水遣り
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私が玄関を飛び出したその時です。家の前に車が停まります。
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タクシーです。妻が帰ってきたのです。
顔は蒼白、髪が乱れ、ブラウスのボタンが2つありません。
しかし、その表情には曇りがありません。
「こんな時間まで、何をしていた」
「佐伯のマンションに行きました」
「どうして携帯の電源を切っていた。また部長様に言われたのか」
「いいえ、決めたのです。終わるまでは電話を受けないと」
「終わるまで?佐伯に抱いてもらうのが終わるまでか」
「・・・・・」
「見てやる、こっちへ来い」
スカートとショーツを一気に脱がせます。足を割り女陰を見ます。
若干濡れてはいますが、男根を受け入れた形跡は無いようです。
太腿には大きな絆創膏が貼られています。
「してはいないようだな。しかし この傷はどうしたんだ」
妻は これには答えません。
「貴方が出て行ってから、佐伯から毎日、何回も電話がありました」
佐伯は私の会社帰りの後をつけ、私がアパート暮らしをしている事を知ったようです。
携帯にも何度も何度も電話があったのです。
勿論、妻は出ません。
家の電話にも佐伯は かけてきます。
「貴方からの電話かも知れないと思うと、出ないわけにはいきませんでした」
抱いてやるから来い、一人暮らしで体が疼いているだろう、慰めてやるから来い、大阪へ一緒に行こう。
佐伯は執拗に誘っていたのです。
「断り続けました」
妻が断り続けていた為、車を乗りつけ家に来るようになったのです。
俺を家の中に入れろと繰返し言っていたのです。
聞き入れられないとクラクションを何度も何度も鳴らすのです。
「私、怖かった」
妻は夜になるのが怖かったのです。
佐伯に何をされるか解らない、近所にも知れてしまう。そんな事を私は考えていました。
それもあるのでしょうが、妻の言った怖いの意味は別のところにあったのです。
佐伯の訪問は何度か繰り返されます。その内妻は耐えられなくなってしまいます。
「今度来たら、マンションへ行こうと決めました」
家に上げる事は絶対に出来ない。そう思ったのです。
「一人になって考えるのは貴方の事ばかりです。貴方を愛していた、今でも愛している。それなのに」
妻は独り言のように喋ります。
「正社員のお祝いで食事を頂いた時、帰りにリムジンで送られた時、私は夢見心地でした。こんなにまでして頂いてと」
「そこで、お前はもう許してしまった」
「抱かれはしてません。でも同じ事ですね」
「期待があったのかも知れません」
「薬を使われた」
「薬のせいだけではありません。私にも原因があったのだと思います」
私の性技だけでは満足していなかったのです。色々なメディアで知った性の喜び、自分の体で知りたかったのです。自分の性欲の強さに気づき驚いたのです。
「貴方に試して欲しいと何度も言おうと思った、でも言えなかった」
妻は私と同じだったのです。同じ思いを抱いていたのです。
「佐伯はきっかけでした。佐伯でなくても同じだったかも知れません」
「佐伯に何度誘われても、最後までは許せませんでした」
「貴方の事を思うのです。最後までは出来ないと」
「同じ事だろう。最後まで行こうが行くまいが」
「違います。女にとっては大きな違いです。それを許すと心まで預ける事になってしまいます」
「お前は心まで預けてしまったと言うのだな」
「解りません。でも違うと思います」
「今、お前が言ったじゃないか、体を許す事は心を預ける事だと」
「そうですね。佐伯が特別な存在だと思ったのかも知れません」
「お前の言う事は全て矛盾している。さっき佐伯でなくともと言っただろう」
「解りません、私の体が・・・」
本当のところは妻自身にも解らないのでしょう。後から言う事は全て理屈です、言い訳です。起きてしまった事に気がついた時に考える言い訳なのです。
「写真で私の中の鍵が外れてしまったのです」
「嘘の写真でな。どうして俺に聞かなかった」
「聞くべきだったと思います。でもあの時は聞こうとは思いませんでした」
「いい言い訳が出来たわけだ」
「違います。でも そうかも知れません」
「はっきり言ったらどうなんだ、これで佐伯に抱いてもらえると」
「多分・・・・」
「多分、何なんだ」
「自分を許すものが欲しかったのです」
「結局、お前は抱かれたかったと言うことだ」
性に積極的ではなかった私、自分の性欲に気づいた妻。妻は自分の欲求をぶつける相手を私ではなく、佐伯を選んでしまったのです。
それから4ヶ月余りも続いてしまったのです。
「4ヶ月間、たっぷり楽しんだと言うわけだ」
「苦しんでもいました。夜眠れませんでした」
眠れなくなった妻は睡眠誘導剤を処方してもらったのです。
「白々しい事を言うな。ばれなければ、もっと続けるつもりだったんだろ この写真を見ろ。これが苦しんでいる顔か。心を預けた顔だ」
