戦争の体験談を語るわ
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92 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:25:44.01 ID:c1y0p92o
俺達が向かったモスクはさ、前にソニア達と一緒に来たモスクだったんだ。
あの時は、まさかこんな形で再び来ることになるとは思わなかったけれど、安心した気がする。
これからどうしたらいいのかとか、父さんは無事なのかとか、色々と聞きたいことや不安は山積していたのだけれど、緊張や疲労から体力的に限界がきていた俺やソニア達は、着いてからすぐに寝てしまったんだ。
93 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:26:59.85 ID:c1y0p92o
たったの数日、二日ほどの出来事だったのに、ゆっくりと安心して建物の中で寝られるのが、とても久しぶりに感じた。
94 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:30:45.82 ID:c1y0p92o
目が覚めたときには、もう辺りは暗くなっていて、夜になっていたんだ。
かなり長時間、寝入ってしまっていたんだ。
起きたら何だかトイレに行きたくなってさ、俺は大人の人を呼んで一緒に行ってもらおうと思ったんだ。
早朝まで暗い山や森の中を歩いて来たというのに、トイレに一人で行くのが怖かったんだ。変だよね。
でも、周りを見渡してもモスクの中には大人が誰も居なかった。
あれ?おかしいな。もしかして夢なのかな?とか、まだ寝起きで頭がぼーっとしていた俺は思っていたんだ。
だけど、少ししてさ、外が騒がしいのに気づいた。
95 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:33:50.38 ID:c1y0p92o
どうしたんだろうと不思議に思って、モスクの外に出て周りを見渡したんだ。
そしたら、街中から人の悲鳴とかが聞こえてきてさ、時々、つい先日耳にしたのと同じような乾いた銃声の音が聞こえたんだ。
嘘だと思った。
やっと安心できると思ったのに、たった一日、いや一日も経たずに こんな事ってあんまりだと思って、自分の目を疑った。
96 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:37:33.30 ID:c1y0p92o
でも、何か目を擦っても、耳を叩いても、目に見える光景や音は変わらなかったんだ。
そして よく見るとさ、街の所々から火とか煙が上がっていて、信じたくなかったけれど、これが夢の世界の出来事なんかじゃなく、現実に起きている事だと受け入れるしかなかった。
そう考えたらさ、さっきまで何ともなかったのに、急に足の力が入らなくなってしまって、地べたにペタンと座って立てなくなったんだ。
心のどこかで、もう逃げ切れないんだな、ここで死ぬしかないんだなと感じた。
希望を持たなければ ここまでショックを受けなかったと思う。
だけど、フォーチャに着いて、もう大丈夫かもしれないと希望を持ってしまったんだ。
それをもがれるのは、まだこの時は耐えられるものではなかった。
97 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:42:54.88 ID:c1y0p92o
それから少しの間、その状態のまま座っていたと思う。
気づいたら、周りに一緒にここまで行動してきた大人達が居て、その人たちも同じように唖然とした表情で街を見つめていた。
恐らく、最初から近くにいたのかもしれないけれど、街の状態でショックを受けていた俺は、気づかなかったのかもしれない。
そのまま俺はまたじっと、燃える街を見ていたんだ。
そしたら、ソニアが起きてきて、俺の隣に来たんだ。
103 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:20:52.48 ID:c1y0p92o
「祐希ー、街綺麗だねー。わー赤い星がいっぱいだよー。」
といった感じの事を笑いながら言うんだ。
一瞬、俺はソニアが何を言っているのか理解できなくてさ、表情を見たら、何か笑っているけど、ぼーっとしていてさ、目の焦点が合わないような変な表情をしていた気がする。
おかしいって思って、何言ってるのか何度も聞いたんだ。
だけど、ソニアは笑って綺麗だね、しか言わないんだ。
物じゃないけどさ、ソニアが壊れちゃったと思った。
105 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:25:40.95 ID:c1y0p92o
