記憶を消せる女の子の話
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34 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:07:52 ID:F5o(主)
仲良くなりたいと思う、優しそうな人との関わりもすべて消した。
寂しさより怖さが勝った。
大切なものができると、それを失ったとき、大切さの度合い分悲しくなるのは、皆も知っている通り。
失ったとしても、とても楽しかったのなら良かったんじゃない? というのは強い人の言葉だ。
そもそも私は楽しさより、寂しさと悲しさと仲良しなのだ。楽しさとか嬉しさの価値をよく知らない。
知っても、どうせ悲しくなるだけだ。
35 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:14:52 ID:F5o(主)
かくして、中学の人たちが持っている私に関する記憶は均一化された。
それでも、「いないもの」だった小学生のときより遥かに気が楽だった。
あのとき、名前すら忘れ去られていた私は修学旅行の班決めで余っているにも関わらずに名前が挙がらなかった。
ぼっちの人でも、嫌われている人でも名前が挙がるというのに。
36 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:21:23 ID:F5o(主)
そういう事故も多くあった。私は存在が空気のくせに、面倒事には存在感を醸し出し始める悪影響を及ぼす空気だった。
せめて、そういう面倒ごとを起こさない良い空気になってやろうとして、自己紹介の記憶だけを残しておいた。
だから、小学生の時のようなことがないので「名前だけの存在」であっても、気が楽なのだ。
37 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:29:41 ID:F5o(主)
そうして、学校では誰とも話さない日が何年も続いた。
家に行っても浮かない顔をしている母親と無表情に会話をするだけだった。
友達がいない娘と話して、楽しそうな方がおかしいのだ。母には悪いことをしたなと思う。
父は単身赴任をしているらしく、会った覚えはない。
それでも、私は父をいい人だと確信している。なにもない私が持っている、唯一の自信だ。
38 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:37:10 ID:F5o(主)
友達がいない人間は何をして過ごすか。おおよそ、本と音楽と友達になるしかないだろう。
今では彼らと親友くらいにはなれたかな?
それともう一つ、私は青空を見上げるのを趣味にした。
小学生の時、泣いて見上げた空に浮かんでいた太陽を囲う虹色の輪――ハロ現象というらしい。
それをもう一目見たいと思ったのだ。
39 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:46:43 ID:F5o(主)
私は恋するようにあの現象に惹かれていた。
もう一度見たい、その思いだけが私が生きる理由。今も、それは変わっていない。
時間が有り余っているのは悲しいことだが、ハロ現象に恋をしている私にとっては嬉しいことだった。
40 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:51:42 ID:F5o(主)
恋をしたことはないけれど、たぶんこういうことだと思ってる。
いつも疲れた表情を浮かべている母親と一緒にいるのも億劫だったから、私はたいていの時間を図書館とあの河川敷で過ごした。
青空を見ながら聴くバラードは本当に落ち着く。
私は行きの電車で聴きたくなる曲より、帰りの電車で聴きたくなる曲が好きだった。
42 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:04:36 ID:F5o(主)
死んじゃってもいいんじゃないかな、という思いは相当な頻度でやってきた。
人生の一番難しいところは、なにがあっても簡単には死ねないこと、だと思うが、私は簡単に死ねる。
私に関する記憶を全て消しさえすれば、誰も私の死に心を痛めない。
人が死ぬのを躊躇している理由は、様々な思い出に自分をがんじがらめに縛り付けられているからだ。
自分の生に価値があると思えてしまうほどの思い出がその人にはあって、もし死んだら悲しむ人もいる。
ああ、羨ましいな、と思う。
44 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:10:30 ID:F5o(主)
私にもそんな人がいてくれたらいいのにな。
ひょっとして父は、もし私が死んだら悲しんでくれるのかな?
