みんなの大好きな、みどりいろのあいつの話
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148 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 11:56:45.69 ID:P6q7GFss0
人間の耳が辛うじて耐えられるレベルの不快音をジュークは四十時間出し続け、街から人を追い払った。
人払いを済ませると、ジュークはボリュームを最大にした。
ジュークの正面にあったものは、それでお終いだった。
傍にあるビルから順に窓が割れ、ガラスが降り注ぐ。
木々が倒れ、アスファルトがめくれ、自動車が吹き飛び、街灯が折れて明かりが消え、瓦礫が飛び、土煙が舞い上がる。
至るところに火が点き、あっという間に燃え広がる。
ジュークの髪のコーティングが徐々に剥がれていき、エメラルドグリーンの髪があらわになっていく。
ジュークは歌いながらゆっくりと回った。
一回転するごとに街は平らになっていった。
149 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:01:31.60 ID:P6q7GFss0
近くの街にいた者たちは、皆、耳を塞いだ。
けれども、さらに遠くにいる人たちには、それが歌だということが、はっきり分かった。
「私の知らない歌」とある少女が言うと、その祖父は「そうだろうなあ」と頷いた。
「とっても古い歌だ。本当に久しぶりに聞く」
「ふうん。おじいちゃんの世代の歌なんだ。
でも私、この古くさい歌、嫌いじゃないなあ。
日本語だよね。なんて言ってるのかな?」
「この歌は、つまり――歌う相手がいなくなったら、ラブソングも悲しいだけだ、って歌ってるんだ」
150 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:06:24.68 ID:P6q7GFss0
ジュークは二時間ほど歌い続けた。
いつかロックの前で初めて歌った曲を歌い出したとき、ふいに、ジュークの左腕に衝撃が走った。
半壊して機能しなくなった左腕を見て、それが対音響兵器用の弾丸だと気づいたときには、ジュークの右足を、同じ物が貫いていた。
ジュークはあおむけに倒れ込んだ。
右腕で立ち上がろうとすると、右肩を撃ち抜かれた。
最後に、喉に弾丸が食い込んだ。二発、三発、四発。
それでお終いだった。
151 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:17:11.47 ID:P6q7GFss0
ジュークを撃った男とその部下が歩いてきて、さっきまでジュークだったものの傍にしゃがみこんだ。
あおむけのままジュークが歌ったせいかもしれない。
曇っていた空が晴れて、辺りが照らされていた。
穏やかな風が吹いて、ジュークの緑色の髪を揺らした。
男は部下に言った。
「これが何だか、わかるか?」
部下は首をふった。
「詳しいことは、何も」
「……こいつはかつて、電子の歌姫と呼ばれた子さ。
一時期は名前を知らない奴はいないくらいだったが、
最近じゃ、完全に忘れ去られていた存在だ」
そう言うと、男はジュークをそっと抱え上げる。
「だがな。さっき確認したんだが、この子が歌う姿は、衛星を通じて全世界に中継されちまったらしい。
この事件は今後、永遠に語り継がれていくだろうな。
そういう意味でも、これまでにいたどんな歌手よりも大勢の観客を前にして歌ったことになるんだよ、
この時代遅れのヴォーカロイドもどきは。
こういうのをロックンロールって言うんじゃないのか?」
私にはただの悲鳴に聴こえました、と部下は答えた。
152 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:19:19.52 ID:P6q7GFss0
おわり。
153 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:27:48.51 ID:SQbyJudR0
>>152
おつ。
ボカロは好きじゃないがいい話しだった
154 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 13:36:23.62 ID:WLpRIWZRP
うん、面白かった
156 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 15:35:12.72 ID:N2VcEifX0
ボカロ好きじゃないけどこのお話は好きだよ
157 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 17:33:45.57 ID:tcXZ8yaQ0
面白かったけど
なんか釈然とこないな
158 :名も無き被検体774号+:2013/04/08(月) 15:20:18.27 ID:rRkPxznd0
