思い出の懐中時計
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学校の帰り公園のブランコに座ってボーっとしていた。
雪村には計画では制御できない一つの鍵となる役割をやってもらう。
あいつがその時どういう行動に出るのかわからない。
でも今日、雪村は北村の事を本気で心配したと言っていた。大丈夫かもしれない。
ポケットから懐中時計を取り出す。
今回の事を通じて本当の意味で宝物になった気がする。
大切にしよう。絶対に。
翌日の朝五時雫に叩き起こされる。
「兄さん」
「雫、早起きだな」
「見つかると計画台無し。今から学校行ってセット」
「ああ。たのむ」
「兄さん今日仕上でしょ。信じてるからね。兄さんを。私は誰も傷付いてほしくない」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「兄さん?」
「俺を信じろ」
「うん」
妹は小さく笑うと「じゃ、行ってくる」と言って出て行った。
朝の8時。登校途中に雪村に連絡する。
「雪村」
「はい」
「今日朝、一騒動ある。その後 俺は北村を放課後屋上に呼び出す予定だ。
その時お前こっそり物陰から様子を見ててほしい。そしてその後どうするかはお前にまかせる。
お前の気持ちに正直に動いていい」
「・・・・・何かまたするんですね・・・・・・」
「ああ。仕上げだ」
「北村さんを・・・・・・・・脅迫・・・・ですか?」
「・・・・・・・・・ああ。お前には もう何も強制しない。自分の気持ちに正直になれ」
そういうと、俺は返事を待たずに電話を切った。
教室で1限目の授業を受ける。もう一騒動あった頃だろう。
休み時間妹からメールが来る。
雫メール:兄さん。大変。北村朝登校してきて、自分の机の時計を見て顔面蒼白。気を失って倒れた。今保健室。
俺メール:戻ってきたらメールしろ。
雫メール:了解。
昼休みに雫からメールが来る。とりあえず教室には戻ったらしい。
再び北村に電話をかける。
「北村さん。こんにちは」
「ひっ・・・・・その時計の音・・・・・やめて・・・・・ください・・・・もう・・・・」
「金は?」
「・・・・・・・・・お金は親の盗んで・・・・・きました・・・・・・・」
「お前は今祖母と暮らしてるんだろう!!大変な孫をもったもんだ」
「何でそれ・・・・・・」
「放課後5:00に屋上に来い。金をもってな」
それから放課後までの時間がとても長く感じた。
うまくいくだろうか。全ては雪村しだい。
時間より15分前に屋上へ行った。雫と小林は物陰に隠れて待機。様子を見守るように言ってる。
懐中時計を見つめる。夕日に照らされて竜の彫刻の目の部分がピカッと光った気がした。
やがて時間が来た。
屋上のドアがゆっくりと開く。面と向かって会うのは初めてだ。
「あなたは・・・・・・・・!?」
俺の顔を見て不思議そうな顔をしている。
「たどり着いた先にお前は何を見た?北村」
「あなたが・・・・あなたが・・・・・??」
「ああ。俺が脅迫電話の主。3年の時任だ。金は持ってきたんだろうな」
「おばあちゃん、あんまり持ってなくて・・・・・・・4万しか・・・・・・」
「それは写真をばら撒いてくださいって意味か?」
「ちがう!!本当に用意できなかったの・・・・・・これで許してください・・・・・・・」
「お前終わりだよ。せいぜい残りの高校生活楽しめよ。ていうか、お前が今度いじめられるんじゃね?」
心にもない台詞を言うと心が痛い。雪村、指示通り見てるだろうか。
その時だった。
「やめてください!!」
雪村だった。その目には強い意志が感じられた。
「雪村・・・・・・?」
北村の呆然とした顔。状況が分かっていない。
「北村さんを それ以上脅迫しないでください!!可愛そうじゃないですか!!」
「貴様ァ雪村!!そいつは お前をいじめてたヤツだろう!!そんなヤツかばうな!!人間の屑だ!!」
「こんなに震えてるじゃないですか!!ひどいですよ お金を取る気だったんでしょう!!」
「ああそうだ。こんな女生きる価値ねえよ!!」
「・・・・・私も正直辛かったけど・・・・でもこんなに怯えてる北村さん見ちゃったら あたしもう・・・
憎めない・・・・・・憎めないよ」
俺は空を見上げた。夕日がまぶしい。
少し目が潤んできた気がした。
「おい。北村聞いたか?」
「・・・・・雪村・・・・・あたし・・・・」
「お前がいじめてたヤツがお前の事心配してくれてるんだぞ?お前の気持ちを正直に言え。今まで雪村にしてきた事どう思ってる?」
北村の瞳から大粒の涙が流れた。
「ごめん雪村・・・・・!!本当にごめんなさい!!あたし・・・・・手首のリストカットの写真見て初めて自分のしてきた事の重大さに気がついたの・・・・・ごめん・・・・ごめん・・・・!!」
北村は大粒の涙を流しながら頭を地面にこすりつけていた。
思わず貰い泣きしそうになった俺は、慌てて顔を背けた。
「北村さん・・・・・・・」
「雪村・・・・・・」
「許してあげる」
「ええ?」
「もういじめないでね?」
「ごめん・・・・・・・」
雪村は やっぱりこういう人間だった。自分が弱いからこそ、相手の心を気使ってあげる優しさ。
それが例え、イジメのリーダーの北村であっても。
誰にもできることじゃない。
でも雪村は北村を許した。
それが全てだ。
北村がそっと雪村の手首の袖をまくる。
「ごめんね雪村・・・・・これ一生消えないよね?ごめん・・・・・・ごめんね・・・・・?」
「うん」
雪村は小さくそう答えただけだった。
「兄さん」
「先輩」
「おう。もう出てきていいぞ」
「兄さん泣いてる」
「雫も」
物陰から様子を見ていた雫と小林が出てきた。
キョトンとした雪村と北村の顔。
俺は静かに言った。
「北村。今回の事全部な、本気じゃなかったんだ」
「どう言う事?」
「ほら。写真のネガ。これお前に渡す。金もいらない。おばあちゃんの財布にちゃんと返しとけ」
「貰っていいの脅迫のネタでしょ・・・・」
「最初に聞いただろ。北村。お前はイジメをやってたどり着いた先に何を見た?」
「・・・・あたし・・・・・・」
「後悔だろう?特に雪村の自殺未遂聞いたとき」
「・・・うん。怖かった・・・・」
「俺はお前に弱者の気持ちを知って欲しかっただけだ」
「あなた・・・・・・・最初からそれだけが目的だったの?」
「ああ。お前は今弱者の気持ちを知ったはずだ。だからこそこれからは、人に優しくできるだろう?」
「ええ・・・・」
「もうイジメはしないな?」
「誓うわ」
「そうか・・・・じゃあ一つプレゼントをやろう」
雫を見る。
雫は小さく頷いた。
「何?」
「北村、お姉さんに会いたくないか?」
「ええ!?し、知ってるの?どこにいるのか」
「ああ。ほら、住所。行ってみろ」
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