涙の色は赤がいいだろ?
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24 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:14:26.88 ID:msabUvV8.net
「そういえば、なんで この公園に来たんですか?」
「暇だったから散歩してたら、たまたま目に入って少し休憩しようと思ったんだ」
バイトのことは言えないので嘘をついた。
「そうですか、明日も来ますか?」
「ああ、最近ずっと暇だからな」
「じゃあ、明日もまたお話ししてくれますか?私も大体この公園に来てるんで」
「俺は別にいいけど…… でも俺でいいのか?」
「はい、あなたと話してると面白いですから」
「そうか、なら喜んで」
25 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:14:58.71 ID:msabUvV8.net
「それじゃあ、私はそろそろ帰ります。また明日会いましょう」
「ああ、また明日」
そんな約束をして、彼女は帰って行った。
26 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:15:31.49 ID:msabUvV8.net
俺は自分でも、なんで こんな約束をしたのかわからなかった。
さっきからわからないことだらけだな。俺はどうしようもなく自分のことがわかってないみたいだ。
ただ、多分彼女と話すのを楽しいと感じたんだろう。
それだけは なんとなくわかった。
27 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:16:20.61 ID:msabUvV8.net
そんなことを考えながら一時間経つと、電話が鳴った。
携帯を開けると、今日のバイトの終わりを知らせるメールが届いていた。
しかし、このバイトになんの意味があるんだろうか? どこかで俺のことを監視でもしているんだろうか?
まぁいい、何にしても金が手に入るんだ。余計なことは考えなくていいか。
そう結論付けて帰路に着いた。
28 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:16:49.85 ID:msabUvV8.net
家に着く頃には、もう日が落ち始めていた。
家に着き夕飯を食べるときも、公園で会った少女のことが頭を離れなかった。
名前も知らない少女。しかし彼女には何か惹かれるものがあった。
29 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:17:16.17 ID:msabUvV8.net
彼女は一体何者なんだろうか。公園の主と自分では言っていたが、どういう意味だろう。
もしかしたら彼女は、俺と同じバイトの依頼を受けてあそこに来ているのではないだろうか?
そうでもなければ、高校生くらいの子があんな寂れた公園には来ないのではないか?
だとしたらバイトの依頼主は何が目的なんだろう? 俺と彼女に話をさせて、何かの実験なんだろうか?
こんな風な推測が頭から溢れるくらい湧き出てきた。
30 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:18:07.95 ID:msabUvV8.net
明日彼女に聞けば何かわかるかもしれない。
とても気になるところだが、余計なことをしてあんな割のいいバイトを逃すのは嫌だったので、彼女何か聞くのはやめることに決めて、俺は眠ることにした。
31 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:18:44.89 ID:msabUvV8.net
次の日、バイトは二時からとの連絡があったので、コンビニによって食べ物を買ってから、二時少し前に着くように公園に向かった。
32 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:19:21.59 ID:msabUvV8.net
公園に着くと、彼女はもうベンチに座っていた。
「こんにちは、本当に来てくれたんですね」
「ああ。それにしても早いな」
「公園の主ですから」
彼女は得意げな顔でそう言った。
「そうか」
俺が少し笑いながらそう言うと、彼女は不思議そうな顔で、おかしいですか? と尋ねてきたので、「いや」と否定しておいた。
33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:19:57.84 ID:msabUvV8.net
「その荷物なんですか?」
「お菓子とかだな、ここに来る前に買ってきたんだ。食べるか?」
「はい、ありがとうございます」
俺は彼女の隣に座り、袋の中身を差し出した。
34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:20:58.35 ID:msabUvV8.net
「それで、今日は何のお話をしましょうか?」
「そうだな、何でもいいよ」
「あ、それ一番女性に言っちゃいけない言葉ですよ。この前テレビでやってました」
少し緩んだ顔で彼女はそう言った。
「ははっ、いや、ごめん。そうだな、昨日の話の続きをしようか」
「いいですね」
彼女の顔の緩みは まだ収まらないようだった。
35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:21:29.10 ID:msabUvV8.net
「そんなにおかしいか?」
俺が疑問に思って聞くと、
「いえ、なんか楽しいなと思いまして」
「楽しい?」
「はい、こうやってお菓子とかを食べながら、誰かとお話をする機会、あんまりなかったんで」
「そっか。俺なんかと話して楽しんでもらえてるなら嬉しいよ」
だけど、話す機会があんまりないって、この子はどんな生活を送ってきたのだろうか?