報告書の写真をぶつけます。
「心を預けていた?私、そんな顔をしていたのですね。
長い間、不倫をしていても、貴方は何も言ってくれなかった。
気がついているのに、何も言ってくれないのだと、もう私には関心がないのだと、そう思っていました」
「勝手な事を言うな。俺は気がついていなかった。証拠もないのに聞けるわけがないだろ」
「あの時、貴方が大阪に来てくれた時、ほっとしました、これで終われると。嬉しかった、まだ貴方に気にかけて頂いていると」
これで終われるとほっとした妻も、後で録画の事を思い出します。もし、佐伯にそれをばら撒かれても、その時は私と別れて、何処か別の土地で暮らそうと思ったのです。
「それで、もう会社には居場所が無いと言ったのか」
「そうかも知れません」
「会社は辞めても、この家からは出て行かなかった」
「初めは、別れて頂こうと思いました。でも、やっぱり貴方の傍に居たかった。メールされても、貴方が許して下さるなら、貴方と暮らしたかった」
「自分の都合ばかり言ってるな、お前は。俺の事など何も考えてない」
此処まで話しても妻は涙を見せません。妻の決心が本当なら、妻もそれ相応に覚悟を決めた事になります。
しかし、妻の言っている事は自分に都合のいい事ばかりです。不倫している妻に気がついて責めて欲しかった。後になって言える事です。
録画の件も、それは存在しないと解ったから言える事です。私には そんな風に思えるのです。
「綺麗事言っているが、今日また佐伯に抱かれたわけだ、お前の体が疼いてな」
「違います。抱かれてなんかいません」
抱かれていない事は妻の体を見て解っています。それでも私は言わずにはいられないのです。
「どうして行ったんだ」
「一度は会わなくては、決別の為に一度は、と思っていました」
あれだけの快楽を与えてくれた佐伯です。会えば また抱いて欲しくなるに決まっている、私はそう思っていました。
妻の思いは逆だったのです。佐伯と会っても自分の気持ちは変わらない、その確信が欲しかったのです。
佐伯が来る前に離婚届に名を書き印を押します。メモを書きますが、離婚届をの後には文字が続きません。
「どうして離婚届けを書いた」
「もし佐伯に抱かれたら 私はそれまでの女です。もう貴方の元には帰れません」
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佐伯が来て、妻は佐伯の車に乗ります。バッグにはある物をしのばせています。
「ご亭主には抱かれているのか」
「・・・・・」
「そうか、ご亭主とは別居だな。自分で慰めていたのか?淫乱な洋子は我慢出来ないからな」
「そんなそんな事していません」
車の中での佐伯の言葉は それ一点に集中しています。信号で停まると妻の乳房、太腿を撫ぜようとしますが、妻はその手を払います。
「そうか、洋子も久しぶりで恥ずかしいのか」
「・・・・・」
「マンションに着いたらたっぷり可愛がってやるからな」
マンションに着き、部屋に入ると佐伯はいきなり妻を押し倒します。
ブラウスを強引に脱がせます。ボタンが2つ外れます。ブラを取り乳房を引き出します。
「やめて下さい。私はこんな事しに来たのではありません」
佐伯は聞いていません。スカートを脱がせにかかります。男の力には適いません。ショーツ一枚になり、妻の裸身が晒されます。
佐伯もトランクス一枚です。
「ほう、今日はオバサンパンツか。俺に抱かれたくないのか」
「抱かれたくなんかありません」
「今にたまらなくさせてやる」
佐伯は口づけしようとします。妻は顔を背け、口を硬く結びます。佐伯は舌でこじ開けようとしても、妻の口の中には届きません。
それでも佐伯の手は執拗に妻の乳房を、女陰を捉えようとしています。妻は手で足で それを払いのけるのです。
「もうやめて」
もみあいが暫く続きます。力が尽きた妻の抵抗も力がなくなってしまいます。
佐伯はショーツごしに女陰を揉みしだきます。足を羽交い絞めにして女陰の匂いを嗅いでいます。
「洋子のここはいつもいい匂いだな」
暫く、唇での責めが続きます。妻の足を自分の足で押さえ、また手でいたぶります。
妻は、私が佐伯の股間を蹴り上げた事を思い出します。
足は佐伯の足で押さえられ自由になりません。手で思い切り男根を掴みます。
「えっ」
妻は驚くのです。佐伯の男根には力がありません。
佐伯は勘違いするのです。妻の手が許したしるしだと。
「洋子も我慢が出来なくなったか。ほらパンツを脱がしてやるからな」
数十分にも及ぶ佐伯の責めで妻も感じ始めていました。
「こんなに濡れてるぞ。なにが、もうやめてだ」
佐伯はショーツを脱がそうと、その時です。
妻は頭の横にあるバッグの中からある物を取り出し、自分の太腿に突き立てるのです。
ある物は、鋏だったのです。
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