俺は どうしたら良いのかわからなくて、ソニアの事も相まって少し混乱しちゃってさ。
もう考えるのは無駄かもだとか、諦めようとか、マイナスの事を考えたりしたんだ。
だけど、このまま諦めたらソニアやメルヴィナ、サニャはどうなるって思って、このままだとカミーユの行動が無駄になるって考えたんだ。
サニャ達を守るって誓ったのに、このままだと その誓いも破ることになってしまうって。
だから、3人を連れて街から逃げようとしてさ。
行くあてもないし、ましてやこの国の人間ではない自分には頼れる人もいない。
それでも、ここに留まっているよりは、マシな選択に思えたんだ。
106 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:28:50.22 ID:c1y0p92o
逃げるなら、今のうちしかないと考えた俺は、ソニアの腕を引っ張って、モスクの中に戻った。
そして まだ寝ていたメルヴィナやサニャを起こして、「ここは危ないから街の外に逃げよう。」と言ったんだ。
メルヴィナもサニャも、起こしたばかりだから少し寝ぼけて反応が薄かったけれど、外の音が聞こえたみたいでさ、
何が起きているの気づいたらしく、「うん。」と答えてくれた。
108 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:33:22.11 ID:c1y0p92o
だけど、遅かったんだよ。
余っていた食べ物とかを集めていたら、もうモスクの直ぐ近くにスルプスカの警察が来てしまったらしく、大人達が騒ぎ出したんだ。
大人達がスルツキだ警察だって叫んで、早く逃げなきゃって思ったんだ。
ソニアは警察だから大丈夫だよって笑っていたけれど、その警察がボシュニャチやフルヴァツキの市民を連行したり暴行したり、殺したり、レイプしたりしてるんだよ。
もう この街に正義の味方、少なくともボシュニャチを助けてくれる味方はいなかったんだ。
110 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:40:31.80 ID:c1y0p92o
そんな感じでモタモタしている内に、モスクの周りのは更に騒がしくなっていた。
外に居た大人たちは、慌てながらモスクの中へ逃げ込んできたり、他の場所に逃げようとしたみたいだった。
だけど、他の場所へ逃げようとした人に向けて、警察は銃を発砲したらしく、乾いた銃声が周りから聞こえて、外の悲鳴とかは少しずつ聞こえなくなった。
その状況を見ている内に、もうモスクは警察に囲まれていたんだ。
111 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:43:05.58 ID:c1y0p92o
モスクから逃げようにも、幼い俺達が走って警察から逃げ切れるはずもない。
最悪、カミーユのように俺が お取りになって、サニャやメルヴィナ、ソニアの3人だけでも逃がそうと思った。
もう9人の中で、男は俺しか居ない。俺しか3 人を守れる人間はいないって思ったんだ。
112 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:48:25.58 ID:c1y0p92o
でも、現実は そんな英雄的な行動を おいそれと取れるものじゃなかった。
少し間をあけて、警察たちが銃を手にしながらモスクの中に入ってきたんだ。
多くの人は、隅っこに下がったり、布を被ったり、伏せたりした。
だけど、そんな事をしても意味なんてないんだよね。彼らは俺達の様子を見に来たわけじゃないのだからさ。
警察官達は、大人の男だけじゃなく、隅っこで震えている子どもや女性、お年寄りの顔を一人ひとり確認していった。
俺達の所にも近づいてきて、俺は さっきまであんなに お取りになろうと考えていたのに、怖くて足も動かないし、声も出ないんだ。
本当に動かないんだ。動かそうと思っても、心が折れてしまっていたんだ。
113 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:52:47.44 ID:c1y0p92o
警察の人の顔は、暗くてよく見えなかったけれど、その時は とても怖い顔をしていたように見えた。
一通り、性別や年齢とかを確認し終えると、警察官は大人の男性や女性を無理やり引っ張って連れて行ってしまったんだ。
当然、男の人は暴れたけれど、外に引きずり出された後に銃声が聞こえて、その人の声はもう聞こえなくなっていた。
変な話だけど、この時ぐらいからだと思う。
人が殺されても、あまり感情とかが湧き上がらなくなってきていたんだ。
ああ、またかといった感覚に似ているけれどさ。