当たり前だけど、俺はこの子のことをよく知らない。何で公園に来ているのかもわからないし、どういう子で どんな人生を歩んできたかも知らないんだ。
俺はそれが少し不気味に思えてきた。
36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:21:53.09 ID:msabUvV8.net
「聞いてますか?」
俺が考え事をしているうちに、彼女の話は もう始まっていたようだ。俺の肩を揺さぶりながら そう聞いてきた。
「ああ、涙の話だよな」
「はい、やっぱり赤がいいと思うんですよ」
「SOSのサインとして目立つからだよな」
「はい」
37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:22:31.52 ID:msabUvV8.net
ここで一つ疑問が芽生えた。
「でも、それなら何で赤なんだ。目立つ色なら他にいくらでもあるだろ?」
俺は その疑問を彼女にぶつけた。
彼女と話していると、素直な子供のように疑問をすぐ口にしたくなる。多分、彼女が明確な答えをくれるからだろうな。
38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:23:48.48 ID:msabUvV8.net
「そうですね、逆転クオリアって知ってますか?」
「確か自分が見ている色と、他人が見ている色は違うかもしれないってやつだよな?」
クオリア、確かそんな話だった覚えがある。
「その通りですね。私が「赤」だと教えられてきた色、例えばイチゴ、そして私が「緑」だと教えられてきた色、スイカとかですかね、イチゴとスイカこれを私は「赤」と「緑」として教えられてきました。
そしてそれは他の誰かも同じで、イチゴを「赤」、スイカを「緑」だと認識しています。
でも、私が見ている「赤」を他の誰かは私が「緑」だと思っている色で認識しています。
しかし、その私が「緑」だと思っている色は、その人の中では「赤」と名付けられているため、表面上の色の名前としては一緒で、会話にも差し支えはありません。
でも、見えている世界の色は全然違う。そんな話ですね」
39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:24:22.43 ID:msabUvV8.net
「ああ、でもそれがどうしたんだ、今回の話と関係あるか?」
「つまりですね、意味があるのは「赤」という色ではなくて、「赤」という言葉だということです」
どういうことだ? それは同じ意味じゃないのか? 彼女の言いたいことが よくわからなかった。
40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:24:52.40 ID:msabUvV8.net
「悪い、もう少し具体的に言ってもらっていいか?」
「そうですね、じゃあ赤色と聞いて何を思い浮かべますか?」
「そうだな、イチゴとかトマトとかか?」
「ふふっ、あなたが食いしん坊さんだということはよくわかりました」
いたずらっぽく笑いながら彼女はそう言った。
「いや、別にそういうわけじゃ……」
食いしん坊のレッテルを貼られるのは嫌なので、とりあえず否定はしといた。
41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:25:25.25 ID:msabUvV8.net
「すみません、冗談ですよ。そのですね、じゃあ、赤色で危ないものといったら どうでしょうか?」
「危ないものか…… 赤信号とか、……そうか血か」
「正解です。そう、血ですね。血の色が「赤」と呼ばれていることが大切なんです」
「確かに血には危機感を覚える。だから赤がいいのか」
「そうです、別にあなたにとっての「赤」が私にとっての「緑」だとか、そんなことは どうでもいいんです。
血の色が「赤」と呼ばれている。
そして血が流れていると人は危ないと判断する。この二つが大切なんです。
何色に見えていようと、涙が血と同じ色なら、人はすぐにその人のSOSに気づいてくれるでしょ?」
42 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:25:53.81 ID:msabUvV8.net
「なるほどな、確かになかなか面白い話だな」
「どうですか? これで赤がいいと思ったでしょ?」
彼女の話は筋が通っていたし、納得もした。それでもやっぱり俺の心は変わらなかった。
「筋は通ってるんだ、納得もしてる、でもやっぱりなんか違う気がするんだよな」
上手く言葉をまとめることができなさそうだったので、そのまま口にした。
