叶わない夢を見続ける少年の物語
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25 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:02:14.170 ID:bBdKFIo+0.net
話は少しだけ遡る。
俺は人生計画の通り、本当に高校で留学しちまったんだよ。
あまり裕福な家計ではないのに、金を出してくれた両親にはホントに感謝してる。
俺は最初、留学行くことにあんまり重み?みたいなのを感じてなかったんだよ。
ちょっと一年間アメリカ行ってくるわw みたいな。
でも、留学はそんな、一言で完結させることなんかできないくらい特別な思い出なんだ。
26 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:03:24.859 ID:bBdKFIo+0.net
留学生はホストファミリーを選べないって知ってたか?
基本的に、どこかしらのホストファミリーが自分を選んでくれるのを待つんだ。
そのために自分の戸籍やら紹介文やらを書いて提出するんだが、その必須項目の一つに、「なんで留学したいとおもったのか」っていうのがあるわけだ。
そこで俺はストレートにこう書いた。
「パイロットになるにあたって必要な英語力を上げるために留学を決意しました」ってね。
たちまちそれを見た、一つのファミリーによって俺の留学先は決定された。
27 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:04:45.148 ID:bBdKFIo+0.net
そこはファミリーと言っていいのか分からないくらい小さな家族だった。
母親と同年代の弟と俺。
俺はてっきりちっさな子供がたくさんいる家庭を想像してたから、最初にその家族構成を知った時は多少動揺したな。
でも問題はそこじゃなかったんだ。
弟は障害を持っていたんだ。
彼は盲目だった。
名を仮にジョンとする。
そういや、俺はそういう障害者と一緒に何かしたりする経験はなかったんだよな。
28 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:05:31.521 ID:bBdKFIo+0.net
ちなみにジョンはその母親と血がつながっているわけではない。
養子っていうのかな。
両親を失い、目も見えずに、行き場をなくしたジョンに手を差し伸べたのがその母親だった。
すごいよな、その母親。
名を仮にマリンさんとしようか。
29 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:06:40.486 ID:bBdKFIo+0.net
渡米して最初の頃の俺は、首を左に右に振りっぱなしだったな。
本当に、異世界に来たみたいだったよ。
何もかもが違ってて、新しいことばかり。
俺は好奇心が人一倍に強かったし、これには興奮せざるおえなかった。
30 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:07:34.056 ID:bBdKFIo+0.net
一方で、辛いこともやっぱりあるんだ。
英語が聞き取れない、聞き取ってもらえない、自分と相手の価値観が違いすぎる。
一回、人と話すことが嫌になったくらいだ。
それを乗り越えるのが留学の一つの目標なんだけどな。
最初はみんなそんなもんだ。
31 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:08:24.656 ID:bBdKFIo+0.net
俺の英語力も安定してきて、まともにコミュニケーションができるようになってきたころ、俺はジョンに話しかけられたんだ。
ジョンは俺に自分の将来の夢を語ってきた。
簡単に言うと、ジョンの夢は俺と同じくパイロットになることだった。
なるほど、俺をホストしてくれたのはそのおかげか、なんて思いつつ、彼のパイロットへの愛を聞くことになるんだ。
俺はジョンの目を見ながら、黙って話を聞いていた。
32 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:09:36.220 ID:bBdKFIo+0.net
空を飛ぶことへの憧れ、乗り物への好奇心。
ジョンは はじめて飛行機に乗った時、パイロットになりたいと思ったらしい。
俺も最初はそうだった。
そんで、一度そう思ったら色々興味がわいてくるんだよな。
どうしたら飛行機を操縦できるのか、とか。
パイロットってどんな人なのか、とか。
それで、調べていくうちにすっかりその虜になってしまう。
俺とジョンはとことん似たもの同士だった。
33 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:11:02.640 ID:bBdKFIo+0.net
みんなは高校生のころ、俺みたいに こんなはっきりした将来の夢をもっていたか?
もちろん、いることにはいるんだろうけど、そういう人は結構少なかったんじゃないかな。
実際、俺の周りにそういう人は少なかったし。
だから、こうやって夢を語れるっていうのは俺にとってすごい嬉しいことのはずだったんだ。
本来ならば、な。
34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:11:56.742 ID:bBdKFIo+0.net
でも俺はその時、嬉しいとも楽しいとも思わなかったんだ。
皆はさ、目が見えないパイロットが操縦する飛行機に乗りたいと思うか?
