私が初恋をつらぬいた話
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170 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:07:27.12 ID:+beSXCVE0
そのまま暫らく、静かな時間が流れる。
先生は相変わらず固まっていて、私はじっと前だけを向いていた。
このままこうしていたら、私はきっとまた泣いてしまう…
そう思って、私はバッと立ち上がった。
固まっている先生に振り返る。
「もう行かないと。今日、卒業式が終わったらお店の人に電話する筈だったんですよ。…無視して今サボっちゃってますけど。」
私はニコニコしながらそう言った。
先生はニコリともする事無く、少しだけ下に俯いた。
「…最後に会えて嬉しかったです。…実はずっと会いたかったから。」
そういい鞄に手をかける。
「それじゃ、先生、お元気で…」
先生の顔を見ないようにしながら、私は先生に背を向ける。
ここから離れるのを拒否する気持ちを懸命に振り払いながら、私は歩き出そうとした。
その時、急にぐっと腕を引っ張られる。
驚いて振り返ると、先生は下を向いたまま、私の腕をしっかりと掴んでいた。
172 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:09:30.28 ID:+beSXCVE0
また暫らくの沈黙。
暗い中、下を向いている先生の表情は見えない。
「あの…」
言いかけた私を遮るように、先生は静かな声で呟いた。
「……理由はそれだけ?」
「え?」
「…僕から離れる理由はそれだけ?」
何を言われているのかが解らず、混乱して体が固まる。
「…僕の事が嫌だからとかじゃなくて、迷惑をかけたくないからとか……理由はそれだけ?」
下を向いたままの、先生の冷たい声が怖い。
私は小さく「はい」とだけ返事をした。
「…………………あれから…色々考えたんですよ。」
先生が溜め息まじりにそう言った。あれから?何の事?さらに混乱する。
「何を…ですか?」
「貴女と僕の事。」
何を話しているのかがようやく解って、私の胸はドキッとした。
173 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:12:16.78 ID:+beSXCVE0
「…貴女に好きだと言われて、正直あの時は凄く困りました。でも、何となく気がついてはいたんです…昔から。」
私は黙って頷いた。
「僕は教師で、貴女は教え子だ。どうにかなったらいけない。そう思いながらも、貴女に頼られると心配で ついつい手を出してしまう。」
「……。」
「気がかりで、可愛くて…放っておくと すぐボロボロになって戻ってくる。」
先生はすっと、腕の力を緩めた。
「僕はずっと昔から、貴女の事が好きだったんですよ。気がつかない振りをして、妹のようだって言ったりして、ずっと誤魔化してたんです。」
先生は私の腕をそっと放すと、顔を上げてそのまま前を眺めた。
「でも僕は貴女よりずっと年上だ。自分の気持ちに気がついても、何もすることは出来ない。貴女がだんだん離れて行って、あぁこれでいいんだと…ずーっと言い聞かせました。本心はすっごく嫌でしたけどね。」
先生が遠くを見つめながら小さくハハッと笑う。
胸が苦しくなった。
「今日だって最後って言われて…僕も諦めるつもりで来たんですよ。
貴女には これから未来がある。ずっと僕の傍に居させてしまったら、僕は貴女の未来を摘み取ってしまうかもしれない。
貴女が僕から離れたいって言うなら それが一番なんだと…そう…覚悟してきたのに…」
先生はそういうと、また黙って下を向いた。
塞き止めて仕舞い込んでいた思いが、ガンガンと溢れ出てくる。
「私だって…」
息が詰まる。
「私だって…覚悟してきたのに…どうしてそんな事言うんですか……一生懸命我慢してきたのに…どうして…」
泣かないと決めた思いは、ぽっきりと根元から折れた。私は立ったまま、涙を堪えきれなくなって下を向いた。
先生はスッと立ち上がると「あーあ…」と溜め息をつきながら、私を抱きしめた。
174 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:15:06.56 ID:+beSXCVE0
気持ちが抑えきれなくなって、先生にしがみつく。
先生はそれに応えるように、更に強く私を抱きしめた。
「……僕が好き?」
声が出せずに、大きく頷く。
「…本当はこのままずっと一緒に居たい?」
大きく何度も何度も頷く。
「じゃあ もうずっと一緒に居ればいい……僕も渚と一緒に居たい。」
やっと言って貰えたその言葉に、私は嬉しくて切なくて、声をあげてわんわん泣いた。
先生と出会ってから、もう7年が経っていた。
私は そのまま暫らく泣き続け、先生は子供をあやすように私をずっと抱きしてめていた。
先生の腕の中が優しくて暖かくて、涙は次第に止まっていく。
ようやく私が泣き止んだ時、先生は「帰りましょうか…」と優しく言った。
「…帰るって…どこにですか?」
呆けた頭で聞き返す。
「帰る場所は もうひとつしかないでしょう?」
「…ひとつ?」
「アハハ、まぁいいや。…さ、帰りましょ。」
先生は体をゆっくり離すと、私の手を握った。
そして地面に放り出されていた私の鞄を拾うと、そのまま手を引き歩き始めた。
176 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:16:07.16 ID:L9GcuA1Wi
涙でたよどうしてくれんだよ
学食でストロベリーよグルと食べながら泣いてるよどうすんのこれ
こっからだな
179 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:17:34.68 ID:+beSXCVE0
車に戻ると、先生は珍しくメガネを掛けた。
普段はメガネが汚れた時すぐに拭けないのが嫌だからと、先生はコンタクトをしている。
コンタクトにメガネ…?