114 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:55:20.66 ID:c1y0p92o
警察が去った後は、皆ぼーっとしながら、夜が明けるまで座っていたと思う。
赤ちゃんとかは泣いたりしていたけど、それをあやす母親は とても憔悴しきった顔をしていた。
もしかしたら夫があの時 連れて行かれたのかもしれない。
だけど、そんな事を聞けるような状況でもないし、正直に言えば、もうソニア達3人以外の事を考える余裕なんて俺にはなかった。
115 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:00:48.52 ID:YjM.1pYo
それから数日経ったけれど、時々街中で銃声や悲鳴が聞こえるぐらいで、初日ほど騒々しい状況になることはなかった。
スルプスカやスルツキに忠誠を誓う印として、生き残ったボシュニャチの人々は家の前や屋根に白い布とかを掲げて、自分もスルツキの一員だといったような合図をしていた。
後で調べて、これが警察とかから指示されたものだと知ったよ。
この白い布や旗っていうのはさ、今考えてみれば、自分がボシュニャチですと公言しているようなものなんだよね。
この家や建物にはボシュニャチがいるぞ!って。
かといって、白い布を掲げなければ、殺されたり拷問されたりするんだ。
掲げても暴行やいやがらせを受けて、時には見せしめとして殺害されレイプされ、掲げなくても殺害・レイプ・暴行をされる。
自分が標的にならないように祈ることしか出来なかった。
117 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:11:38.23 ID:YjM.1pYo
もう希望なんて正直消え失せていた。
この街から逃げたくても逃げ出せない。
街の所々にはボシュニャチの人々の収容所とかが作られたりしてさ、男の人は暴行、処刑されて、女性は数人がかりでレイプされていたらしい。
この時は、そんな事になっているとは知らなかったけどさ。
何もする気力が起きないし、する事が無い。何日もぼーっとしてたんだ。
そしたら、モスクに元々いた年配の人がさ、
「君はムスリムなのか?」って聞いてきたんだ。
だから、違うって答えた。
そしたら、「何で我々と一緒に行動するんだ」って言うんだ。
何でって そんなの俺が知りたかったよ。
だけど、友達と離れたくないから、友達を守らなきゃいけないからって答えたんだ。
そしたらさ、君は異教徒で異民族かもしれない。
だからこそ、生きて目にしたものを伝えなさいって言って、藁半紙みたいなノートを数冊くれて、鉛筆も何本かくれたんだ。
今こうして書いている内容の元は、この時にもらったノートに書いてある日記というか、起きたことを書いた文なんだ。
元々さ、カリノヴィクに居た頃から絵日記みたいのは つけていたんだけど、あの時は急だったから持って居なかったし、取りに行ける状況じゃなかった。
だから、このカリノヴィクから逃げる時期やフォーチャでの出来事、これから先の出来事は多少細かく書けるんだけど、
その前の出来事は、時々思い出みたいのが書いてあるぐらいだから、今じゃ どんどんその時の記憶が思い出せなくなってきているんだ。
それがとても怖い。
118 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:13:47.78 ID:YjM.1pYo
ちょっと休憩。
書き始めるの遅かったので、一応1時まで書いてみます。
細かく書くと、全然進まないから、これから先書くのはもっと短く要約するね。
ごめん。わからない所があれば聞いてください。
124 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:27:44.36 ID:YjM.1pYo
あー、この人のお陰で記録を書くことは出来たし、
この人との約束も、俺が前に書いた約束の一つではあるんだけれど、
こうして体験を書き込まなきゃいけないっていうのは、この人との約束ではないんだ。
後で ぱぱっと書くけど、この後、ボシュニャチの民兵と一緒に行動する事になるんだけれど、その人との約束なんだ。
そして、その後に死なずに今まで無様に生きてきたのは、ボシュニャチの民兵と離れた後に行動を共にしたスルツキの民兵のお陰なんだ。
とりあえず書いていくね。
前のよりも出来るだけ短く書きます。
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/22(土) 00:28:51.20 ID:OujeChY0
殺しや暴行レイプをしていたのは警察だけ?そのときスルツキの市民はどうしてるんだ?