そんな淡い期待を抱いて、今も私は生きている。
でも母は、友達がいないかわいそうな娘、から解放されて元気になるのかもしれない。
そう思うと複雑だった。
45 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:16:28 ID:F5o(主)
惰性で生きていて、ずっと決まりきったことをしていると頭はおかしくなってしまう。
私もその例に漏れず、高校一年生のときにがたが来てしまった。
46 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:22:49 ID:F5o(主)
どうせ後で記憶を消せば問題ないだろう、ということで、私は学校生活でやってみたかったことをやり始めた。
授業中に先生へ質問してみるとか、授業中に思いっきり寝てみるとか、そんなことを。
真面目な私は立派にぐれたのである。
47 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:30:09 ID:F5o(主)
でも、それは今思うと平和的で誰も傷つけない友好的な記憶の消し方だ。
悪用してはいないんだけど、自分悪いことしてるんだぜ感が起伏のない日常を刺激したことには違いない。
少なくとも生きている心地がした。
48 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:34:50 ID:F5o(主)
そんなことをしているうちに、私の真面目な生徒の部分は色を落としていった。
結果的に、誰にも迷惑かけなければ、それは平和的で友好的なんだ、と素で思うようになった。
その考えは遅刻のもみ消しを自分に許す理屈になった。
49 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:39:33 ID:F5o(主)
その理屈で現在、私は授業中なのに屋上にいる。
青空に近いこの場所は、ハロ現象を観測するにうってつけだ。
しかも誰も来ない。これほどまでに私を落ち着かせる場所もなかなかない。
50 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:44:10 ID:F5o(主)
この場所を発見して約一年経った。
給水塔あたりに腰を掛けてお昼ご飯をもぐもぐ食べていると、屋上の扉がぎぎぎと開く。
私以外にここを来るのは用務員の先生くらいだ。
用務員さんに見つかったら、また記憶を消さなければならない。
51 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:48:09 ID:F5o(主)
せめて隠れようと、焼きそばパンを持ち給水塔の裏に移動した。
ばたんと扉が閉まる。用務員の先生ならば見回ってすぐ帰るはずだ。
足音が近づく。なんだか怖くて耳をふさいだ。二分心のなかで数えたところで、耳から両手を離す。
52 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:51:12 ID:F5o(主)
まだ音がしていた。でも見回る際の足音ではない。かちゃかちゃと箸を扱う音だった。
予想してない展開で心臓の鼓動が早まった。
用務員の先生じゃない?
私はおそるおそる音の鳴る方を覗いてみた
53 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:53:44 ID:F5o(主)
男子が一人でご飯を食べていた。
ぼっち飯かな? まぁ私もぼっち飯だけど四年間くらい。
なんだか親近感が湧いたので、じっと彼を観察してみる
54 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:01:27 ID:cBh(主)
色白で、なんかやる気のない人だ。眉より伸びた前髪が一層やる気のなさを表している。
それでも端正な顔立ちで、女子の間で人気爆発、とはならないけれど、かっこいい部類には入るだろう。
そのやる気のなさに私はすっかり安心してしまい、話しかけることにした。
話し終わった後で記憶は消せば大丈夫だ。
どんな話しかけ方をしてもいいと思うと、気が楽だった。
56 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:07:17 ID:cBh(主)
「やーいやーい、君はぼっち飯なの?」
挑戦的な言葉をかけてしまった。私のキャラでは絶対にない。ただ人と会話をしてなさすぎてテンションがおかしくなっているだけだ。
この少年の第一印象からして、こういう話しかけ方は一番うっとうしがられるはず。ちょっと後悔。
57 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:12:45 ID:cBh(主)
「お前もぼっち飯だろうが。その食いかけの焼きそばパン、食い方汚過ぎて食欲失せるから早く食ってくれ」
売り言葉に買い言葉というやつだ。男子は私を見上げるようにして、デリカシーの欠片もない言葉をかけた。
急いで焼きそばパンをほおばる。私はむかっと来ていた。
58 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:15:24 ID:cBh(主)
どんなひどい言葉をかけてやろうか。何を言ってもいいのだ。
私は記憶を消せるから無敵なのである。こんな無礼な男に情けは必要ない。
焼きそばパンをごくりと飲み込み、満を持して言葉をかけた。