私が不思議そうに先生を見ていると、それに気がついた先生は恥ずかしそうに頭をかいた。
「…さっきの公園で、コンタクト落としちゃったみたいで…」
「え?じゃあすぐに探しに行かないと…どの辺に落としたんですか?」
先生はダダを捏ねてる子供みたいに、ブンブンと首を振った。
「嫌です。それにあんな小さい物、見つけられる訳ないですよ。」
「でも…」
「……怖いから嫌です。あそこ、何か出るって有名じゃないですか…」
ちょっとだけ泣きそうな顔をしている先生と目が合う。
私は思わず笑ってしまった。
そんな私の様子を見て なんだか少しホッとした顔をすると、先生は車を走らせた。
182 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:19:42.05 ID:+beSXCVE0
予想通り…というか、当たり前のように先生の家に着く。
去年の夏出て行った時と なんら変わらない部屋の様子に、私は何故だか少しホッとした。
先生はバタバタと寝室に入っていくと、綺麗に畳まれた服を持って すぐに出てきた。
「まだやることがあるので、学校に戻ります。お風呂でも入ってサッパリしときなさい。」
ハイと頷くと、先生はニコっと笑って私に服を手渡した。
「じゃあ行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
先生は慌しく家から出て行った。
手渡された服を見てみる。
初めてココに来た時に渡された、少し大きなTシャツとハーフパンツ。
私は なんだか少し恥ずかしくなって、一人でケラケラと笑ってしまった。
185 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:21:46.60 ID:+beSXCVE0
その日から私は、また先生と一緒に暮らし始めた。
相変わらず先生はソファで、私はベッドで、前と変わりなく別々に眠る。
以前と同じように先生の家で過ごしていると、荒んでいた心が平常を取り戻してくる。
実家の事を考えると 憂鬱になったりもしたが、私は もうあそこには戻らないんだと自分に言い聞かせた。
先生は小学校の年度末で、忙しそうに過ごしていた。
卒業生の副担任になっていたようで、帰宅も夏休みの時より大幅に遅くなっていた。
そんなあんまり顔を合わさない生活をして5日後。
卒業式も無事に終わり、小学校は今日から春休み。
久々に少し早く帰ってきた先生と夕食を食べ終えて後片付けをしていると、先生はちょっと真剣な声で私を呼んだ。
返事をして、先生の前に座る。
「明日、渚さんのお母さんに会いに行きますよ。」
「え!?」
186 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:23:42.26 ID:+beSXCVE0
私は驚いて聞き返した。
「…母に…ですか?」
「はい。やっぱりこのまま、何も言わずにいるのはちょっと気が引けますし。」
体の奥底が、嫌悪感でゾワゾワする。
「でも…あの人には何も言わなくて、このままでもいいと思うんですけど…」
「やっぱり そういう訳にも行きませんよ。きっと渚さんの事を探してるでしょうし…」
私は首を振ると、それだけは絶対に無いと先生に言った。
「探してる訳がありません。多分家で飲んだくれてます。」
「まぁそうでしょうけど…ただ、違う意味では探してるかもしれませんし…」
違う意味で探している…私はその言葉にハッとした。
あそこまで執念深く自分を傍に置こうとした母だ。
確かに心配とは別の意味で、私を探しているかもしれない。
「……わかりました。」
私は暫らく黙りこんだ後、小さく頷いた。
「大丈夫、何があっても貴女には指一本触れさせませんよ。だから安心して。」