43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:26:48.96 ID:msabUvV8.net
「そうですか…… 残念ですね。でも負けませんよ。必ず納得させてみせます」
また、いたずらっぽく笑ったその顔に、俺は見惚れていた。
「どうしたんですか? 聞いてますか?」
見惚れて、止まったままの俺に彼女が問いかけてきた。
「ああ、大丈夫だ。そうだな、望むところだ。納得させてみてくれ」
「はい、もちろん」
そう笑いながら言った、その笑顔に俺はまた見惚れた。
「そうですね、じゃあこんな話があります……」
44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:27:18.98 ID:msabUvV8.net
それから毎日俺は公園に行き、彼女と話をした。
話の内容は涙の色の話だけではなく、お互いのことや、他愛もない話などいろいろ、本当にたくさん。
彼女と話す時間は俺にとってだんだん大切なものになっていき、普段人と喋る機会の少ない俺は、この時間だけが人と関わる時間になっていた。
45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:27:48.46 ID:msabUvV8.net
もちろん、その間もバイトは継続しており、この前、今までのバイト料が本当に振り込まれた。
46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:28:41.74 ID:msabUvV8.net
「これでどうですか? やっぱり赤がいいでしょ?」
七月が終わる頃になっても、涙の色の話に決着はつかず、俺たちは まだ話し合っていた。
「そうなんだけど、でもやっぱりなんか違うんだよな」
「またそれですか…… あ、もしかして私と話していたいから、わざと納得しないでいるんですか?」
彼女はニヤニヤ笑いながらそう聞いてきた。
最近では、彼女はこんな風に俺を からかうようにまでなっていた。
いつもなら すぐ否定するんだが、今日は少しだけ仕返しをしてみたくなったので、俺は真剣な顔で、「そうかもな」と言った。
「そういえば、なんで この公園に来たんですか?」
「暇だったから散歩してたら、たまたま目に入って少し休憩しようと思ったんだ」
バイトのことは言えないので嘘をついた。
「そうですか、明日も来ますか?」
「ああ、最近ずっと暇だからな」
「じゃあ、明日もまたお話ししてくれますか?私も大体この公園に来てるんで」
「俺は別にいいけど…… でも俺でいいのか?」
「はい、あなたと話してると面白いですから」
「そうか、なら喜んで」
25 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:14:58.71 ID:msabUvV8.net
「それじゃあ、私はそろそろ帰ります。また明日会いましょう」
「ああ、また明日」
そんな約束をして、彼女は帰って行った。
26 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:15:31.49 ID:msabUvV8.net
俺は自分でも、なんで こんな約束をしたのかわからなかった。
さっきからわからないことだらけだな。俺はどうしようもなく自分のことがわかってないみたいだ。
ただ、多分彼女と話すのを楽しいと感じたんだろう。
それだけは なんとなくわかった。
27 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:16:20.61 ID:msabUvV8.net
そんなことを考えながら一時間経つと、電話が鳴った。
携帯を開けると、今日のバイトの終わりを知らせるメールが届いていた。
しかし、このバイトになんの意味があるんだろうか? どこかで俺のことを監視でもしているんだろうか?
まぁいい、何にしても金が手に入るんだ。余計なことは考えなくていいか。
そう結論付けて帰路に着いた。
28 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:16:49.85 ID:msabUvV8.net
家に着く頃には、もう日が落ち始めていた。
家に着き夕飯を食べるときも、公園で会った少女のことが頭を離れなかった。
名前も知らない少女。しかし彼女には何か惹かれるものがあった。
29 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:17:16.17 ID:msabUvV8.net
彼女は一体何者なんだろうか。公園の主と自分では言っていたが、どういう意味だろう。
もしかしたら彼女は、俺と同じバイトの依頼を受けてあそこに来ているのではないだろうか?