129:祐希◆.0dKn/WD26:2010/05/22(土) 00:33:28.59 ID:YjM.1pYo
>>126
それには答えにくい。場所によって違うんだ。
警察だけのとこもあれば、民兵や市民も混じって暴行や霊王、殺人をしたりしていた場所もある。
それに反対する人だって当然いたけど、反対したら その人も民族浄化の対象になって、反対できなかったりとかもあったと思う。
逆もまた然り。
俺達が向かったモスクはさ、前にソニア達と一緒に来たモスクだったんだ。
あの時は、まさかこんな形で再び来ることになるとは思わなかったけれど、安心した気がする。
これからどうしたらいいのかとか、父さんは無事なのかとか、色々と聞きたいことや不安は山積していたのだけれど、緊張や疲労から体力的に限界がきていた俺やソニア達は、着いてからすぐに寝てしまったんだ。
93 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:26:59.85 ID:c1y0p92o
たったの数日、二日ほどの出来事だったのに、ゆっくりと安心して建物の中で寝られるのが、とても久しぶりに感じた。
94 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:30:45.82 ID:c1y0p92o
目が覚めたときには、もう辺りは暗くなっていて、夜になっていたんだ。
かなり長時間、寝入ってしまっていたんだ。
起きたら何だかトイレに行きたくなってさ、俺は大人の人を呼んで一緒に行ってもらおうと思ったんだ。
早朝まで暗い山や森の中を歩いて来たというのに、トイレに一人で行くのが怖かったんだ。変だよね。
でも、周りを見渡してもモスクの中には大人が誰も居なかった。
あれ?おかしいな。もしかして夢なのかな?とか、まだ寝起きで頭がぼーっとしていた俺は思っていたんだ。
だけど、少ししてさ、外が騒がしいのに気づいた。
95 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:33:50.38 ID:c1y0p92o
どうしたんだろうと不思議に思って、モスクの外に出て周りを見渡したんだ。
そしたら、街中から人の悲鳴とかが聞こえてきてさ、時々、つい先日耳にしたのと同じような乾いた銃声の音が聞こえたんだ。
嘘だと思った。
やっと安心できると思ったのに、たった一日、いや一日も経たずに こんな事ってあんまりだと思って、自分の目を疑った。
96 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:37:33.30 ID:c1y0p92o
でも、何か目を擦っても、耳を叩いても、目に見える光景や音は変わらなかったんだ。
そして よく見るとさ、街の所々から火とか煙が上がっていて、信じたくなかったけれど、これが夢の世界の出来事なんかじゃなく、現実に起きている事だと受け入れるしかなかった。
そう考えたらさ、さっきまで何ともなかったのに、急に足の力が入らなくなってしまって、地べたにペタンと座って立てなくなったんだ。
心のどこかで、もう逃げ切れないんだな、ここで死ぬしかないんだなと感じた。
希望を持たなければ ここまでショックを受けなかったと思う。
だけど、フォーチャに着いて、もう大丈夫かもしれないと希望を持ってしまったんだ。
それをもがれるのは、まだこの時は耐えられるものではなかった。
97 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:42:54.88 ID:c1y0p92o
それから少しの間、その状態のまま座っていたと思う。
気づいたら、周りに一緒にここまで行動してきた大人達が居て、その人たちも同じように唖然とした表情で街を見つめていた。
恐らく、最初から近くにいたのかもしれないけれど、街の状態でショックを受けていた俺は、気づかなかったのかもしれない。
そのまま俺はまたじっと、燃える街を見ていたんだ。
そしたら、ソニアが起きてきて、俺の隣に来たんだ。
103 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:20:52.48 ID:c1y0p92o
「祐希ー、街綺麗だねー。わー赤い星がいっぱいだよー。」
といった感じの事を笑いながら言うんだ。
一瞬、俺はソニアが何を言っているのか理解できなくてさ、表情を見たら、何か笑っているけど、ぼーっとしていてさ、目の焦点が合わないような変な表情をしていた気がする。
おかしいって思って、何言ってるのか何度も聞いたんだ。
だけど、ソニアは笑って綺麗だね、しか言わないんだ。
物じゃないけどさ、ソニアが壊れちゃったと思った。
105 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:25:40.95 ID:c1y0p92o
俺は どうしたら良いのかわからなくて、ソニアの事も相まって少し混乱しちゃってさ。