先生は私の手を両手で包むと、ニコッと笑ってそう言った。
187 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:26:19.28 ID:+beSXCVE0
翌朝。
前日に不安と緊張で なかなか寝付けなかったせいで、私は いつもより遅く目を覚ました。
時間は10時過ぎ。
慌てて飛び起きリビングを見ると、先生の姿はどこにもなかった。
あれ?っと不思議に思いつつ、顔を洗って出かける準備をしていると、先生は なにやら大きな紙袋を持って帰ってきた。
「あぁ、おはようございます。しっかり寝れたみたいですね。」
ちょっと恥ずかしくて「すみません…」と返事をすると、私は紙袋に目をやった。
視線に気がついて、先生がガサゴソと紙袋を漁る。
「渚さん制服しか持って無かったでしょう?とりあえず買ってきてみました。」
そういいながら、何枚かの女物の洋服を出す。
パーカーに何枚かのシャツにスカートとジーパン…
いずれも黒系統の服でお世辞にも可愛いとは言えなかったが、その選択が先生らしくって私はフフっと笑った。
「サイズがよく解らなかったから店員さんに身長とか大体で説明したんですけど…大丈夫かな?」
先生は恥ずかしそうに笑う。
私はその中からジーパンとパーカーを手に取って広げると、先生に向かって頷いた。
「あぁよかった。流石にその恰好で行かせる訳にはいきませんから。」
「じゃあ私、着替えてきます。」
立ち上がった時、まだ紙袋の中に もうひとつだけ小さな紙袋が入っているのに気がついて「それは?」と先生に質問する。
「あぁこれ?手土産です。会いに行くのに手ぶらって訳にもいかないでしょう?」
私は「そんなに気を使わなくても…」と言って苦笑いをした。
そのまま暫らく、静かな時間が流れる。
先生は相変わらず固まっていて、私はじっと前だけを向いていた。
このままこうしていたら、私はきっとまた泣いてしまう…
そう思って、私はバッと立ち上がった。
固まっている先生に振り返る。
「もう行かないと。今日、卒業式が終わったらお店の人に電話する筈だったんですよ。…無視して今サボっちゃってますけど。」
私はニコニコしながらそう言った。
先生はニコリともする事無く、少しだけ下に俯いた。
「…最後に会えて嬉しかったです。…実はずっと会いたかったから。」
そういい鞄に手をかける。
「それじゃ、先生、お元気で…」
先生の顔を見ないようにしながら、私は先生に背を向ける。
ここから離れるのを拒否する気持ちを懸命に振り払いながら、私は歩き出そうとした。
その時、急にぐっと腕を引っ張られる。
驚いて振り返ると、先生は下を向いたまま、私の腕をしっかりと掴んでいた。
172 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:09:30.28 ID:+beSXCVE0
また暫らくの沈黙。
暗い中、下を向いている先生の表情は見えない。
「あの…」
言いかけた私を遮るように、先生は静かな声で呟いた。
「……理由はそれだけ?」
「え?」
「…僕から離れる理由はそれだけ?」
何を言われているのかが解らず、混乱して体が固まる。
「…僕の事が嫌だからとかじゃなくて、迷惑をかけたくないからとか……理由はそれだけ?」
下を向いたままの、先生の冷たい声が怖い。
私は小さく「はい」とだけ返事をした。
「…………………あれから…色々考えたんですよ。」
先生が溜め息まじりにそう言った。あれから?何の事?さらに混乱する。
「何を…ですか?」
「貴女と僕の事。」
何を話しているのかがようやく解って、私の胸はドキッとした。
173 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:12:16.78 ID:+beSXCVE0