実際に、パイロットになるには厳しい身体検査がある。
その検査は、一見なんの以上もない健康な人でも半数しか受からないほど厳しい検査だ。
両眼視力はもちろん、片目視力、空間把握能力、色覚、平衡感覚…
パイロットになるにあたって、目が見えないのは致命的だったんだ。
最初こそ俺と面を向かって話していたジョンだが、いつの間にかジョンは壁に向かって喋りかけていた。
35 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:12:50.720 ID:bBdKFIo+0.net
俺は考えてみた。
もし、今この時点で俺がパイロットになれないということが確定したら、俺はどうするか。
死ぬ。以上だ。
それだけ、俺は妥協を許さない性格だったんだ。
36 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:14:15.293 ID:bBdKFIo+0.net
ジョンは飛行機について語るのが好きだった。
そして、俺はそれを聞くのが好きだったんだ。
「僕はボーイング777-400 を操縦してみたいな。その理由はあーたらこーたら。」
とか、「エアバスの飛行機には基本的に操縦桿がないんだよ。全部ジョイスティック。しってた?」
とか。
とにかくジョンの飛行機に関する知識はすごかった。
37 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:15:41.981 ID:bBdKFIo+0.net
なんでこんなに飛行機について色々知ってるのか一度聞いたことがあるんだが、ジョンは小型機のコックピットに何度も乗ったことがあるらしいな。
アメリカでは結構いろんな人が小型機を運転できるんだとか。
ジョンは小型機パイロットの友達にコックピットに乗せてもらっていると言っていた。
へえ、そりゃすげーや。
38 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:16:52.511 ID:bBdKFIo+0.net
ある日、俺らは飛行機のシミュレーションゲームをやってみた。
ジョンはすごい喜んでたな。
なんせ、目が見えないジョンにとってこれがはじめてのビデオゲームだったとか。
俺がジョンに現在地とかの情報を説明して、ジョンが俺に次は何をするだとかの手順を教えてくれる。
きっとそのゲームをしている間は、俺たちは最高のパイロットコンビだった。
「僕たち、きっと素晴らしいパイロットになれるね。」
ジョンは呟いた。
それにたいして俺は、「そうだな。」としか言ってやれなかったな。
39 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:17:40.845 ID:bBdKFIo+0.net
でもやっぱりゲームは楽しかった。
同じ空港へのアプローチを何度も繰り返して、悪天候での着陸も試してみて。
今思えば、あんなクリア条件もタスクもないゲーム、何が楽しいんだろな。
でも、あの時は時間さえ忘れるくらいに楽しいと思っていたんだ。
40 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:18:40.655 ID:bBdKFIo+0.net
「ジョンはパイロット以外になってみたい仕事はないの?」
「もし僕がパイロットになれないのであれば、生きている意味がないよ。」
「…」
ある日、ジョンとマリンさんの会話が聞こえてきた。
俺は聞いていない、理解していないふりをして自室にむかった。
そんで俺はベットの上で考えたんだ。
数か月前まで俺たちは面識すらなかった。
1年が過ぎて俺が帰国すれば、接点なんてなくなる。
ジョンなんていわば他人も同然なんだ。
俺は自分に言い聞かせたよ。
でもそしたらあの時の、胸を締め付けられるような苦しみは一体なんだったんだろうな。
41 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:19:55.807 ID:bBdKFIo+0.net
ちょうど、ジョンの16の誕生日のことだった。
アメリカでは16の誕生日は一つの大きなイベントらしくて、大人になったことを意味するらしい。
タバコとか酒とかは21かららしいけど、16で運転免許がとれるようになったり選挙権が与えられたりするんだとか。
マリンさんは、それをちょうどジョンの人生の分岐点にしようとしたらしい。
ジョンに本当のことを伝えたんだ。
視力がないとパイロットにはなれないこととか、いろいろ。
ジョンは全部を聞く前に それどころではなくなっちゃってさ。
こんなのは間違っていると泣きわめくジョンを、俺は見ていられなかった。
42 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:21:20.881 ID:bBdKFIo+0.net
マリンさんの気持ちも分かるよ。
どうせいつかは直面する日が訪れてしまうんだ。
それは後になるほど言いづらいもんな。
実際に今回も、マリンさんは心を相当痛めたと思う。
でもやっぱり自分の子供は大切だもんな。
ちゃんと将来生きていけるような、もっとマシな夢を持ってほしかったんだろうな。
その日ジョンは、マリンさんに不満を吐き続け、俺を嘘つきと罵り、その焦点の合っていない目からは夥しい量の涙を流していた。
45 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:24:23.956 ID:bBdKFIo+0.net
俺はその日の夜、ベットの中でなかなか眠れずに考えていた。
ジョンに言われたことを思い出したんだ。
「僕はパイロットに憧れていたけど、でも薄々本当はなれないことに気づいていた。
でもシオン君が、僕たちはいいパイロットになれると言ってくれたんだ。
僕が頑張って勉強したパイロットの知識をすごいと言ってくれたんだ。
本当に僕がパイロットみたいだって言ってくれたんだ。
だから、僕も本当にパイロットになれると信じたんだ。
なんで生半可に期待を持たせたんだ、この嘘つき」
って。
話は少しだけ遡る。
俺は人生計画の通り、本当に高校で留学しちまったんだよ。
あまり裕福な家計ではないのに、金を出してくれた両親にはホントに感謝してる。
俺は最初、留学行くことにあんまり重み?みたいなのを感じてなかったんだよ。
ちょっと一年間アメリカ行ってくるわw みたいな。
でも、留学はそんな、一言で完結させることなんかできないくらい特別な思い出なんだ。
26 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:03:24.859 ID:bBdKFIo+0.net
留学生はホストファミリーを選べないって知ってたか?