ミクの話なのに中盤までミクが出てこないのがすごくよかった
伏線とかも丁寧だったし、ボカロ好きじゃないけどこれは好き
人間の耳が辛うじて耐えられるレベルの不快音をジュークは四十時間出し続け、街から人を追い払った。
人払いを済ませると、ジュークはボリュームを最大にした。
ジュークの正面にあったものは、それでお終いだった。
傍にあるビルから順に窓が割れ、ガラスが降り注ぐ。
木々が倒れ、アスファルトがめくれ、自動車が吹き飛び、街灯が折れて明かりが消え、瓦礫が飛び、土煙が舞い上がる。
至るところに火が点き、あっという間に燃え広がる。
ジュークの髪のコーティングが徐々に剥がれていき、エメラルドグリーンの髪があらわになっていく。
ジュークは歌いながらゆっくりと回った。
一回転するごとに街は平らになっていった。
149 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:01:31.60 ID:P6q7GFss0
近くの街にいた者たちは、皆、耳を塞いだ。
けれども、さらに遠くにいる人たちには、それが歌だということが、はっきり分かった。
「私の知らない歌」とある少女が言うと、その祖父は「そうだろうなあ」と頷いた。
「とっても古い歌だ。本当に久しぶりに聞く」
「ふうん。おじいちゃんの世代の歌なんだ。
でも私、この古くさい歌、嫌いじゃないなあ。
日本語だよね。なんて言ってるのかな?」
「この歌は、つまり――歌う相手がいなくなったら、ラブソングも悲しいだけだ、って歌ってるんだ」
150 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:06:24.68 ID:P6q7GFss0
ジュークは二時間ほど歌い続けた。
いつかロックの前で初めて歌った曲を歌い出したとき、ふいに、ジュークの左腕に衝撃が走った。
半壊して機能しなくなった左腕を見て、それが対音響兵器用の弾丸だと気づいたときには、ジュークの右足を、同じ物が貫いていた。
ジュークはあおむけに倒れ込んだ。
右腕で立ち上がろうとすると、右肩を撃ち抜かれた。
最後に、喉に弾丸が食い込んだ。二発、三発、四発。
それでお終いだった。
151 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:17:11.47 ID:P6q7GFss0
ジュークを撃った男とその部下が歩いてきて、さっきまでジュークだったものの傍にしゃがみこんだ。
あおむけのままジュークが歌ったせいかもしれない。
曇っていた空が晴れて、辺りが照らされていた。
穏やかな風が吹いて、ジュークの緑色の髪を揺らした。
男は部下に言った。
「これが何だか、わかるか?」
部下は首をふった。
「詳しいことは、何も」
「……こいつはかつて、電子の歌姫と呼ばれた子さ。
一時期は名前を知らない奴はいないくらいだったが、
最近じゃ、完全に忘れ去られていた存在だ」
そう言うと、男はジュークをそっと抱え上げる。
「だがな。さっき確認したんだが、この子が歌う姿は、衛星を通じて全世界に中継されちまったらしい。
この事件は今後、永遠に語り継がれていくだろうな。
そういう意味でも、これまでにいたどんな歌手よりも大勢の観客を前にして歌ったことになるんだよ、
この時代遅れのヴォーカロイドもどきは。
こういうのをロックンロールって言うんじゃないのか?」
私にはただの悲鳴に聴こえました、と部下は答えた。
152 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:19:19.52 ID:P6q7GFss0
おわり。
153 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 12:27:48.51 ID:SQbyJudR0
>>152
おつ。
ボカロは好きじゃないがいい話しだった
154 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 13:36:23.62 ID:WLpRIWZRP
うん、面白かった
156 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 15:35:12.72 ID:N2VcEifX0
ボカロ好きじゃないけどこのお話は好きだよ
157 :名も無き被検体774号+:2013/04/07(日) 17:33:45.57 ID:tcXZ8yaQ0
面白かったけど
なんか釈然とこないな
158 :名も無き被検体774号+:2013/04/08(月) 15:20:18.27 ID:rRkPxznd0
ミクの話なのに中盤までミクが出てこないのがすごくよかった
伏線とかも丁寧だったし、ボカロ好きじゃないけどこれは好き
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