接した初めての信頼出来る誠実な男で、それは次第に男女の枠を越えた、回りにいる人間とは全く違う、特別な存在だと潜在意識の中に刻み込んでしまったのかも知れません。
「上手く説明出来なくて ごめんなさい。
彼は違うのです。父親とも違うし、兄とも違う。
結婚をしたい相手でも無いし、恋人という存在でも無い。
そうかと言って友人とは全く違います。」
私が思うに、言い換えれば それら全てなのでしょう。いいえ、神とまでは言いませんが、それらを越えた存在なのかも知れません。
もしも、そうだとすると、これは夫婦の愛情や絆を遥かに越えた感情だと思え、絶望的になってしまいました。
「終ったな。俺達は完全に終ってしまったな。いや、智子の中ではずっと前から終っていたのかも知れない。離婚しよう。」
「嫌です。離婚したく有りません。私はあなたを愛しています。
正直、彼に言われて数ヶ月前まで離婚を考えていました。
どの様にすれば あなたを少しでも傷付けずに離婚出来るか考えていました。
あなたと別れて彼と再婚するには、どの様にすればよいのか真剣に考えていました。
彼は今でも、私と一緒になりたいと思ってくれていると思いますが、私はあなたと別れるなんて出来ないと気付きました。
自分の幸せを捨ててでも、私と理香の幸せを真剣に考えてくれている彼には 言えずに、だらだらと関係を続けてしまいましたが、
何が有ろうと私はあなたと別れる事など出来ないと知りました。どの様な形でもいい。あなたの側にいたい。
離婚なんて言わないで下さい。それだけは許して下さい。」
「だらだらと?もう無理をするな。
本当にそう思ったのなら、関係を切る事が出来たはずだ。
どの様な理由が有ろうとも関係を続けた。
いや、智子からは切れなかったのかも知れない。
それが全ての答えではないのか?」
泣きじゃくる妻に、
「明日、出て行ってくれ。これで終わりにしよう。理香は俺が育てる。」
妻は顔を上げると、私の目を見て必死の形相で、
「それは出来ません。理香を あなたに任せる事は出来ません。あなただけに負担を掛ける事は出来ません。」
「出来るさ。理香の事を負担だなどとは思わない。それに、おまえには任せられない。おまえは今まで理香の事など考えもせずに、奴に抱かれていただろ?」
「違うの。理香はあなたの子供ではないの。彼の子供なの。あっ・・・・・・・・・。」
私は自分の耳を疑うと同時に、目の前が真っ暗になり、思考回路は停止してしまった様です。
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何処か遠い所で妻の声が聞こえます。
「あなた、ごめんなさい。あなた、ごめんなさい。」
その声は、徐々に近くなり、私を戻りたくない現実へと戻してしまいます。
現実に戻れば、悲しみから気が狂ってしまうのではないかと思っていた私は、現実に戻るのが怖かったのですが、人間の脳は上手く出来ているのかも知れません。
許容量以上の悲しみが急に襲って来た時には、心が壊れてしまわない様に それらの全てを受け付けない様にして、守ってくれているのかと思えるほど冷静な私がいました。
きっと後になってから、今以上の悲しみが襲って来るのでしょうが。
「以前から分かっていたのか?」
妻は、流石にもう離婚を覚悟したのか、泣いてはいても、割とはっきりとした口調で、
「いいえ、考えた事も有りませんでした。彼から聞くまでは・・・・・・。」
「奴から聞いたのは いつだ?どうして奴に分かる?」
「彼が支店長として赴任してきて、4ヵ月ほど経った頃です。」
妻の話によると、稲垣のアパートで私と妻の血液型、娘の血液型を聞かれたそうです。血液型で性格判断でもするのかと思い、私と妻がA型で、娘がO型だと答えると、
「やはりそうか。」
妻が、何がやはりそうなのか聞くと、稲垣は立ち上がって窓から外を見ながら、
「お互いA型の夫婦からは、A型の子供かO型の子供しか生まれない。
稀にそうでは無い子供が生まれるケースも有るらしいが、そんな確率は ごく僅かで無いに等しい。
またA型同士の夫婦からはA型の子供が生まれる確率が高いらしいが、理香ちゃんの血液型はO型。俺もO型だ。」
妻には稲垣の言っている意味が分かり、
「そんな事は有りません。確率はそうかも知れないけれど、理香は主人の子供です。」
「どうして分かる?DNA検査でもしたのか?智子は理香ちゃんが生まれてからも、2人目が欲しくて避妊をした事が無いだろ?
しかし子供は出来ない。その前だって5年も出来なかった。
結局、十数年避妊しないでセックスしていて、出来たのは理香ちゃん1人だけだ。
その理香ちゃんが、宿った時期に私と関係をもっている。」
「でも・・・・あの時は、子供は出来ないと・・・・・・・・・・・。」
「私も最近まで そう思い違いしていたが、よくよく思い出せば、出来ないのではなくて出来る可能性が低いというだけで、全く可能性が無い訳では無かった。
だから その前に1度・・・・・・・君にもそう説明した覚えが有る。」
妻が、その時期 私とも関係をもっていたので、それだけでは決められないと言って食い下がると、
「私も智子も、不妊の原因は智子に有ると決め付けていたが、もしもご主人に原因が有ったとしたら?