「…貴女に好きだと言われて、正直あの時は凄く困りました。でも、何となく気がついてはいたんです…昔から。」
私は黙って頷いた。
「僕は教師で、貴女は教え子だ。どうにかなったらいけない。そう思いながらも、貴女に頼られると心配で ついつい手を出してしまう。」
「……。」
「気がかりで、可愛くて…放っておくと すぐボロボロになって戻ってくる。」
先生はすっと、腕の力を緩めた。
「僕はずっと昔から、貴女の事が好きだったんですよ。気がつかない振りをして、妹のようだって言ったりして、ずっと誤魔化してたんです。」
先生は私の腕をそっと放すと、顔を上げてそのまま前を眺めた。
「でも僕は貴女よりずっと年上だ。自分の気持ちに気がついても、何もすることは出来ない。貴女がだんだん離れて行って、あぁこれでいいんだと…ずーっと言い聞かせました。本心はすっごく嫌でしたけどね。」
先生が遠くを見つめながら小さくハハッと笑う。
胸が苦しくなった。
「今日だって最後って言われて…僕も諦めるつもりで来たんですよ。
貴女には これから未来がある。ずっと僕の傍に居させてしまったら、僕は貴女の未来を摘み取ってしまうかもしれない。
貴女が僕から離れたいって言うなら それが一番なんだと…そう…覚悟してきたのに…」
先生はそういうと、また黙って下を向いた。
塞き止めて仕舞い込んでいた思いが、ガンガンと溢れ出てくる。
「私だって…」
息が詰まる。
「私だって…覚悟してきたのに…どうしてそんな事言うんですか……一生懸命我慢してきたのに…どうして…」
泣かないと決めた思いは、ぽっきりと根元から折れた。私は立ったまま、涙を堪えきれなくなって下を向いた。
先生はスッと立ち上がると「あーあ…」と溜め息をつきながら、私を抱きしめた。
174 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:15:06.56 ID:+beSXCVE0
気持ちが抑えきれなくなって、先生にしがみつく。
先生はそれに応えるように、更に強く私を抱きしめた。
「……僕が好き?」
声が出せずに、大きく頷く。
「…本当はこのままずっと一緒に居たい?」
大きく何度も何度も頷く。
「じゃあ もうずっと一緒に居ればいい……僕も渚と一緒に居たい。」
やっと言って貰えたその言葉に、私は嬉しくて切なくて、声をあげてわんわん泣いた。
先生と出会ってから、もう7年が経っていた。
私は そのまま暫らく泣き続け、先生は子供をあやすように私をずっと抱きしてめていた。
先生の腕の中が優しくて暖かくて、涙は次第に止まっていく。
ようやく私が泣き止んだ時、先生は「帰りましょうか…」と優しく言った。
「…帰るって…どこにですか?」
呆けた頭で聞き返す。
「帰る場所は もうひとつしかないでしょう?」
「…ひとつ?」
「アハハ、まぁいいや。…さ、帰りましょ。」
先生は体をゆっくり離すと、私の手を握った。
そして地面に放り出されていた私の鞄を拾うと、そのまま手を引き歩き始めた。
176 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:16:07.16 ID:L9GcuA1Wi
涙でたよどうしてくれんだよ
学食でストロベリーよグルと食べながら泣いてるよどうすんのこれ
こっからだな
179 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:17:34.68 ID:+beSXCVE0
車に戻ると、先生は珍しくメガネを掛けた。
普段はメガネが汚れた時すぐに拭けないのが嫌だからと、先生はコンタクトをしている。
コンタクトにメガネ…?