「私は女子だよ!」
自分でも驚いた。
60 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:21:49 ID:cBh(主)
男子は無気力にけらけらと笑い、箸の先を私に向ける。
「女子ならせめて口の周りについてる青のりとソースをなんとかしろ」
言ってやったぜみたいな顔をされた。こいつ、思ったより嫌な奴だ。
ポケットからティッシュを取り出して口を拭く。
「どう!?」
私は喋り方というのを忘れているらしい。
61 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:30:37 ID:cBh(主)
「まぁぎりぎり女子だな」
ため息交じりに男子は言った。
「ぐぬぬ……」
私は本当に喋る機能が退化してしまったらしい。siriのほうがまともなコミュニケーションをとれると思う。
それでも、なんかこの男を見てると悔しくなって、言葉を発さずにはいられない。
「名前は!」
頼むから一文節以上の言葉を紡いで私の脳。
仲良くなりたいと思う、優しそうな人との関わりもすべて消した。
寂しさより怖さが勝った。
大切なものができると、それを失ったとき、大切さの度合い分悲しくなるのは、皆も知っている通り。
失ったとしても、とても楽しかったのなら良かったんじゃない? というのは強い人の言葉だ。
そもそも私は楽しさより、寂しさと悲しさと仲良しなのだ。楽しさとか嬉しさの価値をよく知らない。
知っても、どうせ悲しくなるだけだ。
35 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:14:52 ID:F5o(主)
かくして、中学の人たちが持っている私に関する記憶は均一化された。
それでも、「いないもの」だった小学生のときより遥かに気が楽だった。
あのとき、名前すら忘れ去られていた私は修学旅行の班決めで余っているにも関わらずに名前が挙がらなかった。
ぼっちの人でも、嫌われている人でも名前が挙がるというのに。
36 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:21:23 ID:F5o(主)
そういう事故も多くあった。私は存在が空気のくせに、面倒事には存在感を醸し出し始める悪影響を及ぼす空気だった。
せめて、そういう面倒ごとを起こさない良い空気になってやろうとして、自己紹介の記憶だけを残しておいた。
だから、小学生の時のようなことがないので「名前だけの存在」であっても、気が楽なのだ。
37 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:29:41 ID:F5o(主)
そうして、学校では誰とも話さない日が何年も続いた。
家に行っても浮かない顔をしている母親と無表情に会話をするだけだった。
友達がいない娘と話して、楽しそうな方がおかしいのだ。母には悪いことをしたなと思う。
父は単身赴任をしているらしく、会った覚えはない。
それでも、私は父をいい人だと確信している。なにもない私が持っている、唯一の自信だ。
38 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:37:10 ID:F5o(主)
友達がいない人間は何をして過ごすか。おおよそ、本と音楽と友達になるしかないだろう。
今では彼らと親友くらいにはなれたかな?
それともう一つ、私は青空を見上げるのを趣味にした。
小学生の時、泣いて見上げた空に浮かんでいた太陽を囲う虹色の輪――ハロ現象というらしい。
それをもう一目見たいと思ったのだ。
39 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:46:43 ID:F5o(主)
私は恋するようにあの現象に惹かれていた。
もう一度見たい、その思いだけが私が生きる理由。今も、それは変わっていない。
時間が有り余っているのは悲しいことだが、ハロ現象に恋をしている私にとっては嬉しいことだった。
40 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)22:51:42 ID:F5o(主)
恋をしたことはないけれど、たぶんこういうことだと思ってる。
いつも疲れた表情を浮かべている母親と一緒にいるのも億劫だったから、私はたいていの時間を図書館とあの河川敷で過ごした。
青空を見ながら聴くバラードは本当に落ち着く。
私は行きの電車で聴きたくなる曲より、帰りの電車で聴きたくなる曲が好きだった。
42 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:04:36 ID:F5o(主)
死んじゃってもいいんじゃないかな、という思いは相当な頻度でやってきた。
人生の一番難しいところは、なにがあっても簡単には死ねないこと、だと思うが、私は簡単に死ねる。
私に関する記憶を全て消しさえすれば、誰も私の死に心を痛めない。
人が死ぬのを躊躇している理由は、様々な思い出に自分をがんじがらめに縛り付けられているからだ。
自分の生に価値があると思えてしまうほどの思い出がその人にはあって、もし死んだら悲しむ人もいる。
ああ、羨ましいな、と思う。
44 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:10:30 ID:F5o(主)
私にもそんな人がいてくれたらいいのにな。
ひょっとして父は、もし私が死んだら悲しんでくれるのかな?