何度も言うが、ずっと避妊せずにセックスしていても、理香ちゃん以外出来なかったじゃないか。」
妻は、信頼している稲垣の言葉に、次第にそうかも知れないと思う様になり、問題が大き過ぎて涙も出ずに、座り込んだまま立てなかったそうです。
それを聞いた私も、その確率が高いと思いました。
昔、子供を生めない嫁は、いらないと、一方的に離縁された時代も有ったそうですが、私も そこまで酷くは無いにしても、男の勝手な考えで、妻に原因が有ると思い込んでいた時期が有りました。
思い出せば、妻が一晩外泊した後、それまで妻から誘われた事は一度も無かったのに、妻は毎晩の様に求めて来た様な記憶が有ります。
その時は、無断外泊をした事で、私の機嫌をとっているのだろうと思ったのですが、
今考えると、稲垣と関係をもってしまった罪悪感からしていたのか、または稲垣との間に子供が出来てしまった時の事を考えて、私の子供だと誤魔化す為に、セックスをせがんで来たのかとも思え、
「あいつとの子供が、出来てしまっても良い覚悟で抱かれたのか?それとも、あいつの子供が欲しくて抱かれたのか?」
「違います。あなたとの子供が欲しくて・・・・・・・・・・。」
私との子供が欲しくて稲垣に抱かれたとは、さっぱり意味が分かりません。
「理香の事は俺にとっては何よりも大切な事だ。俺と喧嘩して、あいつの所に行ったところから、詳しく聞かせてくれ。」
話している内に妻は、娘に会って帰って来た時の様な状態になっていて、淡々と詳しく話し出しました。
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当時、妻は子供が出来ない事で、軽いノイローゼの様な状態になっていて、時々何もかもから逃げ出したい気持ちに襲われ、そのような時は、つい私に当たってしまっていたと言います。
しかし、私は情け無い事に、妻が多少辛そうだと思っていても、そこまで精神的に追い込まれていたとは気付かずに、妻が私に突っ掛かってくる事が不愉快で、つい言い争いになっていました。
「特にお義母さんから、子供は まだかと言われるのが辛かったです。
お義母さんは、私を実の娘の様に思っていてくれていて、悪気なんて無く、本当に心配してくれているのが分かっていただけに、余計辛かったです。
それと、単純に子供が欲しかったのも有りましたが、私は一人になるのが怖かったから、どうしてもあなたの子供が欲しかった。
あなたの子供を生んで、あなたとの絆を もっと強くしたかった。
そうなれば お義母さんとも、血の繋がりは無くても子供を通して、もっと本当の親子の様になれると思った。」
「それなら尚更、どうして稲垣と関係を持つ事になったのかが理解出来ない。
本当に俺との絆を強くしたかったのなら、稲垣なんかに抱かれないだろ?
言っている事と、やった事は逆の事だろ?」
銀行は、昼の間も営業している為に交代で昼食をとるそうですが、私と言い争った翌日、偶然稲垣と昼休みが重なり、稲垣を見つけると隣に座って、子供が出来ない事で私との仲が、最近ギクシャクしていると話しました。
「今仕事の事で頭がいっぱいだから、一人にしてもらえないか?」
妻を女性として意識していた稲垣は、周囲の目が気になったのか、素っ気無く答えると席を立ってしまい、残された妻は落胆を隠せませんでした。
稲垣の態度で より落ち込んでしまい、今夜もまた何かで私と言い争いになってしまわないか心配になり、重い気持ちで銀行を出た時に 稲垣が追い掛けて来て、今日はもう少しで帰れそうなので、喫茶店で待っていて欲しいと言われたそうです。
一度は素っ気無い態度をとられているだけに、やはり気に掛けてくれていたという喜びは大きく、私に電話をしてから喫茶店で待っていると、入って来た稲垣は座りもせずにレシートを掴んで言いました。
「ここでは お客さんに会うかも知れないので、要らぬ誤解を受けても嫌だから、私のマンションへ行って話そう。」
妻は、稲垣の奥さんにも聞いて貰えると思い、稲垣に案内されて当時住んでいたマンションに行くとリビングに通され、ソファーに腰を下ろした時、初めて奥さんは実家に行っていて留守だと聞かされました。
疚しい関係では、無いにしても 奥さんに悪い気がして、一度は帰ろうと思ったのですが、じっと見詰める稲垣の目と目が合った時に、この人なら助けてくれると思ってしまい、
不妊で悩んでいる事を話し、どの様にしたら夫婦の仲が上手く行くのか相談すると、何も言わずに ただ妻を見詰めていた稲垣が話し出した内容は、信じ難いものでした。
「このままでは、いずれご主人との仲が取り返しのつかないほど壊れてしまう。全ての原因は子供が出来ないという事だけだ。それならば、子供が出切る様にすればいい。」
「それが出来ないから悩んでいます。お医者さんにも行きました。でも駄目なのです。」
「ご主人も行ったのか?医者は何と言っていた?」
「主人はいずれ行くと言っていて、まだ行ってくれませんが、私はホルモンのバランスが崩れていると言われたので、おそらく原因は私に有ると思います。」
「婦人科の医者をしている友人がいるのだが、智子さんの話を聞きながら彼が言っていた事を思い出していた。
彼が言うには、不妊の中にも色々有って、病的な物には医学的な治療が必要だが、
精神的なものも多く、その中には『慣れ』と言うのも結構有るそうだ。」
「慣れ?・・ですか?」
「ああ。動物には発情期が有って、その時に交尾をするのだが、子孫を残す目的だけで交尾をする彼らは、余程の事が無い限り、ほとんどが妊娠するそうだ。
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