そうでもなければ、高校生くらいの子があんな寂れた公園には来ないのではないか?
だとしたらバイトの依頼主は何が目的なんだろう? 俺と彼女に話をさせて、何かの実験なんだろうか?
こんな風な推測が頭から溢れるくらい湧き出てきた。
30 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:18:07.95 ID:msabUvV8.net
明日彼女に聞けば何かわかるかもしれない。
とても気になるところだが、余計なことをしてあんな割のいいバイトを逃すのは嫌だったので、彼女何か聞くのはやめることに決めて、俺は眠ることにした。
31 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:18:44.89 ID:msabUvV8.net
次の日、バイトは二時からとの連絡があったので、コンビニによって食べ物を買ってから、二時少し前に着くように公園に向かった。
32 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:19:21.59 ID:msabUvV8.net
公園に着くと、彼女はもうベンチに座っていた。
「こんにちは、本当に来てくれたんですね」
「ああ。それにしても早いな」
「公園の主ですから」
彼女は得意げな顔でそう言った。
「そうか」
俺が少し笑いながらそう言うと、彼女は不思議そうな顔で、おかしいですか? と尋ねてきたので、「いや」と否定しておいた。
33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:19:57.84 ID:msabUvV8.net
「その荷物なんですか?」
「お菓子とかだな、ここに来る前に買ってきたんだ。食べるか?」
「はい、ありがとうございます」
俺は彼女の隣に座り、袋の中身を差し出した。
34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:20:58.35 ID:msabUvV8.net
「それで、今日は何のお話をしましょうか?」
「そうだな、何でもいいよ」
「あ、それ一番女性に言っちゃいけない言葉ですよ。この前テレビでやってました」
少し緩んだ顔で彼女はそう言った。
「ははっ、いや、ごめん。そうだな、昨日の話の続きをしようか」
「いいですね」
彼女の顔の緩みは まだ収まらないようだった。
35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:21:29.10 ID:msabUvV8.net
「そんなにおかしいか?」
俺が疑問に思って聞くと、
「いえ、なんか楽しいなと思いまして」
「楽しい?」
「はい、こうやってお菓子とかを食べながら、誰かとお話をする機会、あんまりなかったんで」
「そっか。俺なんかと話して楽しんでもらえてるなら嬉しいよ」
だけど、話す機会があんまりないって、この子はどんな生活を送ってきたのだろうか?
当たり前だけど、俺はこの子のことをよく知らない。何で公園に来ているのかもわからないし、どういう子で どんな人生を歩んできたかも知らないんだ。
俺はそれが少し不気味に思えてきた。
36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:21:53.09 ID:msabUvV8.net
「聞いてますか?」
俺が考え事をしているうちに、彼女の話は もう始まっていたようだ。俺の肩を揺さぶりながら そう聞いてきた。
「ああ、涙の話だよな」
「はい、やっぱり赤がいいと思うんですよ」
「SOSのサインとして目立つからだよな」
「はい」
37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:22:31.52 ID:msabUvV8.net
ここで一つ疑問が芽生えた。
「でも、それなら何で赤なんだ。目立つ色なら他にいくらでもあるだろ?」
俺は その疑問を彼女にぶつけた。
彼女と話していると、素直な子供のように疑問をすぐ口にしたくなる。多分、彼女が明確な答えをくれるからだろうな。
38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:23:48.48 ID:msabUvV8.net
「そうですね、逆転クオリアって知ってますか?」
「確か自分が見ている色と、他人が見ている色は違うかもしれないってやつだよな?」
クオリア、確かそんな話だった覚えがある。
「その通りですね。私が「赤」だと教えられてきた色、例えばイチゴ、そして私が「緑」だと教えられてきた色、スイカとかですかね、イチゴとスイカこれを私は「赤」と「緑」として教えられてきました。
そしてそれは他の誰かも同じで、イチゴを「赤」、スイカを「緑」だと認識しています。
でも、私が見ている「赤」を他の誰かは私が「緑」だと思っている色で認識しています。