基本的に、どこかしらのホストファミリーが自分を選んでくれるのを待つんだ。
そのために自分の戸籍やら紹介文やらを書いて提出するんだが、その必須項目の一つに、「なんで留学したいとおもったのか」っていうのがあるわけだ。
そこで俺はストレートにこう書いた。
「パイロットになるにあたって必要な英語力を上げるために留学を決意しました」ってね。
たちまちそれを見た、一つのファミリーによって俺の留学先は決定された。
27 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:04:45.148 ID:bBdKFIo+0.net
そこはファミリーと言っていいのか分からないくらい小さな家族だった。
母親と同年代の弟と俺。
俺はてっきりちっさな子供がたくさんいる家庭を想像してたから、最初にその家族構成を知った時は多少動揺したな。
でも問題はそこじゃなかったんだ。
弟は障害を持っていたんだ。
彼は盲目だった。
名を仮にジョンとする。
そういや、俺はそういう障害者と一緒に何かしたりする経験はなかったんだよな。
28 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:05:31.521 ID:bBdKFIo+0.net
ちなみにジョンはその母親と血がつながっているわけではない。
養子っていうのかな。
両親を失い、目も見えずに、行き場をなくしたジョンに手を差し伸べたのがその母親だった。
すごいよな、その母親。
名を仮にマリンさんとしようか。
29 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:06:40.486 ID:bBdKFIo+0.net
渡米して最初の頃の俺は、首を左に右に振りっぱなしだったな。
本当に、異世界に来たみたいだったよ。
何もかもが違ってて、新しいことばかり。
俺は好奇心が人一倍に強かったし、これには興奮せざるおえなかった。
30 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:07:34.056 ID:bBdKFIo+0.net
一方で、辛いこともやっぱりあるんだ。
英語が聞き取れない、聞き取ってもらえない、自分と相手の価値観が違いすぎる。
一回、人と話すことが嫌になったくらいだ。
それを乗り越えるのが留学の一つの目標なんだけどな。
最初はみんなそんなもんだ。
31 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:08:24.656 ID:bBdKFIo+0.net
俺の英語力も安定してきて、まともにコミュニケーションができるようになってきたころ、俺はジョンに話しかけられたんだ。
ジョンは俺に自分の将来の夢を語ってきた。
簡単に言うと、ジョンの夢は俺と同じくパイロットになることだった。
なるほど、俺をホストしてくれたのはそのおかげか、なんて思いつつ、彼のパイロットへの愛を聞くことになるんだ。
俺はジョンの目を見ながら、黙って話を聞いていた。
32 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:09:36.220 ID:bBdKFIo+0.net
空を飛ぶことへの憧れ、乗り物への好奇心。
ジョンは はじめて飛行機に乗った時、パイロットになりたいと思ったらしい。
俺も最初はそうだった。
そんで、一度そう思ったら色々興味がわいてくるんだよな。
どうしたら飛行機を操縦できるのか、とか。
パイロットってどんな人なのか、とか。
それで、調べていくうちにすっかりその虜になってしまう。
俺とジョンはとことん似たもの同士だった。
33 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:11:02.640 ID:bBdKFIo+0.net
みんなは高校生のころ、俺みたいに こんなはっきりした将来の夢をもっていたか?
もちろん、いることにはいるんだろうけど、そういう人は結構少なかったんじゃないかな。
実際、俺の周りにそういう人は少なかったし。
だから、こうやって夢を語れるっていうのは俺にとってすごい嬉しいことのはずだったんだ。
本来ならば、な。
34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:11:56.742 ID:bBdKFIo+0.net
でも俺はその時、嬉しいとも楽しいとも思わなかったんだ。
皆はさ、目が見えないパイロットが操縦する飛行機に乗りたいと思うか?