もう考えるのは無駄かもだとか、諦めようとか、マイナスの事を考えたりしたんだ。
だけど、このまま諦めたらソニアやメルヴィナ、サニャはどうなるって思って、このままだとカミーユの行動が無駄になるって考えたんだ。
サニャ達を守るって誓ったのに、このままだと その誓いも破ることになってしまうって。
だから、3人を連れて街から逃げようとしてさ。
行くあてもないし、ましてやこの国の人間ではない自分には頼れる人もいない。
それでも、ここに留まっているよりは、マシな選択に思えたんだ。
106 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:28:50.22 ID:c1y0p92o
逃げるなら、今のうちしかないと考えた俺は、ソニアの腕を引っ張って、モスクの中に戻った。
そして まだ寝ていたメルヴィナやサニャを起こして、「ここは危ないから街の外に逃げよう。」と言ったんだ。
メルヴィナもサニャも、起こしたばかりだから少し寝ぼけて反応が薄かったけれど、外の音が聞こえたみたいでさ、
何が起きているの気づいたらしく、「うん。」と答えてくれた。
108 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:33:22.11 ID:c1y0p92o
だけど、遅かったんだよ。
余っていた食べ物とかを集めていたら、もうモスクの直ぐ近くにスルプスカの警察が来てしまったらしく、大人達が騒ぎ出したんだ。
大人達がスルツキだ警察だって叫んで、早く逃げなきゃって思ったんだ。
ソニアは警察だから大丈夫だよって笑っていたけれど、その警察がボシュニャチやフルヴァツキの市民を連行したり暴行したり、殺したり、レイプしたりしてるんだよ。
もう この街に正義の味方、少なくともボシュニャチを助けてくれる味方はいなかったんだ。
110 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:40:31.80 ID:c1y0p92o
そんな感じでモタモタしている内に、モスクの周りのは更に騒がしくなっていた。
外に居た大人たちは、慌てながらモスクの中へ逃げ込んできたり、他の場所に逃げようとしたみたいだった。
だけど、他の場所へ逃げようとした人に向けて、警察は銃を発砲したらしく、乾いた銃声が周りから聞こえて、外の悲鳴とかは少しずつ聞こえなくなった。
その状況を見ている内に、もうモスクは警察に囲まれていたんだ。
111 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:43:05.58 ID:c1y0p92o
モスクから逃げようにも、幼い俺達が走って警察から逃げ切れるはずもない。
最悪、カミーユのように俺が お取りになって、サニャやメルヴィナ、ソニアの3人だけでも逃がそうと思った。
もう9人の中で、男は俺しか居ない。俺しか3 人を守れる人間はいないって思ったんだ。
112 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:48:25.58 ID:c1y0p92o
でも、現実は そんな英雄的な行動を おいそれと取れるものじゃなかった。
少し間をあけて、警察たちが銃を手にしながらモスクの中に入ってきたんだ。
多くの人は、隅っこに下がったり、布を被ったり、伏せたりした。
だけど、そんな事をしても意味なんてないんだよね。彼らは俺達の様子を見に来たわけじゃないのだからさ。
警察官達は、大人の男だけじゃなく、隅っこで震えている子どもや女性、お年寄りの顔を一人ひとり確認していった。
俺達の所にも近づいてきて、俺は さっきまであんなに お取りになろうと考えていたのに、怖くて足も動かないし、声も出ないんだ。
本当に動かないんだ。動かそうと思っても、心が折れてしまっていたんだ。
113 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:52:47.44 ID:c1y0p92o
警察の人の顔は、暗くてよく見えなかったけれど、その時は とても怖い顔をしていたように見えた。
一通り、性別や年齢とかを確認し終えると、警察官は大人の男性や女性を無理やり引っ張って連れて行ってしまったんだ。
当然、男の人は暴れたけれど、外に引きずり出された後に銃声が聞こえて、その人の声はもう聞こえなくなっていた。
変な話だけど、この時ぐらいからだと思う。
人が殺されても、あまり感情とかが湧き上がらなくなってきていたんだ。
ああ、またかといった感覚に似ているけれどさ。
114 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:55:20.66 ID:c1y0p92o
警察が去った後は、皆ぼーっとしながら、夜が明けるまで座っていたと思う。
赤ちゃんとかは泣いたりしていたけど、それをあやす母親は とても憔悴しきった顔をしていた。