しかし、その私が「緑」だと思っている色は、その人の中では「赤」と名付けられているため、表面上の色の名前としては一緒で、会話にも差し支えはありません。
でも、見えている世界の色は全然違う。そんな話ですね」
39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:24:22.43 ID:msabUvV8.net
「ああ、でもそれがどうしたんだ、今回の話と関係あるか?」
「つまりですね、意味があるのは「赤」という色ではなくて、「赤」という言葉だということです」
どういうことだ? それは同じ意味じゃないのか? 彼女の言いたいことが よくわからなかった。
40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:24:52.40 ID:msabUvV8.net
「悪い、もう少し具体的に言ってもらっていいか?」
「そうですね、じゃあ赤色と聞いて何を思い浮かべますか?」
「そうだな、イチゴとかトマトとかか?」
「ふふっ、あなたが食いしん坊さんだということはよくわかりました」
いたずらっぽく笑いながら彼女はそう言った。
「いや、別にそういうわけじゃ……」
食いしん坊のレッテルを貼られるのは嫌なので、とりあえず否定はしといた。
41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:25:25.25 ID:msabUvV8.net
「すみません、冗談ですよ。そのですね、じゃあ、赤色で危ないものといったら どうでしょうか?」
「危ないものか…… 赤信号とか、……そうか血か」
「正解です。そう、血ですね。血の色が「赤」と呼ばれていることが大切なんです」
「確かに血には危機感を覚える。だから赤がいいのか」
「そうです、別にあなたにとっての「赤」が私にとっての「緑」だとか、そんなことは どうでもいいんです。
血の色が「赤」と呼ばれている。
そして血が流れていると人は危ないと判断する。この二つが大切なんです。
何色に見えていようと、涙が血と同じ色なら、人はすぐにその人のSOSに気づいてくれるでしょ?」
42 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:25:53.81 ID:msabUvV8.net
「なるほどな、確かになかなか面白い話だな」
「どうですか? これで赤がいいと思ったでしょ?」
彼女の話は筋が通っていたし、納得もした。それでもやっぱり俺の心は変わらなかった。
「筋は通ってるんだ、納得もしてる、でもやっぱりなんか違う気がするんだよな」
上手く言葉をまとめることができなさそうだったので、そのまま口にした。
43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:26:48.96 ID:msabUvV8.net
「そうですか…… 残念ですね。でも負けませんよ。必ず納得させてみせます」
また、いたずらっぽく笑ったその顔に、俺は見惚れていた。
「どうしたんですか? 聞いてますか?」
見惚れて、止まったままの俺に彼女が問いかけてきた。
「ああ、大丈夫だ。そうだな、望むところだ。納得させてみてくれ」
「はい、もちろん」
そう笑いながら言った、その笑顔に俺はまた見惚れた。
「そうですね、じゃあこんな話があります……」
44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:27:18.98 ID:msabUvV8.net
それから毎日俺は公園に行き、彼女と話をした。
話の内容は涙の色の話だけではなく、お互いのことや、他愛もない話などいろいろ、本当にたくさん。
彼女と話す時間は俺にとってだんだん大切なものになっていき、普段人と喋る機会の少ない俺は、この時間だけが人と関わる時間になっていた。
45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:27:48.46 ID:msabUvV8.net
もちろん、その間もバイトは継続しており、この前、今までのバイト料が本当に振り込まれた。
46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:28:41.74 ID:msabUvV8.net
「これでどうですか? やっぱり赤がいいでしょ?」
七月が終わる頃になっても、涙の色の話に決着はつかず、俺たちは まだ話し合っていた。
「そうなんだけど、でもやっぱりなんか違うんだよな」
「またそれですか…… あ、もしかして私と話していたいから、わざと納得しないでいるんですか?」
彼女はニヤニヤ笑いながらそう聞いてきた。
最近では、彼女はこんな風に俺を からかうようにまでなっていた。
いつもなら すぐ否定するんだが、今日は少しだけ仕返しをしてみたくなったので、俺は真剣な顔で、「そうかもな」と言った。
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