実際に、パイロットになるには厳しい身体検査がある。
その検査は、一見なんの以上もない健康な人でも半数しか受からないほど厳しい検査だ。
両眼視力はもちろん、片目視力、空間把握能力、色覚、平衡感覚…
パイロットになるにあたって、目が見えないのは致命的だったんだ。
最初こそ俺と面を向かって話していたジョンだが、いつの間にかジョンは壁に向かって喋りかけていた。
35 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:12:50.720 ID:bBdKFIo+0.net
俺は考えてみた。
もし、今この時点で俺がパイロットになれないということが確定したら、俺はどうするか。
死ぬ。以上だ。
それだけ、俺は妥協を許さない性格だったんだ。
36 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:14:15.293 ID:bBdKFIo+0.net
ジョンは飛行機について語るのが好きだった。
そして、俺はそれを聞くのが好きだったんだ。
「僕はボーイング777-400 を操縦してみたいな。その理由はあーたらこーたら。」
とか、「エアバスの飛行機には基本的に操縦桿がないんだよ。全部ジョイスティック。しってた?」
とか。
とにかくジョンの飛行機に関する知識はすごかった。
37 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:15:41.981 ID:bBdKFIo+0.net
なんでこんなに飛行機について色々知ってるのか一度聞いたことがあるんだが、ジョンは小型機のコックピットに何度も乗ったことがあるらしいな。
アメリカでは結構いろんな人が小型機を運転できるんだとか。
ジョンは小型機パイロットの友達にコックピットに乗せてもらっていると言っていた。
へえ、そりゃすげーや。
38 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:16:52.511 ID:bBdKFIo+0.net
ある日、俺らは飛行機のシミュレーションゲームをやってみた。
ジョンはすごい喜んでたな。
なんせ、目が見えないジョンにとってこれがはじめてのビデオゲームだったとか。
俺がジョンに現在地とかの情報を説明して、ジョンが俺に次は何をするだとかの手順を教えてくれる。
きっとそのゲームをしている間は、俺たちは最高のパイロットコンビだった。
「僕たち、きっと素晴らしいパイロットになれるね。」
ジョンは呟いた。
それにたいして俺は、「そうだな。」としか言ってやれなかったな。
39 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:17:40.845 ID:bBdKFIo+0.net
でもやっぱりゲームは楽しかった。
同じ空港へのアプローチを何度も繰り返して、悪天候での着陸も試してみて。
今思えば、あんなクリア条件もタスクもないゲーム、何が楽しいんだろな。
でも、あの時は時間さえ忘れるくらいに楽しいと思っていたんだ。
40 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:18:40.655 ID:bBdKFIo+0.net
「ジョンはパイロット以外になってみたい仕事はないの?」
「もし僕がパイロットになれないのであれば、生きている意味がないよ。」
「…」
ある日、ジョンとマリンさんの会話が聞こえてきた。
俺は聞いていない、理解していないふりをして自室にむかった。
そんで俺はベットの上で考えたんだ。
数か月前まで俺たちは面識すらなかった。
1年が過ぎて俺が帰国すれば、接点なんてなくなる。
ジョンなんていわば他人も同然なんだ。
俺は自分に言い聞かせたよ。
でもそしたらあの時の、胸を締め付けられるような苦しみは一体なんだったんだろうな。
41 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:19:55.807 ID:bBdKFIo+0.net
ちょうど、ジョンの16の誕生日のことだった。
アメリカでは16の誕生日は一つの大きなイベントらしくて、大人になったことを意味するらしい。
タバコとか酒とかは21かららしいけど、16で運転免許がとれるようになったり選挙権が与えられたりするんだとか。
マリンさんは、それをちょうどジョンの人生の分岐点にしようとしたらしい。
ジョンに本当のことを伝えたんだ。
視力がないとパイロットにはなれないこととか、いろいろ。
ジョンは全部を聞く前に それどころではなくなっちゃってさ。
こんなのは間違っていると泣きわめくジョンを、俺は見ていられなかった。
42 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:21:20.881 ID:bBdKFIo+0.net
マリンさんの気持ちも分かるよ。
どうせいつかは直面する日が訪れてしまうんだ。
それは後になるほど言いづらいもんな。
実際に今回も、マリンさんは心を相当痛めたと思う。
でもやっぱり自分の子供は大切だもんな。
ちゃんと将来生きていけるような、もっとマシな夢を持ってほしかったんだろうな。
その日ジョンは、マリンさんに不満を吐き続け、俺を嘘つきと罵り、その焦点の合っていない目からは夥しい量の涙を流していた。
45 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:24:23.956 ID:bBdKFIo+0.net
俺はその日の夜、ベットの中でなかなか眠れずに考えていた。
ジョンに言われたことを思い出したんだ。
「僕はパイロットに憧れていたけど、でも薄々本当はなれないことに気づいていた。
でもシオン君が、僕たちはいいパイロットになれると言ってくれたんだ。
僕が頑張って勉強したパイロットの知識をすごいと言ってくれたんだ。
本当に僕がパイロットみたいだって言ってくれたんだ。
だから、僕も本当にパイロットになれると信じたんだ。
なんで生半可に期待を持たせたんだ、この嘘つき」
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