私が不思議そうに先生を見ていると、それに気がついた先生は恥ずかしそうに頭をかいた。
「…さっきの公園で、コンタクト落としちゃったみたいで…」
「え?じゃあすぐに探しに行かないと…どの辺に落としたんですか?」
先生はダダを捏ねてる子供みたいに、ブンブンと首を振った。
「嫌です。それにあんな小さい物、見つけられる訳ないですよ。」
「でも…」
「……怖いから嫌です。あそこ、何か出るって有名じゃないですか…」
ちょっとだけ泣きそうな顔をしている先生と目が合う。
私は思わず笑ってしまった。
そんな私の様子を見て なんだか少しホッとした顔をすると、先生は車を走らせた。
182 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:19:42.05 ID:+beSXCVE0
予想通り…というか、当たり前のように先生の家に着く。
去年の夏出て行った時と なんら変わらない部屋の様子に、私は何故だか少しホッとした。
先生はバタバタと寝室に入っていくと、綺麗に畳まれた服を持って すぐに出てきた。
「まだやることがあるので、学校に戻ります。お風呂でも入ってサッパリしときなさい。」
ハイと頷くと、先生はニコっと笑って私に服を手渡した。
「じゃあ行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
先生は慌しく家から出て行った。
手渡された服を見てみる。
初めてココに来た時に渡された、少し大きなTシャツとハーフパンツ。
私は なんだか少し恥ずかしくなって、一人でケラケラと笑ってしまった。
185 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:21:46.60 ID:+beSXCVE0
その日から私は、また先生と一緒に暮らし始めた。
相変わらず先生はソファで、私はベッドで、前と変わりなく別々に眠る。
以前と同じように先生の家で過ごしていると、荒んでいた心が平常を取り戻してくる。
実家の事を考えると 憂鬱になったりもしたが、私は もうあそこには戻らないんだと自分に言い聞かせた。
先生は小学校の年度末で、忙しそうに過ごしていた。
卒業生の副担任になっていたようで、帰宅も夏休みの時より大幅に遅くなっていた。
そんなあんまり顔を合わさない生活をして5日後。
卒業式も無事に終わり、小学校は今日から春休み。
久々に少し早く帰ってきた先生と夕食を食べ終えて後片付けをしていると、先生はちょっと真剣な声で私を呼んだ。
返事をして、先生の前に座る。
「明日、渚さんのお母さんに会いに行きますよ。」
「え!?」
186 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:23:42.26 ID:+beSXCVE0
私は驚いて聞き返した。
「…母に…ですか?」
「はい。やっぱりこのまま、何も言わずにいるのはちょっと気が引けますし。」
体の奥底が、嫌悪感でゾワゾワする。
「でも…あの人には何も言わなくて、このままでもいいと思うんですけど…」
「やっぱり そういう訳にも行きませんよ。きっと渚さんの事を探してるでしょうし…」
私は首を振ると、それだけは絶対に無いと先生に言った。
「探してる訳がありません。多分家で飲んだくれてます。」
「まぁそうでしょうけど…ただ、違う意味では探してるかもしれませんし…」
違う意味で探している…私はその言葉にハッとした。
あそこまで執念深く自分を傍に置こうとした母だ。
確かに心配とは別の意味で、私を探しているかもしれない。
「……わかりました。」
私は暫らく黙りこんだ後、小さく頷いた。
「大丈夫、何があっても貴女には指一本触れさせませんよ。だから安心して。」
先生は私の手を両手で包むと、ニコッと笑ってそう言った。
187 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:26:19.28 ID:+beSXCVE0
翌朝。
前日に不安と緊張で なかなか寝付けなかったせいで、私は いつもより遅く目を覚ました。
時間は10時過ぎ。
慌てて飛び起きリビングを見ると、先生の姿はどこにもなかった。
あれ?っと不思議に思いつつ、顔を洗って出かける準備をしていると、先生は なにやら大きな紙袋を持って帰ってきた。
「あぁ、おはようございます。しっかり寝れたみたいですね。」
ちょっと恥ずかしくて「すみません…」と返事をすると、私は紙袋に目をやった。
視線に気がついて、先生がガサゴソと紙袋を漁る。
「渚さん制服しか持って無かったでしょう?とりあえず買ってきてみました。」
そういいながら、何枚かの女物の洋服を出す。
パーカーに何枚かのシャツにスカートとジーパン…
いずれも黒系統の服でお世辞にも可愛いとは言えなかったが、その選択が先生らしくって私はフフっと笑った。
「サイズがよく解らなかったから店員さんに身長とか大体で説明したんですけど…大丈夫かな?」
先生は恥ずかしそうに笑う。
私はその中からジーパンとパーカーを手に取って広げると、先生に向かって頷いた。
「あぁよかった。流石にその恰好で行かせる訳にはいきませんから。」
「じゃあ私、着替えてきます。」
立ち上がった時、まだ紙袋の中に もうひとつだけ小さな紙袋が入っているのに気がついて「それは?」と先生に質問する。
「あぁこれ?手土産です。会いに行くのに手ぶらって訳にもいかないでしょう?」
私は「そんなに気を使わなくても…」と言って苦笑いをした。
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