そんな淡い期待を抱いて、今も私は生きている。
でも母は、友達がいないかわいそうな娘、から解放されて元気になるのかもしれない。
そう思うと複雑だった。
45 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:16:28 ID:F5o(主)
惰性で生きていて、ずっと決まりきったことをしていると頭はおかしくなってしまう。
私もその例に漏れず、高校一年生のときにがたが来てしまった。
46 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:22:49 ID:F5o(主)
どうせ後で記憶を消せば問題ないだろう、ということで、私は学校生活でやってみたかったことをやり始めた。
授業中に先生へ質問してみるとか、授業中に思いっきり寝てみるとか、そんなことを。
真面目な私は立派にぐれたのである。
47 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:30:09 ID:F5o(主)
でも、それは今思うと平和的で誰も傷つけない友好的な記憶の消し方だ。
悪用してはいないんだけど、自分悪いことしてるんだぜ感が起伏のない日常を刺激したことには違いない。
少なくとも生きている心地がした。
48 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:34:50 ID:F5o(主)
そんなことをしているうちに、私の真面目な生徒の部分は色を落としていった。
結果的に、誰にも迷惑かけなければ、それは平和的で友好的なんだ、と素で思うようになった。
その考えは遅刻のもみ消しを自分に許す理屈になった。
49 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:39:33 ID:F5o(主)
その理屈で現在、私は授業中なのに屋上にいる。
青空に近いこの場所は、ハロ現象を観測するにうってつけだ。
しかも誰も来ない。これほどまでに私を落ち着かせる場所もなかなかない。
50 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:44:10 ID:F5o(主)
この場所を発見して約一年経った。
給水塔あたりに腰を掛けてお昼ご飯をもぐもぐ食べていると、屋上の扉がぎぎぎと開く。
私以外にここを来るのは用務員の先生くらいだ。
用務員さんに見つかったら、また記憶を消さなければならない。
51 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:48:09 ID:F5o(主)
せめて隠れようと、焼きそばパンを持ち給水塔の裏に移動した。
ばたんと扉が閉まる。用務員の先生ならば見回ってすぐ帰るはずだ。
足音が近づく。なんだか怖くて耳をふさいだ。二分心のなかで数えたところで、耳から両手を離す。
52 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:51:12 ID:F5o(主)
まだ音がしていた。でも見回る際の足音ではない。かちゃかちゃと箸を扱う音だった。
予想してない展開で心臓の鼓動が早まった。
用務員の先生じゃない?
私はおそるおそる音の鳴る方を覗いてみた
53 :名無しさん@おーぷん :2017/02/24(金)23:53:44 ID:F5o(主)
男子が一人でご飯を食べていた。
ぼっち飯かな? まぁ私もぼっち飯だけど四年間くらい。
なんだか親近感が湧いたので、じっと彼を観察してみる
54 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:01:27 ID:cBh(主)
色白で、なんかやる気のない人だ。眉より伸びた前髪が一層やる気のなさを表している。
それでも端正な顔立ちで、女子の間で人気爆発、とはならないけれど、かっこいい部類には入るだろう。
そのやる気のなさに私はすっかり安心してしまい、話しかけることにした。
話し終わった後で記憶は消せば大丈夫だ。
どんな話しかけ方をしてもいいと思うと、気が楽だった。
56 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:07:17 ID:cBh(主)
「やーいやーい、君はぼっち飯なの?」
挑戦的な言葉をかけてしまった。私のキャラでは絶対にない。ただ人と会話をしてなさすぎてテンションがおかしくなっているだけだ。
この少年の第一印象からして、こういう話しかけ方は一番うっとうしがられるはず。ちょっと後悔。
57 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:12:45 ID:cBh(主)
「お前もぼっち飯だろうが。その食いかけの焼きそばパン、食い方汚過ぎて食欲失せるから早く食ってくれ」
売り言葉に買い言葉というやつだ。男子は私を見上げるようにして、デリカシーの欠片もない言葉をかけた。
急いで焼きそばパンをほおばる。私はむかっと来ていた。
58 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:15:24 ID:cBh(主)
どんなひどい言葉をかけてやろうか。何を言ってもいいのだ。
私は記憶を消せるから無敵なのである。こんな無礼な男に情けは必要ない。
焼きそばパンをごくりと飲み込み、満を持して言葉をかけた。
「私は女子だよ!」
自分でも驚いた。
60 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:21:49 ID:cBh(主)
男子は無気力にけらけらと笑い、箸の先を私に向ける。
「女子ならせめて口の周りについてる青のりとソースをなんとかしろ」
言ってやったぜみたいな顔をされた。こいつ、思ったより嫌な奴だ。
ポケットからティッシュを取り出して口を拭く。
「どう!?」
私は喋り方というのを忘れているらしい。
61 :名無しさん@おーぷん :2017/02/25(土)00:30:37 ID:cBh(主)
「まぁぎりぎり女子だな」
ため息交じりに男子は言った。
「ぐぬぬ……」
私は本当に喋る機能が退化してしまったらしい。siriのほうがまともなコミュニケーションをとれると思う。
それでも、なんかこの男を見てると悔しくなって、言葉を発さずにはいられない。
「名前は!」
頼むから一文節以上の言葉を紡いで私の脳。
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