もしかしたら夫があの時 連れて行かれたのかもしれない。
だけど、そんな事を聞けるような状況でもないし、正直に言えば、もうソニア達3人以外の事を考える余裕なんて俺にはなかった。
115 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:00:48.52 ID:YjM.1pYo
それから数日経ったけれど、時々街中で銃声や悲鳴が聞こえるぐらいで、初日ほど騒々しい状況になることはなかった。
スルプスカやスルツキに忠誠を誓う印として、生き残ったボシュニャチの人々は家の前や屋根に白い布とかを掲げて、自分もスルツキの一員だといったような合図をしていた。
後で調べて、これが警察とかから指示されたものだと知ったよ。
この白い布や旗っていうのはさ、今考えてみれば、自分がボシュニャチですと公言しているようなものなんだよね。
この家や建物にはボシュニャチがいるぞ!って。
かといって、白い布を掲げなければ、殺されたり拷問されたりするんだ。
掲げても暴行やいやがらせを受けて、時には見せしめとして殺害されレイプされ、掲げなくても殺害・レイプ・暴行をされる。
自分が標的にならないように祈ることしか出来なかった。
117 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:11:38.23 ID:YjM.1pYo
もう希望なんて正直消え失せていた。
この街から逃げたくても逃げ出せない。
街の所々にはボシュニャチの人々の収容所とかが作られたりしてさ、男の人は暴行、処刑されて、女性は数人がかりでレイプされていたらしい。
この時は、そんな事になっているとは知らなかったけどさ。
何もする気力が起きないし、する事が無い。何日もぼーっとしてたんだ。
そしたら、モスクに元々いた年配の人がさ、
「君はムスリムなのか?」って聞いてきたんだ。
だから、違うって答えた。
そしたら、「何で我々と一緒に行動するんだ」って言うんだ。
何でって そんなの俺が知りたかったよ。
だけど、友達と離れたくないから、友達を守らなきゃいけないからって答えたんだ。
そしたらさ、君は異教徒で異民族かもしれない。
だからこそ、生きて目にしたものを伝えなさいって言って、藁半紙みたいなノートを数冊くれて、鉛筆も何本かくれたんだ。
今こうして書いている内容の元は、この時にもらったノートに書いてある日記というか、起きたことを書いた文なんだ。
元々さ、カリノヴィクに居た頃から絵日記みたいのは つけていたんだけど、あの時は急だったから持って居なかったし、取りに行ける状況じゃなかった。
だから、このカリノヴィクから逃げる時期やフォーチャでの出来事、これから先の出来事は多少細かく書けるんだけど、
その前の出来事は、時々思い出みたいのが書いてあるぐらいだから、今じゃ どんどんその時の記憶が思い出せなくなってきているんだ。
それがとても怖い。
118 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:13:47.78 ID:YjM.1pYo
ちょっと休憩。
書き始めるの遅かったので、一応1時まで書いてみます。
細かく書くと、全然進まないから、これから先書くのはもっと短く要約するね。
ごめん。わからない所があれば聞いてください。
124 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:27:44.36 ID:YjM.1pYo
あー、この人のお陰で記録を書くことは出来たし、
この人との約束も、俺が前に書いた約束の一つではあるんだけれど、
こうして体験を書き込まなきゃいけないっていうのは、この人との約束ではないんだ。
後で ぱぱっと書くけど、この後、ボシュニャチの民兵と一緒に行動する事になるんだけれど、その人との約束なんだ。
そして、その後に死なずに今まで無様に生きてきたのは、ボシュニャチの民兵と離れた後に行動を共にしたスルツキの民兵のお陰なんだ。
とりあえず書いていくね。
前のよりも出来るだけ短く書きます。
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/22(土) 00:28:51.20 ID:OujeChY0
殺しや暴行レイプをしていたのは警察だけ?そのときスルツキの市民はどうしてるんだ?
129:祐希◆.0dKn/WD26:2010/05/22(土) 00:33:28.59 ID:YjM.1pYo
>>126
それには答えにくい。場所によって違うんだ。
警察だけのとこもあれば、民兵や市民も混じって暴行や霊王、殺人をしたりしていた場所もある。
それに反対する人だって当然いたけど、反対したら その人も民族浄化の対象になって、反対できなかったりとかもあったと思う。
逆もまた然り。
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